クラウスお兄様
真紅の髪に深緑の瞳、凛々しい顔立ち長身に強い魔力を有す公爵令息、クリスティーナには優しい過保護の兄だか、冷徹貴公子の名は伊達ではない。
「影から報告が上がってるし、ティーナが身につけてる魔具からもいろいろと…ね?」
笑顔が恐ろしいとジュリアンは息をのむ。
というか妹を盗聴してたのか?
「嫌だな、最近ご令嬢や令息がティーナにキツく当たってるって聞いたから、いつも使ってる髪留めに細工したんだよ?ずっと魔具を持たせてた訳じゃないよ?」
笑顔で俺の疑問を読み取りちょっと怖いことを言わないで欲しい、、、
「ジュリアン、状況をきちんと把握する必要がある、分かるだろう」
「クラウス様、クリスティーナ様は混乱しておいででした…」
「記憶が戻ったの?」
スっと細められた目に怒りが増した。
クリスティーナ様は知らない、兄が全て知っている事を、彼もまた前世の記憶がある事。あの頃の俺には出来なかった事が今は出来る、見た記憶を見せる事。暗示をかけた事を咎められたあの日、前世の忌まわしい記憶としか伝えなかった。全てを目の当たりにしてクラウス様は正気を保てるだろうか?
「ティーナは魔塔を開けてしまった、この意味が分からないお前ではないだろう?」
思ったより、逼迫した状況らしい、
「場所を変えましょう、クラウス様とティーナ様のためにも」
クラウス様はパチンと指をならした、転移魔法だ、
秘密の部屋この御屋敷で1番安全な場所だろう
『ビジョン』
詠唱するとティーナ様の記憶が映像となって流れた、それは妹を愛する兄にとって残酷だ。
前世の記憶があるとはいえ妹の身に起きた全てを把握していた訳ではない。過去の記憶が鮮明に戻ったからこそクリスティーナ様は混乱し怯えていたのだから。
その忌々しい記憶を見るクラウス様は全身から禍々しい魔力が溢れている、今なら溢れる魔力だけでアイツら殺れるんじゃないだうか?
「これが俺が知らなかった真実、、、だからお前は封じようとしたのか?」
クラウスは今なら軽率と叱咤した彼の行動も理解できる。それほどおぞましい記憶だ。
「まだ5歳だったお嬢様にはあまりにも惨いと、あの時の私ではクラウス様にお見せする事はできませんでした、クリスティーナ様は最近まで本当に忘れていたのです、王子殿下と学園で接するようになってから戻りつつあったのでしょう、あの発言を聞いてあふれたのではないでしょうか?」
「あの王子と男爵令嬢だっけ?万死に値する事がよくわかったよ」
ああ、それには同意だ。
「だか、今はクリスティーナの安全を守るのが先だ、魔塔を開けた事知れ渡ってしまえば、父上の権力を持ってしても危ない。早急に対策を立てるぞ!!」
一見穏やかそうな公爵様がこの家で1番怖いのではないだろうか?クラウス様を15歳歳を重ねた感じのクロード・デュバル公爵様微笑みの貴公子なんて言われてるけど、あんな黒い笑顔が素敵だと思える女達はある意味すごい、王家と互角に渡り合えると言われてる魔力、この国の宰相様の旦那様でも難しいのか?
「楽しそうな話だね?私も混ぜてくれるか?」
気配を消してそこにいたのはこの屋敷の主だ
「恐れながら、旦那様いつからそちらに」
「ジュリアンが稀有な能力をクラウスに見せてた当たりからかな?」
初めからじゃないか!!!
「ん?クラウスが随分と怒ってティーナの部屋に行ったと思ったら転移魔法を使ったから、気配を消して待ってたんだよね」
愉快そうな笑顔、この顔の公爵様はクラウス様以上にお怒りだ。
「前世の記憶は本当だった訳だ、で私の可愛いティーナを苦しめる愚か物を処分する相談かと思ったら魔塔とは、間違いないのか?ティーナの適正からいって癒しの魔塔?」
「父上、ティーナは開けたようなのです。今すぐに手を打たなければ、、」