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進化する力

セイレーンがナサニエルに飛びかかる少し前、オーウェンは不思議な現象に気づいた。方天画戟の刃先が直接当たっていない個体にも徐々に傷が付き始めている。それどころか方天画戟を振り下ろすと、その延長線上の海がパチャっと直接叩かれたように波打つのだ。


(いまいち仕組みはわからないが…素早く振り抜くと威力があがるようだ)

少しコツを掴んだのか、オーウェンは方天画戟を海に向かって手当たり次第に振り下ろす。海面に漂っていた人魚の屍人(セイレーン)に斬撃が当たると、バチャッと血を噴き出して沈んでいった。すると、方天画戟の間合いを外れるように人魚の屍人(セイレーン)がナサニエル達の方へと飛びかかり、ナサニエルが悲鳴を上げた。


(俺には勝てないと踏んでナサニエル達を狙ったか、だが…)

オーウェンはこれまでで最も早く方天画戟を空中に向かって振り下ろした。その瞬間、方天画戟の間合いを完璧に外れていたはずの人魚の屍人(セイレーン)はシュピッという音と共に真っ二つに切れて吹き飛んでいった。その後もオーウェンは方天画戟をただただ振りまくる。やがて夜が明けて、セイレーン達の遺骸で覆い尽くされた海面がうっすらと見えるようになったてきた頃、ようやく残された僅かなセイレーン達は暗闇へと消えていった。クルスが肩で息をしながらオーウェンに近づいてきた。


「ハァ…ハァ…お、終わったのか!?」

「そのようですね」

「まさか…ハァ…こんなにたくさん…ハァ…居るとは思わなかったぞ。それはそうと…オーウェン、さっきの攻撃はなんだ?」

「仕組みはよくわかりませんが、素早く振ると出来るようになりました」

「ハァ…もしかするとそれは冒険者達の『武技(ぶぎ)』というものかもしれないぞ」


〜〜〜「武技」とは一部の熟練冒険者達が使う戦闘術である。「武技」は移動速度や治癒力の向上といった自身の強化がメインになるものから、弓で岩を砕いたり盾の防御範囲を拡大させたりと武具や防具の性能を向上させるようなものまで幅広く知られている。しかし、それらがどうやって使えるようになるのかは冒険者達が情報を伏せているためはっきりしていない。(ちな)みにオーウェンも、共に迷宮(ダンジョン)に入ったあのベルンハルトから「武技」については聞き及んでいたが、その習得方法に関してはベルンハルトも知らなかったようである。〜〜〜


「どうでしょうね、実際使える冒険者を見ていないのでわかりませんが…」

「そうか。フゥ…まぁ、何はともあれかなりの数を掃討する事が出来た。もう少し日が上がったらヤツらの遺骸を回収して撤退しよう」

「そうですね」

そう言いながらオーウェンがナサニエル達の方を見ると、ナサニエル達は目をギュッと閉じたまま地面に倒れ込んで身体全体で息をしていた。


「ナサニエル、大丈夫か?」

「ハァハァ…今度こそ…死ぬかと…ハァハァ…おもた(思った)

「かなりの数が居たからな、今はゆっくり休め」

「ハァハァ…お前は…全然…息…切れてないのな」

「俺は少し頑丈だからな」

「少しどころじゃ…ハァハァ…無いだろ…絶対」

そう言うと、ナサニエルはまだ苦しそうに目を閉じたまま小さく笑っていた。


その後はオーウェンが1人1人に声をかけてまわる。ケイトやアニー達は顔を赤らめながら「…大丈夫…よ」と小さく返事していたが、何故かオードリーは疲れた表情ながらも元気な声で「色んなモノを見せてもらって…ホント貴重な体験だったわ」と興奮していた。シャルロッテ達の方へ向かうとシャルロッテとイザベルは赤面して何も話さず、ベアトリスは「私たちは…大丈夫だから…」と言ったきり俯いていた。


(戦いが終わっても、皆顔が赤いし鼻息も荒い。余程キツかったんだろう。とは言え、彼らにとって貴重な体験が出来た事には違いない)

などと、オーウェンが満足感に(ひた)っていると、後ろでようやく()()()()()()()()()()()()()ナサニエルがこちらを見て言った。


「うぉッ!?オーウェン!お前…パンツ1枚じゃねぇか!」


ーーーーーー

取り出した魔石と数匹の遺骸を残して、他は処理施設へと運び出す。朝を迎えて港にやってきた漁師達にも手伝ってもらうなか、オーウェンがパンツ1枚のまま海に入って片付けをしているといつの間にかローラが近くまで泳いできた。憲兵隊員達はセイレーンかと一瞬身体を強張らせたが、オーウェンがローラのことを紹介すると「人魚ってマジで居たんだな」などと言いながら、その美しさに見惚(みと)れていた。ローラがあちこちに山積みになったセイレーン達の遺骸を見ながら言う。


「…すっご。エルフってこんな数を相手に出来るの?」

「日頃から鍛錬を欠かさなければ、どうと言うことはない」

「数百体を相手にって鍛錬でどうにかなるレベルじゃ無いと思うんだけど…。ってかエルフって、ナサニエル達みたいにもっと細っそりしてるイメージだったけど、オーウェンの身体見てると…なんか違うよね」

「そうなのか?」

「うん、全然エルフっぽくない」

「…」

オーウェンが地味に傷つき黙っていると、シャルロッテ達がやって来た。

「片付け終わりましたわ、オーウェン様…って、ローラさん?」

「…姿を見られてもぉ、大丈夫なんですかぁ?」

とシャルロッテ達に聞かれてローラが答えた。


「えぇ。この前ブルーノさんから観光地アピールのために協力できないか打診されてたから、父からの返事を伝えに来たの」

「ローラさんのお父様から?」

「うん、そうだよ。あたしの父はここら辺の人魚で1番偉いの。簡単に言えば王様ってヤツ?」

「え?ローラさんってお姫様なの?」

「まぁ、そんなトコ。言ってなかったっけ?」

「聞いてませんよッ!」

と言いながら新たなライバルの出現に動揺するシャルロッテ達を余所に、オーウェンが言った。


「ブルーノさんは今はホテルにいるはずだ。連れてってやろうか?」

「え、いいの?じゃあ、お姫様抱っこで!」

と言いながら、ローラが両手を出す。

「…俺は磯臭いのは苦手なんだが」

「ひどーい!オーウェンだって海に入っているんだし、あんま変わんないじゃん!」

「…それもそうか。滑らないようにこれでも巻いてろ」

そう言ってオーウェンがシャツを渡そうとするとローラが「ちょっと待って」と止めた。

「一応、あたしも魔法が使えてね」

そう言うと、ローラは何やら唱え出す。すると徐々にローラの下半身から徐々に鱗がなくなり、普通の2本の足へと変わっていく。

「…どう?凄いでしょ?半日くらいしか持たないんだけど」

そう言うと、ローラは両手をオーウェンの首元に巻き付けた。


「ああ、凄いな。だが、これなら自分で歩けるんじゃ無いのか?」

「見た目は変えられても歩き方はわからないのよ。だから、ホテルまでお願いね♡」

「あぁ、いいだろう」

そう言うとオーウェンは、自分の服に着替えさせたローラをお姫様抱っこでホテルへと連れて行った。


ーーーーーー

ホテルではブルーノが戦いから戻ってくるオーウェン達のために、豪華なランチを揃えさせていた。オーウェン達が戻ってくるとエントランスでブルーノが出迎える。


「オーウェン様、お疲れ様でございました。昼食をご用意させていただきました、あちらでゆっくりと身体を休められてください」

「気遣って頂いて有り難うございます。ローラと約束があると聞きましたので連れてきました」

「そうでしたか、ありがとうございます。では、ローラ様も一緒にお食事を取られてはどうでしょうか?」

「え?いいの?」

「えぇ、たくさんご用意出来てますので」

そう言って、案内された一室には部屋を囲むように多数の料理が並べられている。

「ビュッフェ形式ですので、各自でお好きなモノをお取りください」


ブルーノがそう言うと、ナサニエル達は疲れを忘れたのか皿を持って料理へと群がった。

(わたくし)達も行きましょう」とシャルロッテ達に誘われてオーウェンが席を外そうとすると、ローラがオーウェンの手を掴んで言う。


「父からの話はオーウェンやシャルちゃん達にも関係するの。一緒に話を聞いてくれないかしら?」

オーウェンとシャルロッテ達はしばらく顔を見合わせた後、ローラの側の席へと着いた。「俺達にも関係するというのはどういうことだ?」とオーウェンが言うと、ローラは少し躊躇いながら言った。


「オーウェン、あたしと結婚して欲しいの」


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