1、ユラギカゼ
僕は、風。
みんな、僕をユラギカゼって呼んでいる。
僕はまだ生まれたばかりの風の子供で、風の中でも緩やかな風だ。
この山で生まれて、気に入った森で暮らしている。
そこには、小さな小さな泉が一つ。
ステキな泉と川のカミがいて、緩やかな流れの小さな細い川の中には川藻が揺らぎ、日の光をキラキラと反射する。
兄様の強い風にサワサワと森の木が揺らぎ、泉や川のまわりの草をサワサワ踊らせた。
川の畔に下りるとトリノカミが頭上でさえずり、ポツポツと葉の間から漏れた明かりが、地面に色んな模様を描く。
水場に集まるカミの話しを聞きながら、そっと泉の水面に触れると、いくつもの波紋が広がって揺れた。
トントトン トトトントン
「向こうでヒトがお祭りしているよ。」
「またお祭りかい? 」
トントトン トトトントン
遠くでヒトの鳴らす音に誘われて飛んで行くと、そこでは頻繁に祭りが行われている。
僕はお祭りが大好きだ。
村人が綺麗な衣を着て、ヒラヒラと踊っている。
青空の広がる下で、あちらこちらで祭りの最中だ。
空は澄み渡るほどのお天気で、夜が来ると終わって、朝が来るとまたお祭りが始まる。
キラキラと楽しそうな人間を見ると、嬉しくて地面の近くに降りて行く。
ああ、僕は、人間が好きだ。
山向こうでもお祭りが始まったらしい。
人間はお祭りが好きだ。
ドンドンドンドン、ダンダンダンダン
近くに行くと、ズシンと響く太鼓の音に心が躍る。
僕は、もっともっと人間に近い所にいるカミになろうと思った。
台風で、ふと浮かんだ話。
神の話。
1話目はプロローグのような。
書いたら更新のような感じ。