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ローラの想い

大毒ウツボが片付けられた後、ノアはネレウスとローラにこっ酷く怒られていた。


〜〜〜ローラが言うにはノアは根っからのシスコンで、何とか妹のためにオーウェンとシャルロッテ達との婚約破棄が出来ないか模索していたようである。数日前に兵士達が10人がかりで捕らえた大毒ウツボをペットにすると言い出し、周囲から危険だと忠告されても「奇策がある」と言って譲らなかったらしい。餌をあげていなかったのは本当だが、実際のところは怖くて檻に近づく事が出来なかっただけとの事である。まさかオーウェンを脅すために用意していたとは思わなかったが、その処分にも困っていたようで結果オーライと言う事だった。〜〜〜


「ほんと、ウチのお兄ちゃんってバカなのよ。後先見ずに突っ走っちゃう感じでね」

「(ローラもヒトの事言えた義理じゃないと思うが)…そうか」

「本当にごめんね、オーウェン!バカのお兄なりに色々考えてしてくれた事なの」

「別に構わん。大して脅威でも無かったからな」

とオーウェンが言うと、シャルロッテ達が補足した。


「オーウェン様は、以前にオーズィラ国でバハムートを一撃で倒しているんですよ?魔物ですらない生物に、オーウェン様が遅れをとる事なんてありませんわ」

「バハムート!?小型の鯨さえも食べちゃうという逸話のある、あの魔物!?」

「それだけじゃぁ、ありませんよぅ。他にもヴュステでは…」

とシャルロッテ達が得意げにオーウェンの活躍について話すと、それを聞いていた人魚達は徐々に尊敬の眼差しでオーウェンを見つめるようになった。ネレウスが(ひたい)の汗を拭いながらオーウェンに話しかけた。


「…今の話は本当か、オーウェン?」

「まぁ多少美化されていますが…(おおむ)ね、合ってはいます」

「…あの大毒ウツボが一撃で吹き飛ばされるのも納得というものだ。ヴィルヘルム殿も、お前に娘達を預けてさぞ安心しているだろう。しかし…何故、我にその武功を話さなかった?ローラと婚約することがそんなに嫌だったのか?」

「いいえ、単にこれまでの功績をあれこれと語るより、目の前の敵を倒す方が手っ取り早いと考えているだけです。ただ、私はすでにシャルロッテ様達とも婚約しており、彼女達にこれ以上心配をかけたくないとも思っているので…ローラ様は本当に美しいですし、真っ直ぐに気持ちを伝えてくれるとても魅力的な女性(ヒト)だと思っていますよ」

「そうか…」

そう呟くと、ネレウスはローラに向き直って言った。


「ローラ、お前はどうしたいのだ?」

「私…これまで気持ちはずっと変わらないと思ってたけど、オーウェンやシャルちゃん達を見てやっぱり変わったわ…皆はこの2年間、オーウェンと一緒に成長してきたんだなって…。そして、そこに私の居場所は無いんだなって…」

寂しそうに語るローラの言葉を聞いてオーウェンは思った。


(…数日しか一緒にいれなかった男の事を、ローラは2年間も想い続けてくれていた。だが、シャル様達の俺に対する厚い信頼感を感じ取り、自分は蚊帳の外の存在だと感じてしまったということか。…ローラには悪いことをしてしまったな)


皆が静まり返る中、ローラが言葉を続けた。


「だから…私、オーウェンのお嫁さんになる!」

「…ん?」

「オーウェンのお嫁さんになって、これからは一緒に旅するの!」

「…ローラ、今、婚約を断る雰囲気になってたんじゃないのか。…気持ちが変わったとか言ってなかったか?」

「変わったわよ?これまでは住んでる環境が違うからって自分の気持ちを我慢してたけど、これからは絶対についていくんだって♡私はオーウェンが好きなのに、婚約を断るわけないじゃん♡」

「…居場所は無いとか言ってなかったか?」

「これから作るのよ♡本当言うとね、あの時あっさりと帰ってきたこと…ずっと後悔していたんだ。だから、今度は後悔したくない…、オーウェンについていく♡もう鱗が剥がれて干物になったって構わないわ♡」

「…」

すると、それを聞いていたネレウスやノアが目尻を手で拭いながら言った。


「これほどまでに意思が堅いとは…もはや止めるわけにはいかないな」

「あぁ、ローラがこんなにも惚れ込んだのなら引き留めるのは不粋だぜ!なぁ、オヤジ!」

とノアが言うと、大衆も「そうだそうだ!」などと賛同し始める。その賛同の声を鎮めるようにネレウスが大声で言った。


「さぁ、皆で祝おう!今日がオーウェンとローラの婚約記念日だ!」

『ぅぉおおおーーーー!』


皆が歓喜の声と割れんばかりの拍手をオーウェン達へと送る。いつのまにかシャルロッテ達も涙ぐみながら拍手を送っている。ただ1人、オーウェンだけはダラダラと汗をかいて真っ青な顔をしていた。


(ローラにシャル様達の事を伝えようとばかり考えていて、この展開は考えていなかった…ヴィルヘルム様にどうやって報告しようか?)

ーーーーーー


宴会が終わって皆が寝静まる中、オーウェンはローラの下を訪ねていた。


「ローラ、ちょっと良いか?」

「どうしたの、オーウェン?…ひょっとして、夜這いに来てくれたとか?」

「婚約したその日に手ごめにするほど、お前は俺を節操がない男だと思っているようだな」

「冗談だよ、冗談♡それで、何?」

「お前が俺についていきたいと言ってくれた事、素直に嬉しいと感じている。だが、人魚に陸での生活は厳しいと感じているのも事実だ。ローラが自分を苦しめてまで俺の側に居たいと思う理由はなんだ?」

「…正直言うと、理由はよくわかんないの。屍人還り(セイレーン)から助けてもらって、感謝の気持ちを恋心と勘違いしているのかもって思ったこともあったわ。でも、もう一度オーウェンに会ってわかった事があるわ。この気持ちは感謝なんかじゃない、私はオーウェンに恋をしているんだってね♡」

「ローラ…」

「陸に上がった事も無いし、多くのエルフにとって人魚はまだまだ見慣れない存在だから、皆と仲良くなるのに苦労するだろうし…考えたら考えるだけ不安になるわ。でも好きな人の事を想いながら、ここで待つよりよっぽどマシよ。まぁ足手まといだと思ったら、はっきり言ってくれていいわ。その時は私も身の振り方を考える…から…」


すると、オーウェンがローラの手をきゅっと握りしめて言った。

「済まない、そこまで言わせて。慎重に考え過ぎて、お前の不安を受け止めてやれていなかったな」

「…本当はね、さっきまでずっとビクビクしてたんだ…、オーウェンが婚約を断りに来たんじゃないかって。だから、オーウェンの口からはっきり言って…欲しいな」

「あぁ。…ローラ、俺について来い」

オーウェンがそう言うと、ローラは顔を真っ赤にして「はい」と小さく呟いた。ローラの気持ちを十分確かめられたオーウェンは部屋へと戻ろうとする。すると、ローラがオーウェンの腕を掴んでいった。


「あ、あのさ。いきなり…こんなこと聞くと、変に思われちゃうかなって思ったんだけど…。聞いて良いかな?」

「あぁ、何だ?」

「…シャルちゃん達とは…何処までいったの?」

「…留学先の話か?」

「違うわよ、そうじゃなくて…もう一緒に寝たりしているのかな…とか。出来れば…私も、シャルちゃん達と同じ事して欲しいなって…思って」

そう言って恥ずかしがるローラの顎をクイっと持ち上げると、オーウェンはローラの頬にチュッとキスをした。ローラが拍子抜けしたように言った。


「へ?…こ、これだけ?」

「当たり前だろ、お前は俺のことを何歳だと思っているんだ?」

「え?シャルちゃん達は中等学院の3年次で私と同じ15歳でしょ?その子達を引率しているんだから少なくともオーウェンは18歳くらいじゃないの?」

「シャル様達は飛び級で中等学院に入った。俺も色々試験をパスした結果、講師になったが元々は彼女達と同じ歳だ」

「…ちょっと待って…オーウェンって今いくつなの?」

「俺は10歳だ」

「年下だったの!?嘘でしょ?体付きが10歳には到底見えないんだけど!?」

「エルフは亜人族の中でも成長が早いからな。それに、俺は同じ学年の者達よりもより鍛えている…多少、年上に見えても仕方あるまい」


ローラはしばらく口をパクパクさせていたが、その後少し冷静になったのか小声で言った。

「ってことは、私は姉さん女房なのね…。私が、皆をリードしてあげなくっちゃ♡」

うぅ…低評価で地味に凹んでいるトコに高評価を入れてくださった方、ありがとうございます。例え、お情けであったとしても…嬉しいっ。評価に一喜一憂せず淡々と話を書かなきゃと思いつつも、ブックマークや高評価が増えてくれると、やっぱり元気になっちゃいます。


私にとって、読者様は物語を一緒に楽しんでくれる仲間です。なので、仲間が増えるのはとても嬉しいですね。これからもコツコツと書いていきますので、今後ともよろしくお願いします。

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