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生徒会長はご褒美を所望す!  作者: 味噌漬け
2/2

生徒会長はご褒美が欲しい! 後編!!

 次の日の放課後…。この日も生徒会室では生徒会役員達が仕事をしていた。


「生徒会長。これよろしくお願いします。」


「ああ。わかった。」


「これのチェックもお願いします。」


「そこに置いておいてくれ。」


 しばらくすると生徒会長…吉沢恵希はハンコとペンを置き、手を合わせて叩く。


「よし!この案件も終わったね。副会長、残ってる仕事はあるかな?」


 どうやら恵希も他のメンバーの前ではちゃんと仕事をするようで集中して取り組んでいた。


「(ひーくんのお菓子お菓子お菓子お菓子…ご褒美ご褒美ご褒美ご…)」


 …いいや、ご褒美が欲しくて堪らなかっただけみたいである。


「生徒会長。今週の分の仕事は終わりです。今日は金曜日ですし、早めの解散でも問題ないでしょう。」


 普段の口の悪さからは考えられないほどの丁寧な言葉で陽向は返事をする。

 その言葉に恵希は嬉しそうに頷いた。


「そうだね。まだ時間あるけど、今日は終わりにしようか。…そうだ。副会長は少し残ってくれ。これからの打ち合わせもしたい。」


「わかりました。」


 陽向が頷くと他の役員たちも頷いて立ち上がる。


「「お疲れ様でした。」」


「ああ。お疲れ様。」


 他の役員達は恵希に礼をすると、生徒会室から出て行った。

 恵希は彼らが出て行くのを確認すると扉に鍵をかけ、安堵の息を吐く。


「ぷひぃぃ。何とか終わったよ〜。」


「はぁ…。まぁ、とりあえずお疲れ様。」


 机に寝そべる恵希を見ながら、陽向はため息を吐く。

 今週の仕事が早めに終わった理由として、恵希がサボっていた仕事以外の雑務を昨日のうちに他のメンバーで片付けていたことが挙げられる。それに加え、陽向と恵希が放課後にサボっていた分を全力で終わらせたため、ほとんどの仕事が片付いたのだ。

 幸か不幸か恵希のサボり癖のおかげもあって仕事が効率的に進んでいたのである。

 そもそも最初からちゃんとやっていれば、もっと早く終わっていた可能性もあるにはあるのだが。

 サボっていたとは言え、恵希が自力で頑張っていたのも確かであり、陽向は愚痴りたくとも愚痴れないのである。


「(ったく…。こいつはホント変なところで有能なんだから…。はぁ…。)」


 陽向がそんなことを考えていると、椅子から降りた恵希が擦り寄ってきた。


「ひーくん〜!昨日の約束覚えてるよね?」


「あ〜もう!!くっつくな!」


 身長差もあり、胸やら何やら陽向の顔にくっついてしまっている。

 陽向は顔を赤くしながらも振り解いた。


「わかってんよ。仕事終わったらお茶にする約束だもんな。」


「えへへ。楽しみだなぁ。ひーくんのお菓子♪」


「……準備すっから少し待ってろよ。」


 陽向は恵希の笑顔に頬が更に赤く染まる。

 彼は恵希にその顔を見られないように顔を背けながら、準備をし始めた。




 アップルパイについて皆さんはご存知だろうか?パイ系のお菓子としては最もポピュラーなお菓子の一つだろう。

 型に敷いたパイ生地にカスタードやクリームチーズなどのクリームをかけて、その上にたっぷりのリンゴのコンポートを乗せてパイ生地で覆い焼き込んだお菓子である。

 上に覆うパイ生地は格子状や網状、逆に何もせず無地の状態など様々な種類があり、家庭やお店によって乗せるパイ生地の形状は様々である。

 バターの香るパリパリサクサクの生地に、甘酸っぱいリンゴ、濃厚なクリームの合わさる絶品なスイーツだ。


「ほわぁ…美味しそう…。」


 恵希の目の前には切り分けられたアップルパイを乗せた皿が置いてある。

 恵希はそんなアップルパイを恍惚とした表情で見つめていた。


「一応、今日の昼頃に焼き増ししておいたからサクサク感は残ってると思うぞ。ほれ、紅茶。」


 陽向は慣れた手つきで紅茶を淹れると、恵希の皿の横に置く。


「あ!ありがとう〜。」

 

 陽向は恵希が座っているテーブルの向かい側に腰を下ろす。

 二人は紅茶をすするとアップルパイを食べ始めた。


「バクッ!!」


 恵希はフォークを使わずに手掴みで勢いよく口の中に入れる。

 サクッパリッと心地よい音を出しながらも味わいながら咀嚼していた。


「う〜ん!!美味しい!」


「フォークくらい使えよ…。」


 陽向がそう言うと恵希は「チッチッチッ…」と指を左右に振りながら答える。


「ふふふ。アップルパイのようなお菓子はフォークを使うとボロボロになってしまうからね!散らかさないためにはこうやって手掴みで食べるのが一番なのだ!!」


「そ、そうか…。」


 あまりのドヤ顔っぷりと確かに間違いではない情報に陽向は何も言えなくなる。

 しかし、王子様然としていた幼なじみが指をしゃぶりながら食べる光景に少し頭を抱えたくなるのも仕方のないことだった。


「とりあえず、指しゃぶるな。ほら、コレで拭け。」


 陽向は指を舐めている恵希にティッシュを差しだした。

 恵希は嬉しそうにBOXティッシュから何枚か取り出すと手を拭う。


「ありがと〜。流石、ひーくん!準備が良いね!」


「ったく…。誰かさんのおかげでな。」


「ん〜誰のことかなぁ?」


 恵希の白々しい言葉に陽向の額に血管が浮き出す。

 陽向はズボラな恵希のためにハンカチや消毒、薬までも完備していた。

 甘やかしているようにも思えるが、陽向にはそんなつもりはない。あくまでもこの幼なじみを支える一環として常備していると考えている。

 恵希本人はそんな陽向の苦労を知ってか知らずか、呑気そうに笑顔でアップルパイを頬張っている。


「(う〜ん…。生地がサクサクってしてて、カスタードも甘ぁい。でも、リンゴの酸味のおかげで甘すぎず食べやすい…。今日のご褒美タイムも最高ぅ…。今週も頑張って良かったぁ…!)」


 ご褒美タイムとは陽向が恵希の生活習慣を直したり、仕事をさせるために考えたもので、ちゃんと頑張ればその分、陽向がお菓子を焼いてご褒美として渡すというものである。つまりは餌付けである。

 陽向としては正直、ご褒美抜きでも仕事くらいはして欲しいが、恵希の喜ぶ顔を見てしまえば彼としても作り甲斐があるというものだ。ちなみにスイーツ研究部としての試食も兼ねてるため、後で味の感想もしっかりとレポートしている。


「はぁ…。やっぱりひーくんのお菓子は最高だなぁ。もっと食べたい。」


 恵希が恍惚とした表情で言うと、陽向が苦笑しながら口を開く。


「はっ。それじゃあ次もちゃんと仕事したり、自力で朝起きるこった。」


「むー。……こんな時まで仕事の話しないでよ。朝は…できる限り頑張る。」


 それはやらないやつだ…という言葉を陽向は飲み込む。

 実際、昨日と今日含めて頑張っていたため恵希としては甘やかしてもらいたいのだろう。

 今日くらいは労おうと、もう一切れのアップルパイを恵希の皿の上に乗せる。

 恵希は乗せられたアップルパイを見て目を輝かせた。

 こうして、この秘密のお茶会はオレンジの美しい夕方の時刻まで続いていく。



 


 





 


 


 

 

 こんにちは味噌漬けです。今回はアップルパイにしてみました。アップルパイ美味しいですよね。たまに焼きますが、手間がかかる分、美味しさも増します。

 今回は読んでくださってありがとうございます。ご感想やお菓子のリクエストなどありましたらコメントで送ってくださると嬉しいです。


 キャラ解説

吉沢恵希

この作品のもう一人の主人公。由緒ある名家、吉沢家の娘。成績は基本的に一位、運動神経も抜群とスペックが高く、他の生徒から尊敬を集める王子様系生徒会長。しかし、その実態は朝寝坊は当然、生徒会長としての仕事もサボる…ただのズボラ。お弁当も、下手すれば朝の支度も陽向が世話しているレベルである。ちなみに料理の腕は壊滅的。食べた者は大抵食べた記憶すら失っている(トラウマは残る)。幼少期はわんぱくであり、控えめな陽向を連れ出して遊んでいた。しかし陽向を巻き込んだ、とある事件をキッカケにそれまでのわんぱくは鳴りを潜め、凛々しい王子様系ボーイッシュ女子へと変貌。だが、その反動で陽向と二人っきりの状況や一人の場合だと、ただのズボラと化すようになった。よく陽向に怒られたり、叩かれたりするため隠れMの可能性もある。

 

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