地獄までの実況中継
題名「地獄までの実況中継」
「──今、スタートを切って行きました! この、運命を懸けたマラソン大会、晴天の中での華やかなスタートです!
さぁて。ナイフのように尖った山の頂に作られた今回のコースですが、地面までの距離は、およそ二千メートル。しかし、と言うべきでしょうか、この危険なコースの道幅は一メートルしかありません。コースを踏み外せば、本当に大変なことになります。
おっと、早くも先頭集団が──あっ! 一人が、こけました! 彼が障害になって、何人もの選手がコースから落ちて行きます! これは、ひどい!
・・・・
スタートから二時間が過ぎようとしています。先頭を走る、晶。ゴールが見えたか? 見えた! ゴールが見えました! 晶! 晶が! ──今、ゴールイン!
いやー、参りました。亡くなった人達の、地獄までのフルマラソン。えー。優勝した晶選手の、当レースへの参加理由は──ああ。自殺ですねぇ……。作家志望の彼は、自らの才能に絶望して、丸めた原稿を口に含んで窒息死を遂げた模様です。彼の遺作は、「地獄までの実況中継」でした。
はい。そろそろ、お別れの時間です。次のレースで、又、お会いしましょう。それでは皆さん、さようなら。次に走るのは、ひよっとして、あなたかもしれませんよ──」