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集う仲間達

シャルロッテ達に留学の話を出してから1週間後、オーウェンはシャルロッテ達の卒業式に参加していた。ドロシーも戻ってきており、観覧席には車椅子に座るブレイブの姿が見える。答辞をシャルロッテとイザベルが読み上げると、ヴィルヘルム達は嬉しそうに拍手をしていた。


その後オーウェン達が王都へと戻ると、王都にはすでにケイト達やフレッドとコリンの姿があった。


「聞いたぜ、オーウェン!この任務の暁には、俺達も正式な騎士隊員様になれるんだろ!?」

「女っ気が無い単調な訓練の日々に飽き飽きしていたトコですよ。いやぁ、ホント鳳雛隊に入っていて良かったと思いましたね」

などとコリン達がふざけていると、ケイトとオードリーが「2年経って少しは成長しているかと思ったけど、やっぱりバカはバカのままね」とツッコむ。その横でアニーやエラは、楽しそうにクスクスと笑っていた。ダリアとグレンは付き合っているようで、コリンがやたらと絡んで来て面倒臭そうにしていたがそれでも終始手を繋いでいた。集まってくれた皆に挨拶をしようと、オーウェンが声をかける。


「久しぶりだな、皆。変わらず元気でいてくれたようで、嬉しいぞ」

『…』

「どうした?何故、皆ぼーっとしているんだ?」

「い、いや、前はずっと一緒に居たから見慣れてたんだけどね。…久々に見ると…ホント、ヤバいね」

などと言いながら、ケイト達は顔を赤らめていた。コリンが「ぐぬぬ…あの頃がMAXだと思っていたのに、軽々と超えてくるとか訳がわかりません!」などと騒いでいたが、オーウェンは「…一体、何の話をしているんだ?」とわかっていない様子だった。


すると、オーウェンの収納バッグが小刻みに震える。オーウェンが中から取り出したのは、ティンカーが作った魔道具“マジックフォン”だった。


「ティンカーか?」

「うん、こっちは準備済んでるから、いつでも来ていいよ!」

「わかった、今からそっちに向かう」


オーウェンがマジックフォンを切ると、ナサニエルが近寄ってきて言った。

「すげぇ、それマジックフォンじゃん!ティンカーにもらったのか?」

「あぁ。訳あってティンカー達は、今回の旅には同行できないからな。直ぐに連絡出来るようにと、俺にも持たせてくれたんだ。これで離れていても問題ない」

「そっか、すぐに声が聞けるって安心だな」

「そうだな」

などとオーウェン達が会話をしていると、エルヴィスとオベハが出てくる。


「準備出来ましたよ、我が主」

「私も準備は整っていますよ、オーウェンさん」

と2人が言うと、オーウェンは2人の下に駆け寄った。


「また振り回してしまって済まないな、エルヴィス」

「いえいえ、主の側こそ私の帰る場所ですから」

「オベハ殿も済まない。ティンカー達に付き合って欲しいという無理を聞いてくれて、本当に感謝している」

「今更、遠慮は不要ですよ。オーウェンさん」

そう言って2人が笑ってみせると、オーウェンも嬉しそうに微笑んだ。


その後、オーウェンが皆を集めて呼びかける。


「これより、俺たちはプレリに向かう」

「ん、どういうことだ?船に乗るなら、ブルイン王国に向かうんじゃねぇの?」

とナサニエルが訊ねると、オーウェンは頷いて言った。


「確かに船に乗るならブルイン王国からだ。だが、船だと一番近い陸地まで半年はかかるし、陸路の移動では2年もかかるそうだ。そこで急遽、ティンカーが俺達専用の船を用意してくれたというわけだ」

「…って、どのみち船に乗るなら海が無きゃダメじゃん」

とツッコむナサニエルに、オーウェンは自信満々に言った。


「いや、俺たちの船が進むのは空だ」

ーーーーーー


ヴィルヘルムやブレイブに別れを告げて、プレリへと迷宮(ダンジョン)スキルで移動したオーウェン達の目の前には、巨大な飛空艇が地面より少し高い位置でホバリングしていた。


「で、デケェ…。…船って空に浮くのかよ?」

とフレッドが驚愕していると、オーウェン達に気付いたティンカーが、飛空艇の窓から手を振って呼び掛けた。


「おーい、こっちこっち!皆も早く乗りなよ、何時でも出発できるからさ!」

ティンカーに促されて、オーウェン達が梯子を駆け上がる。ティンカーに導かれて進んだ先には、豪華なソファとシャンデリアが備え付けられて広々としたリビングがあった。


唖然とするオーウェン達に、ティンカーが嬉しそうな顔をして言った。

「良いねぇ、その表情!どうだい、びっくりしただろう?」

「俺はてっきり、もっと小型のやつかと想像していたんだが…」

「ハハハ。そうしても良かったんだけど、せっかくオーウェンから質の良い魔石や魔血石をたくさん貰ったからね。どうせならゴージャスなヤツに仕上げたいって思って、ちょっと本気出しちゃった」

そう言って笑うティンカーに、コリンが尋ねる。


「…これって、昔行ったルクススの高級ホテルよりゴージャスなんですけど…一体いくらくらいするんです?」

「んー、どれくらいだろ?建築に使ったモノは大体アールヴズで手に入れたものだよ。船体は世界樹から切り出した木材で出来ているし、ガラスもヴュステから取り寄せた砂で錬成したものだし、使っている魔石もオーウェンから貰ったものだし…他にも色々使ったけど、資金は全部オーウェンに出してもらったんだよ」

ティンカーがそう言うと、コリンは震える声でオーウェンに尋ねた。


「…オーウェン君、一体いくらティンカーさんに渡したんですか?」

「しっかりした物が出来るようにと…大体300億くらい」

とオーウェンが小声で言うと、ナサニエル達は腰を抜かして座り込んでしまった。その様子を見てティンカーが呟く。


「オーウェンにとっちゃ、そんなに大した額じゃないと思うけど。この前の旅でめちゃくちゃ儲けているしね」

「ど、どういうことですか?」

と尋ねるシャルロッテ達に、ティンカーがジョーコ公国での出来事を面白そうに話した。


「…んで結局、競馬でも一位になって賞金も出たし、僕たちも元手の3000億を色んなところに賭けたし、ディール・カーサ=ジョーコ公爵からも謝礼を貰ったりで、オーウェンは5兆コルナを超える資金があるのさ。だから、300億くらいは大した額じゃないんだよね」

『…』

「ん、どうしたの?皆、無言になっちゃって?」

『いや…久々にこの規格外感を味わったな…ってさ』

そう言うとナサニエル達は再び押し黙ってしまった。


しばらくしてナサニエル達が落ち着きを取り戻すと、ティンカーが飛空艇の内部を説明し始めた。飛空艇は3階建てで、オーウェン達が今いる2階にはリビングの他にキッチンが併設されたダイニングルームや、下界が一望できる大きなデッキがある。下の階には特大の浴場にサウナ、トレーニングルームやシアタールームが併設されたプレイルーム、そしてシャワールーム&トイレが完備されたそれぞれの休憩部屋とゲスト用のスイートルームが幾つか備わっていた。早速ナサニエルやケイト達が大騒ぎして下の階へ探索に向かうと、ティンカーはオーウェンとシャルロッテ達を連れて3階へと移動した。


「こっちの階は操縦室と会議場、後はオーウェンのリクエストでエルヴィスさん専用の部屋と書庫、それと皆で入れるくらい広いプールがあるよ。冬には露天風呂として使えるように温水も溜められるのさ。後方は全部オーナーズエリアになってて、オーナーズルームと幾つかの()()()スイートルームに分かれているんだ。鍵はオーウェンに渡しておくから、後でオーウェンに入れてもらってね」

そう言うとティンカーは、オーウェンにオーナーズエリアに繋がる通路の鍵を手渡した。エルヴィスが自分専用の部屋を作ってくれた事に感涙している側で、オーウェンがティンカーに尋ねる。


「ティンカー、お前が船を降りた後の操縦はどうやってするんだ?俺はこの手のものを動かすのは苦手なんだが…」

「そう言うだろうと思って、自動運転のサポートもつけているよ。操作自体もそこまで複雑じゃないし、今のうちに教えてあげるから、付いてきて」

と言われて、オーウェン達は操縦室へと向かった。

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