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クロエの意図

寮に付いたオーウェンはさっさと自室に戻りシャワーを浴びる。途中、ナサニエル達は「心配したんだぞー」などと言って近寄ってきたが、魔物の血と泥に(まみ)れたオーウェンの姿を見るなり鼻をつまんで「…さっさと風呂入ってきて」と言い解散した。


1時間くらいかけて全身を洗いながら、オーウェンは迷宮(ダンジョン)の攻略を振り返る。

(ベルンハルトは目立つ戦いこそしなかったが、それ以外の状況判断などは優秀だった。冒険者とは面白い職業だ。…それにしても迷宮(ダンジョン)に住む魔物(バリアント)達は、力技だけではどうにもならないヤツらばかりだったな。…やはり、()()()()()()()()()。実戦不足なのは否めないということか…)

ーーーーーー


オーウェンがバスローブに着替え、髪をタオルで(まと)めながら寮の貴賓室(きひんしつ)へと向かう。部屋に入ると母エレノアが「お帰り、オーウェン」とハグをしてきた。オーウェンは、久々の再会に気恥ずかしさを感じながら「た…ただいま」と返事をする。ふと、周囲を見渡すとアウグストの他、クロエ、シャルロッテにイザベルまで集まっていた。

「皆様、お待たせしてすみません」と言うオーウェンにクロエが向き直って言った。


「いえ、私達も色々と話をしていた所です。オーウェン、そこにかけなさい」

「はい」

「…オーウェン、貴方にいくつか隠してきた事があるのですが聞いてくれますか?」

「もちろんです、王妃殿下」

オーウェンがそう言うと、クロエはゆっくりと話し始めた。


〜〜〜オーウェン達が巨大熊と戦うさらに半年程前、王都では連合国間の会談に合わせ、ある者達によるクーデターが(くわだ)てられていた。実際には未然に防ぐ事が出来たため、この件が(おおやけ)にされる事は無かったのだが、首謀者の1人に国王の信頼が厚かった近衛隊長が含まれていた。国王は彼が率いていた近衛兵達を信用出来なくなり、会談が行われる期間の王都の警備を信頼出来るアウグストの<紅の(おおとり)>へと依頼した。会談は無事に終えることが出来たが水面下で続けられていた調査で、近衛隊長の手記にある魔物(バリアント)の存在が記載されていたことが判明した。それこそがあの巨大熊である。後日、クロエ達から巨大熊に関する報告を受けた国王陛下は2つの可能性を疑う。1つは、国王陛下の信頼の厚い者を排除しようとした可能性…そしてもう1つは、アウグストが近衛隊長と繋がりがあり魔物(バリアント)(くわだ)てに用いようとした可能性であった。〜〜〜


「そんな!?アレが私の自作自演だったとでも言うのですか!?」とアウグストが声を荒げる。


「あの戦いを見れば、誰もがそんな事は無いと感じられるでしょう。ただ、人伝(ひとづた)いに聞いた国王陛下にすれば、巨大熊を何の被害も出さずにたった2人で討ち取った事の方が信じられなかったのでしょう。信頼の厚かった部下に裏切られた後ということもあり、国王陛下はとても疑心暗鬼(ぎしんあんき)になっておられたのです」

クロエの言葉を聞いて、アウグストは黙り込んだ。オーウェンがゆっくりと口を開く。


「…それで、私と父に嫌疑(けんぎ)がかけられたのですね」

「えぇ、特に貴方はその若さで少年兵を(まと)める力を持っており、娘達からも好かれるほどの存在感(カリスマ)を持っていますからね」

オーウェンがクロエの話を聞きながら、これまでの事を頭の中で整理する。


(国王陛下は当初、会談を終えてあの闘技会に参加される予定だった。だがクーデター未遂の件により王都を離れることを断念し、その代理に王妃殿下達を送った。その後、闘技場に近衛隊長の手記に記載のあった巨大熊が闘技場に現れた事を知った国王陛下はアウグストのクーデターへの関与を疑い、ひいては多数の少年兵を訓練した俺にまで疑惑を持つようになった。…恐らく、国王陛下はあの闘技会が()()()()の罠だったと思い込んだのだろう。王都から離れた警備の薄い土地で巨大熊を用いて国王陛下を亡き者にするか、あるいは、代理を送った場合でも功績を理由に多数の少年兵が王都へ凱旋(がいせん)して命を狙いにくると考えたのかもしれない…)

「なるほどです、やっと叙勲されなかった理由がわかりました。でも、何故今まで隠していたことを急にお話しして頂けたのですか?」

オーウェンが尋ねるとクロエが、ゆっくりと口を開いた。


「貴方が迷宮(ダンジョン)から戻ってくる前…アウグストは言いました。『騎士団長であるよりもオーウェンの父である、苦しむ息子を助けたいという親の気持ちがわかってくれ』と…。その時、私は自分の間違いに気付いたのです。危険を顧みず、愛する息子を助けに行くアウグストの愛の深さを、そして、そんな愛する我が子を王に放つ刃に変えるわけが無いと。…アウグスト、本当に申し訳ありません。陛下を想うあまり…私もまた…貴方達に疑いを…持ってしまったの…」

クロエが涙を流しながら言うと、側にいたシャルロッテやイザベルも涙を流しながら母の赦しを()う。


「アウグスト様!オーウェン様!お母様は、ただお父様の事を…大切に想っていただけなの!お父様だって、オーウェン様に直接会えば、きっと仲良くなれるはずなの!お願いだから…嫌いにならないでッ!」

泣き止まない3人を前にオーウェンがアウグストの方へ目を向けると、アウグストは「お前に任せたぞ」という顔で微笑んで見せる。


オーウェンは一息つくと、ゆっくりと話し始めた。

「クロエ王妃殿下、シャルロッテ様もイザベル様も顔をお上げください。父上はもちろん、私もクロエ様達を嫌いになる事などあり得ません。大切な家族を想えばこそです、クロエ様の取った行動は何一つ間違っていなかったのですよ。父も私も、納得のいく話が聞けてそれで満足なのです」

オーウェンの言葉にクロエが顔を伏せながら「ありがとう」と繰り返す側で、シャルロッテとイザベルは恍惚(こうこつ)とした表情でオーウェンを見つめていた。


するとアウグストが雰囲気を切り替えようと話す。

「それでと…一先(ひとま)ずは疑念を晴らせたようなんだが。…問題なのはお前だ、オーウェン。どうして迷宮(ダンジョン)に入ったんだ?もっと他にやりようがあったと私は思うんだが?」


オーウェンはアウグストの方へ向き直り、淡々と話し始めた。

「父上も知っての通り、私は学院内で厚遇(こうぐう)されておりました。最初は功績を認められたからかと考えておりましたが、他所の領から来た生徒達が私の厚遇(こうぐう)に不満を感じている所から、私達が巨大熊を倒したことが他領に知らされていない事を知りました。ちょうど同時期にクロエ様からの返事が途絶えた事で何か(たくら)まれている可能性を考えましたが…証拠を見つけられなかったため父上には相談できなかったのです」

「…たったそれだけの事から、よくそこまで勘づいたものだ」

「そこで、試しに迷宮(ダンジョン)に潜る事を思い付きました。私が迷宮(ダンジョン)に潜った事に対しクロエ様が何らかの行動を起こせば、私が監視されていた証拠になるのでは無いかと」

「お前の発想は何というか…奇抜だな」


そう言うとアウグストは驚きながらも嬉しそうに笑って話を続ける。

「で、その結果、どうして迷宮(ダンジョン)が無くなってしまったんだ?」

「…話すのには少々時間がかかるかもしれませんが…」

と、オーウェンが言うとシャルロッテやイザベルが「私も聞きたい」と身を乗り出してくる。


ふぅと溜息をついた後、オーウェンは迷宮(ダンジョン)で起こった事を淡々と話し始めた。皆が脂汗を浮かべながらオーウェンの話に聞き入る。キマイラの(くだり)では、オーウェンが危険を承知でキマイラの腹の下に潜り込んだ所で母エレノアが意識を失いかけ、アウグストに倒れかかっていた。


アウグストが目を見開いて言う。

「…オーウェン、何て無茶したんだ!?危うく死ぬトコだぞッ!!」

「確かに、今思い返してみると危なかったかなと思いますね。ハハ」

そう言うと、カップに入った紅茶をグイッと飲むオーウェン。


『…他人事のように言うんじゃ無いッ!』

と、その場にいた皆が異口同音にツッコんだ。


続くよー

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