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地下遺跡

オーウェン達が応接室を後にし、ダイニングルームへと移動すると食事を取る前にサブルが話す。

「そう言えば、課題の話がまだだったが…今日はもう遅い、続きは明日にするとしよう。泊まる宿などはあるか?」

「はい、迷宮(ダンジョン)の中に部屋があるので問題ありません」

「なるほど。そう言えば、ここ(ザント)に入る時にも迷宮(ダンジョン)スキルを使ったと言っていたな。これまでスキルなどという便利なものが有るとは知らなかった。…長生きというのも悪くないものだな」


その後はサブルと他愛もない話などをし、食事を終えるとオーウェン達は迷宮(ダンジョン)へと戻っていった。

ーーーーーー


翌日、オーウェン達がサブルの下を訪ねる。


「サブル様、昨日は有難う御座いました」

「おぉ、オーウェン。早速だが、課題について話をして良いか?」

「はい、お願いします」

すると、サブルが大きな地図を広げて見せた。


「これはザントの地図ですか?」

「そうだ。現在25階層まで探索が進んでおり、そのうち15階層までを居住区として開放している。残りの階層も造りは一緒だが現在は出土品置き場や探索作業員の寝泊まりする場所として分かれている。そして…ここが26階層への入り口だ」

そう言うと、サブルは点線で囲まれた扉を指差した。オーウェンが尋ねる。


「他の入り口よりも少し大きめに表記されていますね?」

「あぁ、素晴らしい装飾が施されたとても大きな門でな。恐らく26階層以降は当時の王族や貴族達の居住区だったのだろう。だが、それ以降の階層を我々は探索出来ていない」

「幽霊が出たという噂のせいですか?」

「幽霊ではない…骸骨の魔物だった、ワシもその頃作業員の側で発掘の指揮をしていて共に目撃したからな」

そう言うと、サブルは遺跡の発掘について話し始めた。


〜〜〜そもそもソレーユ家がピエモントの遺跡を保護し始めたのは約2000年ほど前、それまではアールヴズ家の外戚としてヴァルド王国の宰相などを務めたこともあったようだが、ピエモントからの盗掘品が出回っている事を知ったサブルの祖先はこれらを保護するために私財を投げ売ってこの地へと移り住んだ。その後、文化保護の功績が認められソレーユ家はヴュステに建国する事を許されたが、彼らは国主と名乗り自らが王族となる事を拒み続けてきた。それからかなりの月日が流れてサブルが100歳くらいの頃、年老いてきた父に代わりサブルは発掘の指揮を任ぜられた。サブルの父の代までは文化保護が主であり、作業員も少なく積極的な発掘が行えなかったため探索は5階層ほどしか進んでいなかったが、サブルは様々な所から人手と出資を募ることで、200年ほどかけて現在の25階層まで発掘を進めた。ある日作業員に呼ばれてサブルがついていくと、壁に装飾の一部が見えていた。サブル達が慎重に周辺の砂や土を退けてみると、そこにはとても大きな金属の扉がありその表面にはとても緻密で美しい装飾が施されていた。〜〜〜


「それまで庶民の生活用品と思われるものは多く出土していたが、当時の貴族の生活に関わるものは何一つ出土していなかったからな…ワシも作業員達も多いに興奮した。しかし扉を開けた時、鎧を着た骸骨が剣を構えてこちらへ向かってきたのだ。幸い扉さえ閉めておけばヤツらが出てくることもなかったから、扉に厳重に鎖をして触らないようにしていたのだが…1年半ほど前に、扉近くで発掘をしていた者が魔物に襲われて大怪我をしてな。…何者かが鎖を外したようだ」

「いったい誰が…25階層の守りはどうなっているのですか?」

「25階層は魔物に占拠されてしまってな。<黄の(おおとり)>が、現在も交代で24階層から25階層へ続く通路で守り続けておる。だが倒しても倒してもキリが無い。さすがに兵士達の士気も下がって来ておってな…オーウェン、お前達にこの状況を打破出来るか?」

サブルの質問にオーウェンは間髪入れず答える。


「無論です。我々はセイレーンの集団とも戦った実績がありますし、私自身も多くの魔物を倒して来たという自負がありますので」

「なるほど、大した自信だな。ヴィルヘルム殿が信頼を寄せるのもわからんでも無い。だが…あの光景を見てもはたして同じ事が言えるだろうか」

と不穏な言葉を呟きながらも、サブルはオーウェン達を24階層へと案内した。

ーーーーーー


オーウェン達が24階層に入ると、そこは熱気と汗と血でむせ返る臭いが充満していた。25階層への通路から負傷者達が運ばれ、その入り口付近では兵士達が目の下にクマを作りながらも必死の形相で槍を構え続けている。指揮官風の男が「敵が階下から攻め上がってくるぞーッ、5番隊、6番隊は突撃準備!」と叫ぶと、該当する兵士達が兜を(わき)に抱えて小走りしながらオーウェン達の前を通っていった。ナサニエル達が顔を強張らせて言う。


「…こんな戦いを1年以上も続けているのかよ?」

「日の光が当たらないこんな地下では魔物は休んでくれないからな、兵士達にもかなり疲れが見える」

とオーウェンが小声で話していると、先程叫んでいた指揮官らしき男がサブルに気付いて駆け寄って来た。


「サブル様!」

「デニス、戦況はどうだ?」

「相変わらず25階層から上がってくる敵を抑えられません。負傷者も増えてきて戦線の維持がやっとと言う所です…ヴァルドからの援軍はどうなってますか?」

「今しがた着いた所だ」

「本当ですか?どこに居られますか、今すぐにでも力を貸して頂きたいのですが…」

とデニスが言うと、サブルはおもむろにオーウェン達を指差して言った。


「彼らが援軍の鳳雛隊だ」

「…冗談でしょう?…我々はヴァルドから援軍が来ると信じて、これまで戦い続けてきたのです!こんな10人程度の子供達を寄越して何が出来るって言うんですッ!!」

(いきどお)るデニスに、オーウェンが声をかける。


「我々が25階層を奪取します。兵を下げてください」

「ふざけるなッ、兵が下がれば魔物達が一気に攻め上がってくるだろうがッ!」

「狭い通路であのように留まられては進む事も退く事も出来ず、このままでは戦線を押し上げる事ができません。早く兵を下げてください」

と言うと、オーウェンはティンカー達に指示を伝え始めた。


「ティンカー、エルヴィス、負傷者のトリアージと治療の指揮を頼む。シャル様とベル様、ドロシー様とビーはティンカー達を手伝ってください」

「まかせてよ、オーウェン」

「承知いたしました、我が主」

と言うと、ティンカーとエルヴィスはシャルロッテ達と共に負傷者の所へと駆けていく。


「次は俺達だが…」

とオーウェンがナサニエル達に指示を出そうとすると、デニスがオーウェンの胸ぐらを掴んで言った。


「勝手に話を進めるんじゃないッ、ここは遊び場じゃ無いんだぞ!」

「手を退けてください、作戦会議の邪魔です」

デニスの腕をオーウェンがグッと握ると、デニスは痛みのあまり身体を捻りながらのけぞった。オーウェンは倒れ込んだデニスに目もくれず、淡々と話を進める。


「通路は狭くて互いに攻め手が少ない。俺とゴーシュが通路の奴らを25階層まで押し出す。フレッドとグレンは俺の左右を、ナサニエルは俺の頭上を警戒しながら槍で応戦しろ。アニー、エラ、コリンは俺達に防護魔法を貼り、25階層に入ったら防壁魔法を作って部隊が降りられるスペースを確保しろ。ケイト、オードリー、ダリアはアニー達の後方から弓を持ってついて来い。下の階層に着いたら遠隔攻撃をする者を手当たり次第矢で射抜いてやれ」

『ハイッ!!』

「通路際を確保し後続が到着したら、俺とゴーシュでそのまま門までヤツらを追い立てる。残りはナサニエルの指示に従い、適宜後方から援護しろ」

『ハイッ!!!』

ナサニエル達の士気の高い返事に周囲の兵達が顔を上げる中、デニスも驚いた顔をしてオーウェンに言った。


「お前…何者だ?」

「俺は鳳雛隊隊長オーウェン・モンタギュー、ここに居るのは隊を代表する者だけですが総勢360名ほどの部隊の指揮官をしています」

「モンタギュー…あのアウグスト騎士団長の息子か!?1人で迷宮(ダンジョン)を攻略したという?」

「正確には2人と1体ですが…まぁ、そうです」

「…本当に25階層を確保出来るんだな?」

「先程そう伝えたはずです」

と、オーウェンが言うとデニスが決心したように部下達に言った。


「突撃は中止だ!ヴァルドから“魔物狩り”が来た!お前達、道を()けろ!」

オーウェンの顔を描いてみようと頑張ってみましたが、スキルが足りずに描く事が出来ません。参考程度ですが、オーウェンさんは某人気ゲームのセフィ○スさんから毒気が抜けたような面構えをしていることをお伝えしておきます。

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