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友達百人

 いつものように奴隷商を襲い、奴隷を解放し、旅の仲間がいる街の外に瞬間移動で連れてくる。

 解放された人たちは嬉しそうだ。

 いつもそうだけど、解放された彼らが喜んでいるのを見るとこちらまで嬉しくなる。


 そうして喜んでいる人たちを見ていると、ふと悲しそうにしている二人の獣人の少女が目に入った。


「どうしたの?」


 少女に声をかける。


「ママが、ママがいない……」


「ママは故郷で待っているよ」


 慰める。


「違う! ママは、ママは」


 少女たちは話の途中でウエエエンと泣き出した。


「ど、どうした? もしかしてママも捕まってたのか?」


 尋ねるも少女たちは泣きじゃくっていて話ができない。

 おろおろと俺が困っていると、一人のドワーフが声を掛けてきた。


「その子たちの母親なら伯爵の所にいると思いますよ」


 俺の胸あたりまでしか身長はなく、ずんぐりむっくりとした体型で、髭を腹のあたりまで伸ばしている。

 今日解放した奴隷の一人だ。

 ちなみに女性らしい。

 ドワーフは女性でも髭がびっしり生えているらしく、胸があることや肌が少し綺麗かなといった所で何とか見分けがつくくらいだ。

 そんなドワーフの女性が俺に教えてくれた。


「私もその子たちやその子たちの母親と一緒に捕まっていまして、母親がこの街を治めている伯爵に買われているのを見ましたので」


 ドワーフの女がそう言うと、少女たちは一層泣き出した。もう母親に会えないと思っているのかもしれない。


「大丈夫だよ。お母さんは俺が助けるから」


「ほんと?」


「うん、本当。約束するよ」


 俺は少女と指切りをした。


「あ、相手は伯爵だよ!?」


 ドワーフの女が言う。


「それがどうかした?」


「いや、あんたは強いんだろうけど、伯爵は奴隷商人とはわけが違うんだよ。強い騎士がたくさんいるんですよ」


「大丈夫ですよ。キンさんはもう何度も捕らえにきた兵士や騎士も返り討ちにしていますから。キンさんは悪い奴なら誰が相手でも殴って倒してくれるんです」


 アルルが笑顔でそう言った。


「そ、そうかい?」


「ええ、そうです。ですから安心して待ってましょう」


 そう言って少女たちを安心させる。


「あ、すみません、勝手なことを言って。」


 アルルは申し訳なさそうに俺に謝った。


「いや、助かったよ。ありがとう」


 俺はアルルに礼を言った。

 そして少女たちの母親を助けるために瞬間移動魔法を使おうとする。


「あの、ああ言いましたけど、心配してないわけではないですからね。無事に帰ってきてくださいね」


 アルルが少し照れくさそうに言った。

 かわいい。そして本気で俺の身を案じてくれてめっちゃ嬉しい。


 俄然やる気の湧いた俺は意気込んで伯爵の元へと飛んだ。


「誰だ!!」


 部屋に突然現れた俺に対して驚く小太りで半裸の男。

 その男に押さえ込まれるようにして、ベットに獣人の女が裸でいた。その女も当然俺に驚いている。

 おそらく男が伯爵で女が少女たちの母親だと思う。

 この屋敷に獣人の女は一人だけだったし、一番偉そうにしているのがこの男で、一番豪華な寝台が置かれているのがこの部屋だからだ。


「あなたがエランシエラさんですか?」


 女に少女から聞いた母親の名前か確かめる。


「そ、そうですけど」


 女は戸惑いながらも肯定した。


「私はあなたの子どもたちから、あなたを助けるように言われてきました」


「あの子たちを知っているんですか!?」


「ええ、彼女たちは私が奴隷から解放しました。あなたも今解放しますよ」


「本当ですか! よかった。よかったわ。あの子たちは無事なのね」


 母親は自分のことはそっちのけで、子どもたちが無事だったことに涙を流して喜んだ。


「私を無視して二人で何をしておるか! ものども! であえい! であえい!」


 伯爵が護衛を呼ぶ。

 すぐに騎士や兵士が数十人とやってきた。


「この侵入者を今すぐ殺せ!」


 伯爵が命令すると一斉に襲いかかってきた。


「いやああ!!」


 俺が殺されるものと見て、母親は目を背けて叫んだ。

 だがそうはならない。


鉄礫扇弾(てつれきせんだん)!」


 俺は無数の鉄の礫を飛ばした。

 それは襲いかかってきた騎士どもに当たり、衝撃で全員意識を失った。


「くそっ、役立たずどもが!」


 毒を吐いた伯爵は剣を抜いて俺に向かってきた。

 伯爵だけあって振るう剣は鋭く、今までの誰よりも強かった。

 でも関係ない。

 顔面を殴って叩きつけた。


「あ、しまった」


 衝撃で床が割れた。

 伯爵や騎士が落ちていく。俺も落ちていく。


「きゃあああ」


 少女の母親も悲鳴をあげて落ちていく。

 彼女の手を掴んだ俺は、落ちる前にアルルたちの元へと飛んだ。


「え? ここは?」


「お母さーん!!」


 いきなり違う場所に移動して困惑する母親に構わず子どもたちは抱きついた。


「! エマ! シーラ! 会いたかったわ!」


 母親も子どもたちに気付いて抱き返した。

 三人は感動の再会を果たした。よかった、よかった。


「よかったですね」


 彼女らが無事に再会できてアルルも嬉しそうだった。


 こうして母親も仲間に加えて、俺たちはウェラの大森林に向けて出発しようとした。


 ふと後ろを振り返り、旅の仲間を見てみれば、列が長く続いていた。


「何人になったんだろうな」


 なんとはなしに呟いた。


「数えてみますか?」


 アルルが言った。

 別に急ぐ旅でもなかったので数えてみることにした。


 数えてみると、獣人が六十三人、エルフが十八人、小人が十二人、人間が六人、ドワーフが一人。

 なんと百人いたのです。

 やったーー! 友達が百人だ!

 異世界に来て一月経たずに友達が百人出来ました。パンパパパーン!!


 俺は喜んで旅を再会しました。

 この時の俺は知りませんでした。脅威が迫っているということを。



 ◇◇◇◇


 金太郎一行が出発した頃、金太郎が半壊にした城では、伯爵がようやく意識を取り戻していた。


「くそ、よくもやってくれたな。絶対に許さんぞ」


 怒りに燃える伯爵は覆い被さる瓦礫を払いのけると、よろよろと出口へと瓦礫を避けながら歩いていった。


「誰か! 誰かおらんか!」


 そして大声で廊下へと呼ばわる。

 すぐに家臣がくる。


「伝言だ! 王に急いで伝えるのだ!」


「はっ!」


 こうして伝言を託された家臣は、すぐさま馬に乗って王宮へと向かった。

 急いだので一昼夜で王の元に伝言が届けられた。

 その伝言は金太郎を告発するものだった。

 それを聞き、王国内で好き勝手する金太郎に激怒した王は、すぐさま金太郎を討つために王国選りすぐりの刺客を金太郎の元へと向かわせたのだった。

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