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乙女ゲーム系

ざまあしたと思ったら、すべてヒロインの思惑通りでした

作者: 宮藤小夜

わたくし、シルヴィアンヌ・リシャールは16歳の誕生日、ふと気がつきました。

なんと私、乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わってしまったみたいなんですの…!!


乙女ゲームは「君と過ごす365日〜乙女の恋は桃色吐息〜」と言う何とも微妙な感じのタイトルで、攻略対象者はメインキャラ四人と隠しキャラ一人でしたわ。


まずはこの国の第一王子であり私の婚約者である、レイモンド・ディアルグ・インフェルノ(18)。輝くような金髪に、大空のような青い瞳。まさしくおとぎ話の中の王子様と言ってもいいほどにとても麗しい顔立ちをしています。性格は傲慢な俺様系で、何でも自分の思い通りにならないと気が済まず、思い込みが激しい。私もきつい顔立ちのせいで何度「お前は何を企んでいるんだ!」などと濡れ衣を着せられたりしました…。それでも一途に王子を思っていた過去の私…どMか!


そして二人目は宰相の息子である、サフィアス・フリード(17)。別名「氷の王子様」。サラサラした水色の髪に、透き通るような灰色の瞳。昔はとても素直で可愛らしい少年だったがある日、初恋であるメイド(16)が地位やお金、イケメンな父目当てで亡くなった母の代わりに後妻になろうと自分に優しくしていたと知り、絶望。それ以来女とは恐ろしい生きものだと大の女嫌いに。彼は王子の親友であるためよく王子と共にいるのですが、たまにかち合うと彼の私(という女)を見つめる目は汚物を見るような目で…。何度あの目をえぐり取りたいと思ったことか!


三人目はグレン・ロヴェリアス(23)。私たちが通う学園の担任教師になります。少し癖のついた黒髪を後ろで一つ縛りにし、眠たげな琥珀色の瞳を持つ色気魔神です。綺麗なもの、綺麗な人がとっても大好きな方で、男でも女でも誰彼構わず口説きまくり、食った人は数知れず。噂では千人斬りしたとかなんとか…。生徒にまで手を出したり…教師失格ではありませんの!


四人目は私の義弟であるヨシュア・リシャール(14)。私と同じ蜂蜜色の髪に、アメジストのような神秘的な紫色の瞳の持ち主です。ある日事故にあってご両親が死んでしまい、父様の妹の子供だということでかわいそうに思った父様が我が家に引き取りました。ですがヨシュアのことを父様の愛人の子と誤解した母様はヨシュアのことをいじめまくり、そして私も記憶を取り戻す前はヨシュアのことを思いっきりいじめ…。今ではすっかり彼は私のことを親の仇でも見るように憎しみに満ちた瞳で睨むのが日課となっております。まぁ、前の私はその瞳が気に食わなくていじめをエスカレートしていったような…。ヨシュアの死亡ルートでは私がやってきたいじめなんか、へでもないくらい残酷すぎて言葉では筆舌に尽くしがたいですわ!


そして隠しキャラであるヒロインの幼馴染、ヴァン・ヴァレッド(16)。見た目は一般的な茶髪に少し濃い茶色い瞳の方です。幼馴染なのに隠しキャラなんておかしいですって?それはそうでしょう。なんと彼はあるときは王様、ある時は名も無い旅人、そしてある時は魔王という何百年、何千年も生きてきたこの世界で唯一の大魔法使いなんですの!当然名前も偽名ですわ。一体彼にはいくつ名前があるのやら。姿も本物かどうかわかりません。実は私、この方だけ未プレイですの。他の四人は攻略したのですが…。やっと隠しキャラを攻略できる!と思った学校からの帰り道でトラックに轢かれそうになり、避けたと思ったら電柱が折れ倒れてきてそれを避けたら足をひねってなぜか空いていたマンホールに落ちて亡くなってしまったのです。あの日、マンホールさえ空いていなければ私は生きていたはずなのに!この身の不運が恨めしいです。


あ、そうですわ!このゲームでの大事な人を忘れていました。そう、ヒロインです!名前がリィーリア・カロン(15)。ふわふわしたピンク色の髪に、真夏の草原のような黄緑色の瞳をしています。小さい頃から母と一緒に平民として過ごすも、14の時に母親が死亡。お葬式の時に父親と名乗る男爵に引き取られ、男爵令嬢となる。貴族の子供は皆全寮制の王立学園へ入らなければならないと決められており、本人が拒否するも無理やり学園へ入れられてしまう。貴族としての作法など何もわからず、孤立するヒロイン。ある日、耐えられず泣いてしまったところを攻略対象に見られ、そこから恋が始まっていくという…。


そして、そこでヒロインの恋を邪魔するのが私!公爵家唯一の娘であり王子の婚約者でもあるシルヴィアンヌ・リシャールですわ!お父様に連れられ五歳の頃に王宮へ行き、王子に出会って一目惚れ。王子の年齢に釣り合う家柄の娘が私以外におらず私が王子の婚約者に何たいと猛烈に望み、周囲のご令嬢を敵視し絶対に近づけないようにしていたこともあり王子と婚約。それ以来ほとんど毎日と言っていいほど王子に会いに王宮へ。けれど六歳になった時に王妃教育というものが始まり、王子に会いにいく時間や自由な時間が減り、それでも時間を見つけてはベタベタと王子にひっつき…見事嫌われましたとも!前の私はそんなことを気にせず、私が愛しているのだから王子も私のこと好きでしょう?と傲慢にもそう思い過ごして参りました。ですが今!前世の記憶を思い出した私にとって、王子は無い。誰があんなガキ大将のようなまま成長した奴を好きになるかってーの!けっ。…あらやだ、はしたなかったですわ。


婚約を解消してしまいたいけれど絶対無理なのよ。そう、前世の記憶を思い出していなかった時の私の都合のいいように婚約をして将来王子様と結婚するの!とハッピーな思考回路で人生を歩んできたけれど、これは家と家が絡んでおり、実際は政略結婚でしたの。でもヒロインが王子ルートに入った場合、このままだと私一年後にはですが王子から婚約を破棄され、国外追放やら処刑やら死亡ルート確定…。そんなのっ絶対嫌!そうよ、私は思い出したのよ!ヒロインと仲良くなって親友の立ち位置になり残酷ルートを回避すればいいのよ!ゲームでも攻略対象者はヒロインにベタ惚れだったし、優しいヒロインが私を彼らから守ってくれるはず!でも、もしヒロインが知識ありの逆ハー目当てで私に罪を着せようとした場合、ざまぁ返しをして生き残ってやりますわ!!





***



早いものでもう一年…。予想通り、ヒロインは逆ハー狙いの転生者でしたわ!いろんな男に尻尾を振ってこの○ッチが!レイモンド様はヒロインにデレッデレで私に会うたびに「お前の思うようになんかさせないんだからな!」「お前よりリィーリアの方が可愛い!」など何度も何度も言われてさすがに我慢の限界です!

ヒロイン…今日あるお城の舞踏会でレイモンド様と共に私をはめようったってそうはいきません!何が来てもいいように反論の証拠も十分!


ふふふ…待ってなさいヒロイン!ざまあ返し、発動させていただきますわ!!



***



「俺、レイモンド・ディアルグ・インフェルノは婚約者であるシルヴィアンヌ・リシャール嬢と、婚約を破棄させてもらう!」か〜ら〜の〜!私がヒロインをいじめた、いじめてないで言い争いをし、見事ヒロイン&取り巻き連中を論破してやりました!


レイモンド様たちは茫然自失。ヒロインは下を向いて、ピクリとも動いてない。なんか、とても不気味なのだけど…。


その時現れたのがレイモンド様のお父様であり、この国の国王様!事の顛末の全てを聞いた国王様はレイモンド様へ、そんなにヒロインと結婚したいなら王位継承権を捨てよ!と怒鳴り狂い、原因であるヒロインは父である男爵と共に平民落ち。さらに、男爵は民へと使うはずのお金や国に収めるべきお金を不正に誤魔化し懐に入れていたことが発覚!ヒロインを家に引き取る前から行っていたことから爵位、財産没収の上、(ヒロインはそれを知らなかったことから平民落ち以外のお咎めはなかったけれど)男爵だけが鉱山奴隷に。


私、そこまでやる気はなかったのですけどもね。ただヒロインに弱点とかないかな、と探っていたら偶然発見いたしまして…(あの男爵、見た目はとても優しそうな方でしたのに)。男爵自身もどうしてバレたんだ!とわめき立て、衛兵の方に連れて行かれました。


それから国王様は、バカな息子のことで迷惑をかけたとその場にいた臣下に対し頭を下げ、何か最後に言いたいことはあるかとレイモンド様達とヒロインにその鋭い視線を向けました。これは、国王としてではなく、親として最後の機会をあげたのでしょう。このまま騒ぎを起こし、王位継承を破棄され衛兵に連れて行かれた愚かな王子という印象ではなく、自身の過ちを認め、臣下へと言葉をかけ印象をましにするのか…。ですがレイモンド様は国王様のその思いに気づかず、国王様から目をそらし何も言わずうなだれました。国王様の意図を察していた数名の臣下たちは王子の様子に落胆のため息を吐き、顔を背けました。ちなみに、取り巻き達は己の立場に気がついたのか助けを求めるように周囲を見渡していましたが、こちらを殺気立って睨んでいる親を見て誰も助けてくれないと悟ったのでしょう。この後の展開を想像したのか血の気の失った真っ青な顔をして下を向いています。


国王様は取り巻きたちを見て、もう一度王子の方を見て、苦悩の表情で目を閉じました。


「レイモンドは王位継承権剥奪の上、平民に身を落とすことを命じる。これは決まりであり、覆ることはない。他の者たちの処分も追って沙汰を下す。それまでの間は監視付きの上、謹慎処分とする」


そして衛兵に王子達を連れていくよう命じようとした時、ヒロインの静かな声があたりに響きました。


「待ってください。最後に私にも、一つだけ言わせてください」


ヒロインは真っ直ぐとした視線で国王様を見つめており、それに耐えきれなくなったのか国王様はいいだろう、と頷きました。彼女が何を言うのか、皆静かになり興味津々でじっとヒロインを見つめています。そしてヒロインが話し始めました。


「レイモンド様」


ヒロインは周りの視線など気にも止めず、レイモンド様を、レイモンド様だけをじっと見つめました。


「レイモンド様…貴方はもう、王族ではなくなりました。なので、私の婿に来てくださいませんか…?」


「「「は?」」」


いきなり何を言い出すのか、いや、そもそも何を言っているのか理解ができませんでした。


「平民に戻った私は貴方に今までしてきたような贅沢も、何もさせてあげられません。けれど、私は貴方を愛しています!貴方もその想いが嘘ではないのならばどうか!私に貴方の一生をください!私の全てをかけて絶対に、貴方が幸せだったと思えるような人生にして差し上げます!!どうか!どうか!!私とこれからの未来を共に生きてください!」



「貴方を愛しているんです!!」



その叫びは、彼女の心からの本心だったのでしょう。でなければこんなにも私の胸に響いてくることはなかったのでしょうから。でも待って。彼女はいろんな男に媚を売っていた逆ハー狙いの転生者ではなかったの?レイモンド様のことを愛しているって…じゃあ、他の攻略対象者は?


私がぐるぐると考え事をしている視界の先で、レイモンド様はしばらく呆然とヒロインを見つめた後泣き笑いのような表情を浮かべ、ぼそっと何かをつぶやきました。その声はとても小さく、私達には聞こえませんでしたが、きっと近くにいたヒロインには聞こえていたのでしょう。だって彼女はあんなにも嬉しそうに幸せそうに笑っているんですもの。


そうして彼女たちは衛兵に連れて行かれました。他の取り巻きの方たちは先ほどのヒロインとレイモンド様との出来事に茫然自失で、今までのことを思い出しざまぁwと言う気持ちと少しだけ、ほんの少しだけかわいそうな気持ちで見送りました。その時、ヒロインの視線と私の視線が合い、彼女は私を見て話し始めました。


「あのね、私、最初はゲーム感覚でみんなといたけど、レイのゲームの設定にはなかった好きなものとか嫌いなもの…他にも色々なことを知って、どんどん彼のことを好きになっていったの。けど、私は王妃なんて堅苦しいものになりたくなかったし、自由な平民という立場でいたかった。だからあなたが転生者だと知った時、あなたにざまぁをしてもらえばレイは王位継承権を破棄され廃嫡になる。それでレイは平民になるだろうし、私も貴族じゃなくなって平民に戻れるかもしれないって思ったの。でもやりすぎてもし死刑とかになっちゃってたら大変だったけど、うまくいってよかった。他の攻略対象者たちには悪いことしちゃったけど、これで私は私の愛した可愛いあの人とずっと一緒に居られるから」


そして彼女はゆっくりと口角をあげ不気味に笑った。


「ありがとうね、悪役令嬢さん♪」

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[良い点] ヒロインの思惑通りなの好きです
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