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Eランク試験

夕飯を取りながら、事の顛末(てんまつ)を聞いたオーウェンが笑いながら言った。


「受付嬢のメイさんまで巻き込んで賭けをしたのに負けたのか…ヒトの頑張りを賭け事にしようとするからそうなるんだ、ハハハ」

「オーウェンがそんなに急がなければ、常識的に考えてボクの予想した時間が正しかったはずなんだよ!」

「…常識的に考えたら、どんなに凄い人でも3日はかかるんですけど」

とメイがティンカーに冷静にツッコむ。一同が笑いに包まれる中、オーウェンが言った。


「俺はそんなに急いだつもりはない。移動には風魔法と自分の足以外は使わなかったしな」

「…側に居過ぎて感覚麻痺してたけど、改めてオーウェンって規格外なんだなってしみじみ思うよ。…慣れって怖いなぁ」

ゴーシュが呟くとティンカーとナギはうんうんと同意してみせたが、オーウェンはその様子を気にもせず受付嬢のメイに話しかけた。


「ところで、Eランクの試験はいつ頃受けられるんだろうか?」

「試験は毎日午前中に行っていますよ。予約制ですが、希望はありますか?」

「明日の空いている時間で頼みたいんだが」

「明日は…11時開始のものなら空いていますね」

「じゃあ、それで頼む」

「わかりました、予約しておきます。簡単な筆記試験もありますので会場には5分前にお越しくださいね」

「あぁ、わかった」

その後もオーウェン達は色々話をしながら食事を続け、宿に戻る頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

ーーーーーー


翌日、オーウェンはギルド館にある試験会場に向かう。30分程度の簡単な試験を5分もかからず済ませると、オーウェンは屋外の闘技場へと向かう。闘技場では試験官らしき男が欠伸(あくび)をしながら寝転がっていたが、オーウェンの姿を見ると身体を起こして言った。


「なんだ、もしかして受験者か?筆記試験はどうしたんだ?」

「簡単だったからな、済ませたらここに向かうよう案内されたぞ」

「早過ぎだろ!…もうちょっと昼寝出来ると思ってたんだがなぁ。まぁいいや、早速始めるかい?」

「あぁ、何をすれば良い?」

「1対1の模擬戦さ。そこにある木剣で俺と数回打ち合って防げたら合格、防げなかったら不合格…簡単だろ?」

「わかった」

そう言ってオーウェンが1番長い木剣を取ると試験官は苦笑しながら言った。


得物(えもの)が長い方が間合いを取れるって考えはわからんでもないが、木剣でも本物のロングソードと同じ重さにしてあるんだぜ?そんなに重いヤツを選んで大丈夫か?」

「鍛えているからな、問題ない」

「ったく、エルフは強がりが多いからなぁ…後悔しても知らねぇ、ぞッ!」

と言いながら切りかかってくる試験官。オーウェンは試験官に言われた通り、木剣を打ち返す。すると試験官の持っていた木剣は根本から折れて闘技場の隅へと飛んでいった。試験官が頭を掻きながら言う。


「あ、あれ?使い過ぎて古くなってたのかな?悪いな、新しいヤツに変えてもう一度やろうか」

しかし、その後新調した木剣も次々と叩き折られて試験官は悪態をついた。


「クソ、どうなってんだ?新品もポキポキ折れやがる…業者代えるか?」

「どうした、試験は終わりか?」

「いや、まだだ。お前の実力がわかってねぇからな」

「折れるのが気になるなら、そっちは鉄製のものでいいぞ。どの道、叩き折れてしまうだろうが」

「おいおいおい、この木剣が折れたのがお前の仕業とでも言いたいのか?自分を認めさせたい気持ちはわかるが、強がりもそこまで行くと滑稽だぜ?」

「さっさと試験を終わらせたいだけだ。この程度の『遊び』に付き合うほど、俺は暇じゃないからな」

「言ってくれるじゃねぇか。なら、リクエストに応えて刃を潰しただけのヤツに変えてやるよ。『遊び』って言ったこと…死ぬほど後悔させてやるぜッ!」

そう言って飛びかかってきた試験官の手元から一瞬で刃の部分が消し飛ぶ。強い衝撃が握っていた手から伝わり、試験官はきりもみしながら闘技場の奥へと吹き飛ばされた。慌てて身体を起こしながら試験官が驚きの声をあげる。


「!!…な、何が起こったんだ!?」

「鉄製の武器なら、うまく伝わるかと思ったんだがな」

「ま、まさか…お前、本当に木剣を折っていたというのか?」

「さっきからそう言っている。どうだ、俺は合格で良いのか?」

「あ、あぁ…合格だ。…でも、なんで木剣を折ったりした?」

試験官にそう聞かれると、オーウェンはふぅと一息ついて言った。


「得物を無くすことは死ぬことに等しい。…俺が『遊び』と言った意味がわかるか?」

「!!」

自分が何度も殺される状況にあったことを指摘され、呆然と立ち尽くす試験官。そんな彼を1人残して、オーウェンは闘技場を後にした。

ーーーーーー


15分足らずで試験を終えてきたオーウェンを見つけて、メイが声をかける。


「オーウェンさん、どうしました?お手洗いですか?」

「試験を終えてきたところだ、早速だがEランクに変えてくれるか?」

「えぇ…えぇ!?もう終わったんですか!?あの試験官から無傷で帰ってきたヒト、初めて見ました。…オーウェンさんって武術の習い事でもしていたんですか?」

「特に習ってはいないが、一通りの心得はあるつもりだ」

「へぇ〜…、エルフの方って弓ばかり使っているイメージだったので意外です。…はい、Eランクの冒険者カードが出来ましたよ。この調子だとどんどんランクアップしていけそうですね!ちなみに、D〜Fランクはカードが剥き出しですけど、Cランクは銅製、Bランクは銀製、Aランクは金製のカードケースがついてきて見た目も超豪華になるんで頑張ってくださいね!」

「そうなのか…Sランク以降もそういうサービスはあるのか?」

「Sランクは白金(プラチナ)製、SSランクはミスリル製、SSSランクはオリハルコン製という風に聞いていますよ、ウチではどれも見たことありませんけど」

「なるほどな…ためになった。礼を言う」

「いえいえ、これも私の仕事ですから。クエストはあちらの掲示板に張り出しているので気になるものがあれば声をかけてくださいね」

「あぁ、わかった」


そう言ってオーウェンが掲示板の方へ向かっていくと、先に掲示板を眺めていたティンカーとゴーシュが声をかけてくる。


「あ、オーウェン。もう試験終わったんだね」

「あぁ、特に問題なく受かったぞ。2人は何しているんだ?」

「オベハさんからのクエストが出される前に、オーウェンとゴーシュのランクを少しでも上げておいた方がいいんじゃないかって話になったんだよ。ね、ゴーシュ?」

「うん。ティンカーがオベハさんに他の冒険者も参加するのか聞いたら、オベハさんシラをきってたでしょ?あれって、きっと高ランクのヒトが参加してくれなかったからだと思うんだよね。この町で1番ランクが高いヒトでもCランクだって言うからさ。少なくとも僕達がBランク以上になって呼びかければ、応じてくれるヒトも増えるんじゃないかなって思ったんだよ」

「…一理あるな。それで、手っ取り早くランクを上げられそうなものはあるか?」

「いくつか見繕ってはいるんだけど…その前に、後ろの連中をどうにかした方がいいかもね」

と言ってゴーシュがオーウェンの背中の方へと視線を向ける。オーウェンが振り返ると、モヒカン男がボコボコの3人組を引き連れて立っていた。ティンカーがジト目でオーウェンを見つめて言う。


「…何したの?」

「別に何もしていない…彼らには」

とオーウェンが言うと、クチャクチャと何かを噛みながらモヒカン男が突っかかってきた。


「テメェか?ォーウェンっつーのはよぉ?」

「オーウェンなら俺の事だが、何か用か?」

「テメェが試験官怒らせたせいでよ?ウチの子分共が試験に合格出来なかったじゃねぇか、どうしてくれんだよぉ?」

「アレにやられるくらいなら、その程度ということだろう。もっと鍛えてまた挑めばいい」

「俺はコイツらを連れて、今日が期限日のクエストを終わらせるつもりだったんだよ…テメェのせいで違約金払わなくちゃいけなくなっちまうだろうがッ!」

「知らん。それよりも、合格していないFランク冒険者を頭数に入れた自分の甘さを反省したらどうだ?」

「テメェ…口の利き方に気をつけろぉ!俺はDランクなんだぜ?」

「俺はこれでも丁寧に対応しているつもりなんだがな」

「…なら、俺が本当の礼儀作法ってヤツを教えてやるぜッ!」

と叫びながら殴りかかってくるモヒカン男。オーウェンは微動だにせず、モヒカン男の顎を素早く撫でた。三半規管をグルグル回されて、男がフラフラと転倒する。後ろの3人組は何が起こったのかもわからず、ただただ動揺していた。オーウェンが倒れた男の代わりに、3人にドスの効いた声で忠告する。


「面倒は嫌いだ、この程度で済ませてやろう…ソイツが目覚めたらしっかり伝えておけ」

『は…はい…』

そう言うと3人の手下は男を担いでそそくさとギルド館から逃げ出していった。こうしてオーウェンは見事、C()()()()()()()()()()()()D()()()()()()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()

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