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翌日、オーウェン達はネレウス達に見送られてルクススへと帰る。帰り際にノアが握手を求めてきて言った。


「き、昨日も謝ったけど…本当、済まなかったな」

「いえ、妹の事を思ってという気持ちは理解(わか)りますので。また、ローラの里帰りに同行する時にはアトラスについてもっと教えてください。ノア義兄(にい)さん」

「お、おぅ!任せてくれよ!」

そう言うとノアは嬉しそうに親指をグッと立ててみせた。ネレウスがその様子を見て言った。


「お前のヒト族嫌いも和らいだようだな、ノア?」

「そ、そんなんじゃねぇよ。ほら、アレだよ…オーウェンはローラの婚約者で俺の義弟(おとうと)になったんだから、特別にってヤツだよ。だいたい、オヤジだって(おか)のヤツらは嫌いだったろ?」

「あぁ、今でもそんなに好いているわけではない。だが、オーウェンは特別だ。あの日、何処の誰とも名乗らぬ我の唐突の願いを、迷う事なく引き受けてくれたその優しさを見て、(おか)の者も捨てたものではないと教えてくれたからな」

そう言うと、ネレウスはオーウェンに向き直って言った。


「…ローラの事、頼んだぞ。これは王ではなく1人の親としての願いだ」

「はい、必ず幸せにするとお誓い申し上げます」

オーウェンが返事をすると、ネレウスは深くゆっくりと頷いた。

ーーーーーー


オーウェン達がルクススへ戻ると、ブルーノが海岸沿いまで迎えに来ていた。ブルーノはローラの姿を見て少し驚いた様子だったが、すぐに表情を戻して言った。


「…ヴィルヘルム様がホテルの迎賓室でお待ちです」

「…わかりました」

そう言うとオーウェンはシャルロッテ達に向き直って言った。


「シャル様達はこちらで待っていてください。俺は…ヴィルヘルム様と話をしてきます」

「いいえ、私達も一緒に行きますわ。ローラさんの気持ちを確かめようと提案したのも私達ですし」

シャルロッテがそう言うと、イザベルやローラもウンウンと頷いてみせた。

ーーー


オーウェンがローラを車椅子に乗せて迎賓室のドアを開けると、ヴィルヘルムが声をかけてきた。


「オーウェン、戻ったようだn…何故、ローラ王妃がここにいる?」

「実はその…」

「…まさか婚約したというのか!?まったく…シャル達にどうやって伝える気だ、お前は!?」

とヴィルヘルムが声を荒げると、シャルロッテ達が遅れて迎賓室へと入ってきた。


「お父様、私達はオーウェン様がローラと婚約した事を既に知っています」

「シャルにベルまで!?…何故ここに居る?」

ヴィルヘルムの問いに、シャルロッテ達がこれまでの経緯を説明する。オーウェンの挙動が1ヶ月ほど前からおかしかったこと、オーウェンはシャルロッテ達に気遣ってローラとの婚約を断ろうとしていたこと、そしてシャルロッテ達がローラの気持ちを確かめるよう説得したこと…。シャルロッテが一通り話すとヴィルヘルムは咳払いをして言った。


「おおよそ、大体の事情は理解した。だが、お前達はそれで良いのか?」

「私達はオーウェン様と早く出逢う事が出来ました、でもこれから出逢う女の子達にもオーウェン様を好きになる権利があるはずです。オーウェン様はとても包容力のある方ですので、3人が4人になったところで変わらず愛してくれます。だから、お父様の心配してくださるお気持ちもわかりますが、オーウェン様を責めないであげてください」

「お前達がそう言うなら…」

と言いつつも納得していない様子のヴィルヘルムに、これまで黙っていたローラが話し始めた。


「ヴィルヘルム様、発言してもよろしいでしょうか?」

「…なんだ?」

「私の父、ネレウス王や兄…ノア王子は(おか)の者を嫌っています。聖アールヴズ連合国とアトラス国が通商の取り決めは出来ても、友好条約を結べなかったのはそのせいです」

「…あぁ、知っている」

「ですがそんな父も兄も、私と婚約したことでオーウェンだけには気を許すようになりました。この婚約は今後、両国が友好的な関係になっていく良いきっかけになるはずです。ですから…」

「皆まで言わなくとも良い。余はお前達の婚約を祝っていないわけではない…、だが結婚には責任が伴うものだ。人族の国と違って我々エルフには離婚などというものはない。誓いを交わせば死が2人を別つまで夫は妻を守り、妻は夫に寄り添うものだ。多くの妻を持つということは、それだけの責任を抱え込まなければならない…オーウェン、お前はその事をきちんと理解しているか?」

ヴィルヘルムがジッとオーウェンを見つめる。少し間を置いてオーウェンが話し始めた。


「以前、父にシャルロッテ様達との婚約について相談したことがあります。その頃、彼女達を幸せにすることができるのか悩んでいた私に父は言ってくれました。『その不安は幸せへの道標』だと。悩むことが苦しくても悩み続けるのは、その先に幸せな未来が待っている事を信じられるからということなんだと思います。ですから…私は彼女達と笑顔の絶えない日々を送れるように、これからも悩みながら努力していく所存です」



オーウェンの真剣で前向きな言葉に、シャルロッテが涙を潤ませながら言った。

「この先…たとえ何があっても、オーウェン様に寄り添っていきますわ。喜びだけでなく、悲しみも悩みも一緒に分かち合いましょう、オーウェン様だけに苦労はさせませんわ」

「私もぉ、同じ気持ちですぅ」とイザベルが言う。

ドロシーが「そうですね。皆で分かち合い、助け合っていきましょう」と笑顔で言うと、ローラも「うんうん♡」と嬉しそうに言った。ヴィルヘルムは皆の表情を見てふふっと笑うとオーウェンにプレッシャーをかける。


「どうやら4人とも、お前と幸せになる事を信じて疑っていないようだ。オーウェン、決して彼女達の期待を裏切らないようにな」

「は、はい。…努力します」

「それにしても…つくづく困難にばかり突っ込んでいく男だな、お前は。余は妻1人ですら満足させるのに苦労していると言うのに」

「…ヴィルヘルム様」

「お前はまだ分からぬだろうが、約束事1つ守れなかっただけで不機嫌になる妻の機嫌を取るのが如何に面倒で煩わしいことか…」

「ヴィルヘルム様…その話はその辺にした方が…」

「ここだけの話、余も色々と悩むこともあってn」

と言いかけたヴィルヘルムの肩に、()()()がポンと手を乗せて言った。

「陛下の御悩みって何かしら?私に詳しく教えてくださる?」


ヴィルヘルムが青ざめた顔で言う。

「…オーウェン、いつからだ?」

「陛下の『妻1人ですら満足させるのに苦労している』の辺りからです」

と言うと、ヴィルヘルムはダラダラと汗をかき始めた。シャルロッテが()()()()()()言った。


「さぁ、そろそろ私達は学院へと帰りましょう。お父様はお母様と色々と大切なお話があると思いますので」

「ま、待て。シャルロッテ!このタイミングで置いていかれては…」

「そ、それでは陛下、私達はこれで。どうか…御武運を」

「オーウェン、お前もか!?」

などと騒ぐヴィルヘルムを置いて、オーウェン達はそそくさと部屋を出ていく。部屋のドアが閉まる直前に、ヴィルヘルムが「すまんかった」と平謝りする声が聞こえるとシャルロッテ達はイタズラっぽく笑っていた。


ホテルを出てオーウェンが迷宮(ダンジョン)スキルを使う。ローラは初めて見たダンジョンにビックリしていたが、水路などの設備を見て、何処でも水が得られるとわかりすごく喜んでいた。オーウェンが少し考えた後、ローラに尋ねた。


「…人魚は、海水じゃなくても良いのか?」

「そうよ、乾くと鱗が傷んじゃうから水場から長く離れられないってだけなの。まぁ、前みたいに魔法を使えば(おか)のヒト達みたいに足にすることもできるんだけど、何時間も続けていると魔力を消費しちゃって疲れるから」

「…そうだったのか」

「でも良かった、これなら何処でも水に入ることができるし♡ありがとね、オーウェン♡」


そう言ってローラがオーウェンにギュッと抱きつくと、シャルロッテ達やドロシーが自分達も抱きつこうとぐいぐいと身体を押し付けてくる。オーウェンはあちらこちらにあたる柔らかい感触に赤面しながらも、こんな調子で大丈夫だろうかと早速不安になっていた。

あの後、また高評価してくださった読者様…ありがとうございますっ。頑張れって言ってもらえているようで、本当に勇気が出ました。


正直、ハーレム展開というのは良くある話ですし、受けが良くないというのは承知しています。いくら異世界でも、ハーレムに理解を示す女性は居ないだろうと思えるのも自然な事です。しかし、あえて言わせて頂きます…オーウェンさんの魅力を引き出す(ネタを増やす)には、1人の女性では色々と足りないのですっ。(切実


オーウェンさんがハーレムという王道ご都合主義の展開の中で、女性を都合良く扱わないように努力していく様子を見守っていただけたらなと思いますので、これからもよろしくお願いします。

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