渚のスター
声をかけてきたのは男7人と女2人のグループ。いずれもエルフではなく人族で、日焼けした肌にタトゥーが入っている者もいる。サングラスをかけた男が唐突に話し始める。
「俺ら、普段冒険者やってんだけどー、この前クエストでかなり稼いでー、ここまで遊びに来てんだよねー。女の子足りなくて困ってたしー、キミらもこんなヒョロい連中と居てもつまんないっしょ?」
と男が言うと他の連中もニヤニヤしながらコリン達を見渡す。
不意に、茶髪の男がダリアの腕を掴もうと手を伸ばしたがグレンが素早くその手を払う。
「痛って…何すんだ、てめぇ!」
「お前こそ何してんだよ、おっさん」とグレンが返すと、間髪入れずに今度は赤髪の男が殴りかかってきた。
その時、赤髪の男の腕が後ろからガシッと掴まれる。
「な、なんだ…てめぇ!はなs………痛ででででででッ」
と赤髪の男が、身体を捻るようにして倒れ込みながら振り返るとコートに身を包みフードを被った長身の男が立っていた。
グレンが少し安堵したような顔をしながら「俺でもやれたんだがな、オーウェン」と言うと、オーウェンが近寄ってきてグレンに傷がないか確かめる。
「無事か、グレン。コイツらは誰だ?」
「人族の冒険者だってよ、ウチの女子達をナンパしに来たから追い払おうとしてたんだ」
「そうか…」
そう言うと、オーウェンは冒険者の方に向き直って言った。
「見ての通り、先約が居る。他を当たれ」
すると、後ろに控えていたゴツい男が前に出てくる。
「おい、これ折れてんじゃねぇ?折れてるっしょ?うわー、やっちまったわー、俺ら冒険者なのに腕折られたら、働けないじゃーん。ねぇ、どうしてくれんの、コレ?慰謝料払って貰わないとなー」
と言いながら、オーウェンのフードに鼻息がかかるほど近寄ってきた。オーウェンは微動だにせず言い返す。
「握られただけで骨折するヤワな身体なら、死ぬ前に引退出来てよかったな。むしろ感謝しろ」
「…ンだと、調子にのってんじゃねぇよ、このクソガキぃ!!」
と殴り掛かる男の拳をひょいと屈んで避けた拍子にフードが外れ、中から絶世の美男子が登場する。人族の男達は全員口を開いたままポカンとし、男と親しげに腕を組んでいた2人の女もオーウェンの顔を見るなりスッと男の腕を離した。
「開いた口が塞がらないようだな…手伝ってやる」
そう言うと、オーウェンは男の顎に目では追えないほどの素早さでチョンと拳を触れさせた。途端に男はのけ反り泡を噴いて失神する。一瞬でわかるほどの格の違いに男達が狼狽えて言い訳をし始めた。
「ちょ、待て…待てよ!いや、待ってくださいよぉ!可愛いコ達が居たから、ちょっと遊びに来ただけじゃないっすかー。もう、本気にならないでくださいよぉー。腕だって、ホラ、折れてなんか居ませんし。ピンピンしてますよー…ハハ、それじゃ俺たちはこの辺で」
そう言って去ろうとしたグラサン男の肩をオーウェンがガシッと掴む。
「な…なんスか?」
「遊び足りないだろう、遊んでやる」
そう言うとオーウェンはバレーボールを取り出して男達にビーチバレーのコートに入るよう言った。
伸びた男を除いた6人がコートに立つと、オーウェンとナサニエルとグレンが反対側のコートに立つ。
「5点先取だ、負けた方は勝った方の望みを叶えてやる…それでいいか?」
「あ…あぁ。それで…いいぜ」
「サーブは全部お前達からで良い」
そう言うと、オーウェンがグラサン男にボールを渡す。グラサン男はニヤニヤしながらサーブの姿勢を取った。
(フフフ、俺たちが帰ろうとしてやったのに、得する条件まで付けてくるなんて…グヘヘ。その詰めの甘さ、思い知らせてやるッ!)
と、グラサン男が鋭いサーブを放つ。グレンが少し乱れながらもレシーブしたその瞬間、オーウェンがもの凄い跳躍を見せ、ラリーすることなく赤髪の男の顔面目掛けてボールを叩き込んだ。赤髪の男がコートから吹き飛ばされ、砂浜を転がりまくった後にピクリとも動かなくなる。
「…は?」と固まるグラサン男にオーウェンがドスのきいた声で言った。
「1点」
男達は途端に噴き出る汗を拭いながら、レシーブのポーズを取る。グラサン男が今度は少し高めの位置にサーブをしたが、ナサニエルがレシーブをすると、いつのまにか好位置に移動していたオーウェンが跳躍してスキンヘッド男の顔面にボールを叩き込み、コート外へ吹き飛ばした。
「2点」
グラサン男が慌ててコートに戻ってくる。
「ちょ!?…ちょちょちょ、タンマ!ターンマッ!強過ぎるってぇ!バレーのルール知ってる?」
「あぁ。身体の一部にボールが触れてコート外に出れば俺達の得点だ」
「間違っちゃいないんだけどぉ、この場合どちらかというとコート外に出てってるのは身体の方なのッ!ボールがコート内に落ちただけでもちゃんと得点になるから!無理して身体を狙わなくていいから、ねッ!?」
そう言うと、グラサン男は戻っていき再びサーブをする。先程とまったく同じパターンで金髪男がコート外へと吹き飛んでいった。
「3点」
グラサン男が再びコートに戻ってきた。
「ちょっとぉ!お兄さんの話聞いてた?無理して身体狙わなくていいって言ったじゃん!」
「別に無理はしていない。地面を狙うより、余程狙いやすい」
「嘘ッ!そんなん嘘よッ!どう考えても地面の方が広いじゃん!綺麗な顔してとんでもない嘘吐くね、君ッ!」
「…続けよう、時間が勿体ない」
「うわ、もう次も狙う気満々じゃん!ちょっと後ろのコ達とポジション変わってよ!ホント、頼むから」
グラサン男の情けない要望に溜息を吐きながらオーウェンがグレンに言った。
「仕方ない。グレン、お前がアタッカーの位置に立て」
「オッケー♪」
オーウェンが後ろへと下がったのを確認して、グラサン男は再びサーブする。オーウェンが完璧なトスをあげてグレンがスパイクすると、グラサン男も「そうそう、こう言うのを待ってたんだよ〜」などと言いながらレシーブする。タトゥー男が「喰らえぇ!」と叫びながらスパイクを決めた瞬間、後ろに居たオーウェンが間髪入れないバックアタックで、沈みかけたタトゥー男の顔面にボールを叩き込んでコート外に吹き飛ばした。
「4点」
淡々とした表情で得点を数えるオーウェン。残されたのはグラサン男とダリアの腕を掴もうとした茶髪男の2人になった。茶髪が「お前の緩いサーブのせいで皆やられちまったじゃねぇか、俺に替われ!」と逆ギレしながらグラサン男から半ば強引にボールを奪いサーブする。オーウェンが飛んできたボールをレシーブすることなくダイレクトに茶髪の男の顔面を打ち抜き、吹き飛ばした後に言った。
「今のはこちらの反則だ、やっとお前達に1点だな。…どうだ、続けるか?」
コートで1人立ち尽くしたグラサン男が「あ、もういいです」と言うと、試合は終了した。
オーウェンがグラサン男に近づき、グラサン男にだけ聞こえるような小声で言う。
「望みを言う前に、一ついいか?」
「あ、はい。…なんでもどうぞ」
「俺は無駄な争いは避けるが、殺る時は躊躇わない。5点目はお前の命だ、次は奪う」
「…はい。ホント、すみませんでした」
「俺の望みは一つだ…失せろ」
「はい、…本当にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。失礼します」
そう言うと、グラサン男は女達と共にのびた男達を引きずって何処かへと行ってしまった。
男達が去った後、ケイト達がオーウェンの下に集まってくる。
「もぉ、ヒヤヒヤしちゃったよ!あんな風にナンパされるの初めてだしさ」とオードリー。
「でも、オーウェン様が守ってくれて本当によかったですわ」とシャルロッテが言うと、イザベルもうんうんと首を縦に振った。オーウェン達が談笑するなか、少し離れたところにいたグレンにダリアが近づいて言った。
「…さっきは、ありがと」
「追い払ったのはオーウェンだ、…俺は特に何もしてねぇよ」
「そんな事ないから!…カッコいいなって…思ったから…」
そう言うと、ダリアは顔を赤くして皆の方へと戻っていく。
「…え?」と徐々に顔を赤くしながら困惑するグレン。
その側でコリンは「グレン、お前もか!この裏切り者ぉ!」などと1人騒いでいた。
このお話までが切れがいいので、投稿しましたー




