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いざ、王都へ

ホームルームが終わるとオーウェンはさっさと教室を出ていった。シャルロッテ達が思い思いに話す。


「皆さん、護衛を引き受けて頂き本当に感謝していますわ」

「本当にありがとうですぅ」

「シャルちゃんとベルちゃんの頼みなら断る理由ないよぉ♡ビーちゃんもしっかり守ってあげるから安心して…って言ってもナサニエルが居るからウチら必要無いか。アハハハ」

「そ…そんな、ワタクシとナサニエル…は、そんなんじゃ…」とベアトリスが顔を赤らめると、「ビーちゃん可愛い!ハグしたい!」とオードリーが抱きついていた。


すると男子達も集まってきて話し始める。


「明日から早速遠征だなぁ…色々買い込まなくちゃ」

「それにしても久しぶりだったな、隊長殿のあの緊張感」

「ですね、前にもまして威圧感が凄かったです」

などと言っていると、ナサニエルがベアトリスの側に座って言った。


「良かったな、やっぱりアイツは大事な所見てくれてただろ」

「…えぇ」と呟くとベアトリスは静かに微笑んだ。


ーーーーーー

その日の放課後、皆は明日から始まる王都への遠征に向けて街で買い物をしていた。女子とは別行動でナサニエル達が男子だけで商店を回る。ケイト達が遠巻きにその様子を観ていると、ナサニエル達の会話が聞こえてきた。


「なぁ、遠征って何が必要なんだ?」と出席番号11番のフレッドが聞く。

「食糧とか水じゃね?まぁ、オレらその気になりゃサバイバルできるけど」とナサニエル。

「隊長殿から貰った資料に必需品の項目あった気がするぜ、アレに従えばいいんじゃね」出席番号8番のグレンが言うと「お菓子とかダメかな、ダメかなぁ?」と出席番号10番のコリンが騒いでいた。


ケイトがガッカリした表情で頭を抱える。

「ありゃ、ダメだ。資料を確認したヤツ、グレンくらいしかいないじゃん」

「コリンに至ってはお菓子しか言ってないし」とオードリーも呆れ笑いする。

「ちょっと心配だね、手伝ってあげた方がいいかな?」と面倒見のいい出席番号6番のアニーが言うと「必要ないわよ、どうせ言っても聞かないんだから」と出席番号9番のダリアが言った。

「まぁいいじゃない、後で貸してとか言われるのも面倒だし。助けてあげよ?」と出席番号7番のエラがダリアを優しく諭すと、ケイト達は男子に合流した。


「アンタ達、まーたくだらないモン揃えようとしてたでしょ?」

「観てたのかよ、ってか資料持ってる?教室に置いてきちゃってさ」

「本当緊張感ないわね、アンタ達」

などと会話しながら必需品を揃えるナサニエル達。全てを買い揃える頃、辺りはすっかり暗くなっていた。


ーーーーーー

翌日、オーウェン達は日が昇り始める少し前に王都に向けて出発した。シャルロッテ達の乗る馬車を囲むように前方はナサニエルとオーウェンが、後方はケイトとオードリー、コリン・フレッド・グレンは左側を、ダリア・アニー・エラが右側をそれぞれ馬上から警戒した。道程(どうてい)の半分ほどまできた頃…


「予定通り、夕刻までには王都へ戻れそうね。やっぱり、鳳雛隊の騎兵10人に囲まれるとあの時のようで安心しますわ」などとシャルロッテとイザベルが話をしていると、ベアトリスが怪訝(けげん)な顔をして見ている。


「どうかされましたか、ビーさん」

「浮かない顔をしてるのですぅ」

「ワタクシ、実はその『鳳雛隊』という騎士団の名前を存じ上げなかったのです。昨日、公文書館で調べたところ確かに記載はあったのですが、設立の経緯は不明でした。普通、騎士団が設立される時は盛大な告知と祝賀会があると思うのですが…」

「そう言えば、ビーさんはオーウェン様達の活躍を知らないのでしたわ」

「シャル姉様ぁ、…お話ししても良いのでしょうかぁ?」

「えぇ。むしろ、同じクラスメイトの事なのだから知っておいた方がいいですわ」

そういうと、シャルとイザベルはベアトリスにこれまでのオーウェンやナサニエル達の活躍について話し始めた。


ーーーーーー

「…そんな事があったんですか?」

「えぇ。ここにいる皆さんは鳳雛隊の小隊長で、オーウェン様はその隊長をしていたんですよ」

「オーウェン様達が来てくれなければ、大変なことになっていたのですぅ」

「で、でも、どうして叙勲されないのですか?」

「…詳しくはお話出来ないのですわ。だた、そんな理不尽な扱いをうけても、オーウェン様は私達に優しく接してくれるのですわ」

「…」

(騎士という生き物は、何より名誉を尊ぶはず。…それだけの功績を評価されないなんて、相当屈辱に感じるでしょうに)


ベアトリスが物思いにふけっていると急に馬車が止まる。

「何事かしら」

先程まで雑談していたナサニエルとオーウェンが無言で辺りを見渡す。ドア越しにベアトリスが「何かあったの?」と声をかけると、アニーが「先に大きい猪が出たので少し様子を見るみたいです」と答えた。


ダリアがオーウェン達の方へ馬を寄せてくる。

「どこら辺?」

「50mほど先、左側の森から何頭かが道を突っ切って右側の森へと入っていった」

「…バリアント?」

「1.5m程度だったから違うと思うんだけどなぁ。なぁ、オーウェン?」

「…あぁ」

「普通の獣なら、急いで通ればいいんじゃない?」

「追突されて馬車が横転したらヤバいじゃん」

「そこはホラ、当たらないようにするとか…」などとナサニエルとダリアが話していると、オーウェンがコリンを呼び木霊に森の状況を確認するよう指示した。


「…やけに慎重ね、オーウェン?」とダリアが言うと、オーウェンは森の方を見つめながら「知っているか?」と聞いた。

「何を?」

「…猪が走るのは何かから逃げる時だけだ」


するとコリンが馬を走らせてきた。

「狼の魔物(バリアント)が群れでいる。森の中で猪達を追っていて、まだこっちには気付いてないみたい」

「…警戒しながら一気に突っ切るぞ。この道を利用する人達にわかるように『警告』の旗を刺しておけ」

「了解」

コリンが旗の準備のため後ろに下がる。


その様子を見ながらナサニエルがオーウェンに話しかけた。

「なぁ、オーウェンなら全部ヤれるんじゃないか?」

「…『殺せる』から殺しているわけじゃない。『避けられない』から殺すだけだ。今は避けられる」

「そっか…そうだな」

などと話しているうちに、コリンが「終わったよ」と声をかけた。

オーウェン達が馬車を挟み込むようにして、目撃した場所を素早く通り抜ける。オーウェン達が300m程離れた頃だろうか、森から猪が飛び出し、その後を追いかけるように馬よりも大きい狼の魔物(バリアント)が5匹ほど飛び出してきた。狼の魔物(バリアント)が道の真ん中で猪達を貪る姿が遠目に見える。


「ヤッバ!?あんな群れに囲まれてたら、きっと逃げきれなかったね」

という、ダリアの言葉にナサニエルはゴクリと唾を呑む。

その後もひたすら馬を走らせ、オーウェン達は夕刻の閉門前にオーウェン達は無事王都へ入ることが出来た。

続くーよー

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