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♻︎ Let’s Reincarnate! ♻︎

陳宮と高順に再会してから2週間ほど経っただろうか、呂布達は…まだゼウスの下にいた。

再会を喜び、永久保存版の黒歴史を見ながら酒を交わしたのはその日だけ。あれから呂布は林檎を齧り、自身の没後から現代に至るまでの歴史を含めた様々な知識を身につけようと、休む事無く励んでいた。


陳宮と高順はと言うと呂布よりも先にゼウスの下でそれらの知識を得ていたため、今はファンタジーの概念を学ぶべくアニメを観たりオンラインゲーム等を手当たり次第にプレイしたりしている。特に、三国志をテーマにしたアクションゲームをやった時などは二人とも酷く興奮していた。


「ワハハハッ、高順殿ォ!殿とワシのキャラクターはあるが、高順殿のキャラクターは無いのォ!まぁ、殿とワシはメジャーじゃからのォ!ワハハハ!」

「くッ…ふ、ふんッ!こんなモブキャラ丸出しデザインでメジャー気取りとは、陳宮殿も安いモノですねッ!大体ッ、陳宮殿はこんなに若くないし、声もかっこよくないし。そもそも木剣すら握った事無いじゃないですか!似ているのは嫌味ったらしい表情くらいですねッ!」

「な、なにぃ!?ワシも木剣を握った事くらい、あ、あぁあるわぁぁ!!ただ、野蛮な事が好ましくない…そ、そう、ワシはスマートに生きるのが性に合っておるのよ!お主の様な、粗野なモンにはわからんじゃろうがなッ!」

「へぇー、スマートに生きた結果が絞首刑ですかァ!?干されて晒されて、さぞスマートな体型になったでしょうね!流石、スマートな方は生き方が違うわァ笑」

「い、い言ったなァ!そこまで言うなら、ハンデをくれてやりますぞ!殿のキャラを使ってワシの総撃破数を制限時間内に超えて見せよ!…まぁ殿のキャラのスペックが高すぎて、プレイヤーのポンコツっぷりが際立ちそうですがなァ笑」

「な、何ですとーッ!?」

「なーんじゃァア!?」


騒がしい二人を余所目に淡々と勉学に励む呂布。ゼウスはこっそり呂布に話しかける。

「騒がしいヤツらだのぅ…。…あの調子で大丈夫なんじゃろうか」


呂布はチラッと二人を見た後、再び机に向かいながら言った。

「傍目にはただ喧嘩してるように見えますが、あれは謂わば彼らなりの激励の様なものです。放っておくと、なんだかんだで上手くやってくれるんですよ」

「そんなもんかのぅ…」

ゼウスが遠巻きに見ていると次第に二人の口数が減ってくる。


「行きますぞ…」

「ぁいょ」

「高順、右へ。…ワシがヤツらを引きつけますぞ」

「りょ。回復落としておきますね」

「…助かりますぞ」

などと、小声で連携を取っている。


「なるほどのぅ」と、ゼウスが言うと呂布は机に目を向けたまま話し始めた。

「昔も、何かとよくぶつかったものです。他の臣下達(ヤツら)はオロオロとするばかりでしたが、二人は気にせずずっとあんな調子でした。…兄弟ってこんな感じだろうかなんて思いながら見てました。まぁ俺は、孤児だったので兄弟など知りませんが…。そのせいですかね、二人が言い合いの末にやっと出した妥協策もあっさり無視したりしてよく文句言われましたね、ハハハ」

「お、お主も大概じゃのぅ…」

「ハハ、まぁ、とにかく心配御無用ですよ」

ゼウスがふぅと溜息を吐くと同時に、ゲームクリアの音楽が流れる。

「…まぁ、そのようじゃのぅ」


二人は「やりましたね、最短記録じゃないですか」などと、互いを労っていた。

呂布の方はというと…何事も無かったかのように参考書を開いてマーカーを引いていた。


ーーーそれから、さらに2週間ほど経ったある日…


ゼウスは話があると三人を集めた。

「さて、三人ともそろそろ期限じゃ。これ以上ここにおると、生への固執が無くなって転生出来なくなるでのぅ」

「確かに。…この二人に至ってはライフスタイルが、もう、ニートそのものですね」

呂布の見つめる先には廃ゲーマーと化した二人が今日もデイリークエストを巡回している姿があった。

「…ニート言うなし」と陳宮。

「あ、でも、最近なんかヤバイなぁって私は思ってましたよ」と高順。


「ぉほんッ…あー、呂布は二人に比べるとまだまだじゃろうが、まぁファンタジーへの最低限の教養は身に付けとる。そこでェッ、いよいよッ、待ちに待った転生式じゃァア!卒業生一同ッ、起立ーッ!」

呂布が立ち、高順が続き、陳宮が渋々と()()()()()()を取った。

「…今期のアニメまだ観終わってn」

「黙れ、陳宮。話が(こじ)れる」

呂布に叱責されて、陳宮もようやく起立の姿勢を取った。


「…よしッ!準備は整った!!転生するにあたって、各々(おのおの)、何か要望とかあるかの?」

「強靭で健康な身体です、…長生きしたい」と呂布。

「裕福で勉学に励める環境を所望致しますぞ」と陳宮。

「いつでも主君の側に駆け付けられる、そんな能力が欲しい」と高順が締め括った。


「…なるほど、相分(あいわ)かった。それでは行き先を決めよう。転生先の異世界は無限とあるが、まぁどこも似たり寄ったりじゃ。適当に送るとしようかの」

「神さま、もう一つ宜しいですか?」

「なんじゃ?呂布」

「転生するのは我々が初めてでしょうか?」

「傑物レベルの話で言えばそうなる。一般人レベルなら他の神々が個別に転生させておるから正確な数は調べんと分からん」

「…今後も傑物レベルの転生の予定はありますか?」

「あのアンケートランキングが続けば可能性はあるじゃろうな、まぁ第一回で終わりそうな雰囲気はプンプンしておるが」

「…劉備殿の母親が何処に居られるか、把握出来ますか?」

呂布の不意な発言に、陳宮と高順が顔を見合わせる。


「…あぁ、ちょっと調べてみよう。…えぇーっと…あ、おったぞ。資料によると、昨年まで現代で転生を続けていたみたいだが、不慮の事故に遭って亡くなった後は一般人レベルで異世界転生を申し込んだ様じゃの。俗に言うチート枠での転生ゆえに10年待ちとなって、今はコールドスリープ状態で待機中との事じゃ」

「あ、魂までレンチン感覚なのね…」などと横槍を入れる陳宮を無視して呂布は続けた。


「彼女が向かう異世界に我々を送って頂けませんか?」

即座に側近二人が反論する。

「呂布殿、何を申されるッ!?」

「あんなマザコンサイコパスの血縁と同じ世界に行くなど、正気の沙汰とは思えませんぞッ!?」

陳宮と高順が騒ぎ立てるのを「静まれ」と片手で牽制しゼウスは言った。


「その女には異世界転生直前の現世の記憶しかない。つまり劉備の母だった事はおろか、三国志すらろくに知らない若者だったようだが…何故(なにゆえ)それを望むか、呂布よ?」

呂布は少し間を置いた後、ゆっくりと話し始めた。

「…今後もし、万が一にでもランキングが続けば、その人気の高さから劉備が転生者候補となることは避けられないでしょう。彼は母の魂を追いかけ、異世界転生の後に現世で成し遂げられなかった事を必ず為そうとするはずです。…放ってはおけません、アレは暴虐の魔王となり得る器です」


ゼウスが黙っていると陳宮が口を開いた。

「呂布殿…それなら尚更関わるべきではありませんぞ。実りが無い所か、下手をしなくても巻き込まれて前世の二の舞となりましょうぞ」

「…今回は、陳宮殿に賛成です。魔王など何処にでもいます。アレに拘る必要は…」

「傑物から転生した魔王に、チートを貰っただけの一般人が勝てると思うか」

「…」

二人は何も言い返せず口を閉ざした。


呂布はゆっくりと語り始める。

「俺が転生する機会を得たのは、アンケートのテーマがたまたま『異世界でも生き残りそう』だったからだ。そして、あのランキングが無ければ…再びお前達と会えることも無かった。俺は、俺に票を入れてくれた人達の期待に最大限に応えたい。…例え『脳筋ゴリラ』と評されようとも…」

「…しっかり根に持ってるんじゃのぅ」

ゼウスに突っ込まれた呂布の瞳にジワリと涙が滲む。


「…とにかくッ、あのマザコンサイコパスは俺が必ず止める!」

拳を握って遠くを見つめる呂布を見て陳宮と高順は溜息した。

「…ふぅ、こう言い出したらテコでも動かないのが呂布殿ですからな」

「…全くです、仕方ありませんね」


「お主等もそれでいいのか?」ゼウスは意外そうな顔をした。

「えぇ、元々我等は呂布殿の転生が決まって『おまけ』で一緒に転生させてもらえるようなもんですから」

「それに、やられっぱなしと言うのも性に合わないですからな」

「なるほどのぅ、よし、ならば三人に改めて伝える!来るべき魔王に備えッ、異世界を救いッ、そしてェッ…めいいっぱい楽しんで生きてこい!」

三人は異口同音に『はいッ!』と返した。


不意に足下が光ったかと思うと、巨大な魔法陣が出現し三人の身体が光に包まれた…。

いよいよ、俺達は生まれ変わる…。身体がフワッと浮き始め、自然と目を閉じた三人にゼウスがポツリと言った。

「あ、因みに生まれる世界は一緒でも、生まれる場所はランダムじゃからな。向こうで頑張って互いに探し出してくれ」


パチっと目を開けた三人が

『…それ、かなり大事な事ォオォオォオォオ!!!』

と叫びながら急加速して光の中へ消えていく…。


「締まらない最後じゃったが、…まぁ、どうにかなるじゃろ」

そう呟きながらも不安げな表情を隠せないゼウスだった。

史実では陳宮さんと高順さんは仲が悪かったと言われています。しかし、そんな二人が最期まで呂布に付き従ったのは、ケンカ出来るほど仲が良かったからでは無いか…などと妄想してしまいました。


三人がやっと転生出来て良かったです、有難う御座います。

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