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念導戦記  作者: 水室二人
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補給部隊の仕事 その4

「ここで少し休憩だ」

 指定されたルートの、丁度良い場所に広場がありました。

「すみません、えっと・・・」

 言いにくい様子で、女性がもじもじとしている。

「用を足すなら、申し訳ないがすぐ側に林と小川がある」

「解りました」

 冒険者なら、そう言うところで用を足すのは当たり前だった。この辺も、計画されていたのだろう。

 生延びた元王女と言う肩書きの人間には、辛いと思ういますが、彼女はその辺を気にすることなく1人で林の方に行ってしまいました。

「いいのかや?」

「これは、仕方ありません。大事なのは、私達の今後です」

「傭兵団は、敵か味方かですか?」

「依頼内容に、虚偽がありました。傭兵団からの依頼は全てキャンセルになります」

 この依頼、ロセロアの偽物を久遠帝国まで連れて行くこと。この辺の裏の事情は、この際考慮しません。問題は、輸送ルートが敵に筒抜けです。敵は、複数あるみたいで、組織の違う集団に3回ほど襲撃を受けています。休むまもなく、逃げるようにこの場所に誘導されました。一見、危険そうに見えて安全な場所。普通なら、油断して休憩できる場所です。

 その場所に、敵は予め潜んでいました。逃走ルートは、偽装しましたら、おっては3回とも振り切りました。指定されたルートは、かなり考慮されていて、優秀な人物が選定したルートです。それを、先回りしているという事は、最初から来ることを知っていたのでしょう。

「内部の人間が、出し抜いた可能性もありますよ?」

「その可能性は確かにある。だから、ここで確認する」

「彼女を見殺しにして?」

「それを望んだのは、ロッテだ」

 次の瞬間、私達の側を、何かが通過しました。そして、何かが弾ける音がして、どさりと、何かが倒れる音がしました。

 続いて、こちらに対して何かが飛んできます。

「槍でしたか・・・」

 それは、槍でした。レーヤの結界に阻まれて、私達には届いていません。

「私の力だと、5メートルが限界ですよ?」

「これを防げるなら、大したものですよ」

 結界に阻まれて、投擲された槍は地面に落ちます。

「お返しします」

 その槍を、念導で包み、持ち主に返します。

「ぎゃぁぁぁ」

 離れた場所で、悲鳴が上がります。ここで悲鳴を上げるとは、暗殺者としては駄目でしょう。

 悲鳴を上げた暗殺者は、そのまま逃走していきます。

「逃がして良いの?」

「かまいません。他の目は?」

「ついていったのじゃ。いいのかや?あれは旦那様の知り合いなのじゃろ?」

「そうみたいですね。攻撃は、完全に殺すつもりの攻撃でした。残念です」

 こちらに手を出さなければ、見逃すつもりでした。

「あれでも、グリーンが助けた命なんですよね・・・」

 初等学校の同級生です。最初、私達を見下していた槍使い。彼が、この出来事に関わっているのは、意味があるのでしょう。

「仕方ありません。この場はグリーンに免じて見逃しましょう」

 念で、目印は付けておきました。これである程度の事はわかります。

「補給任務は、一端中止します」

「どうするのじゃ?」

「リリの探している、闇とか言う転生を繰り返す存在を、探す事にします」

「それが、色々と暗躍しているという事ですよね?」

「あやつがいるとなると、色々と面倒じゃ」

「イナリは、知っているのですか?」

「我は、眠っていや時間があるから、最近の出来事は知らぬのじゃ。異世界転生者で、ギフトが転生。死んでも生まれ変わるという厄介な存在なのじゃ」

「転生した場合、ギフトはどうなる?」

「生まれた時のギフトになるのじゃ。リリ様も、今と昔はギフトが違うのじゃ」

「スキルは?」

「消えるのじゃ。ただ、記憶として残るのじゃ。リリ様の場合、昔の膨大な魔法の知識を今も受け継いでおる。魔力も、記憶が戻った時に昔の量になったといっておったのじゃ」

「その闇という奴の場合は?」

「あやつの場合は、謎が多いのじゃ。吾の知り合いのときは、何度目かの転生をすでにしておった。その影響か、心が歪んでおった。世界が滅びれば、死ねるという希望の元、世界を混乱させ、滅ぼすといっておったのじゃ」

「迷惑な話ですね」

「そうなのじゃ。ギフトに対する理解も大きい。知識と記憶は、転生しても受け継がれるといっておったのじゃ」

「今の時代に、いると言うのは、確かだと思いますか?」

「解らぬ。ドラゴヌの奴がそう言うなら、ある程度根拠はあるのじゃろう」

「リリに、接触してくると思いますか?」

「解らぬ。世界を滅ぼすという思いを、今も持っておれば、邪魔な存在として襲ってくる可能性もあるのじゃ」

「滅ぼす考えが、変わるというのか?」

「ここに、良い例がおるのじゃよ?」

 そう言って、イナリが抱きついてきます。イナリが眠る前、前世のリリを殺した世界に復讐するつもりだったそうです。

「そうでしたね・・・」

 頭を撫でてから、抱きしめます。

「うぅぅ、私が、世界を滅ぼしたくなりますよっ!」

「その時は、協力しましょうか?」

「報酬次第で、引き受けても良いのじゃよ?」

「二人が言うと、本当に出来そうで怖いです。それに、スティッ君がいないと、意味がいないので、世界は滅んではいけません」

「まぁ、私達なら、出来なくもないか・・・。その闇と言うのは、これが出来るのか?」

「ギフト次第なのじゃ。そして、スキルの構成と、使い方次第なのじゃ」

「レーヤでも出来るからな、ギフトは恐ろしい」

「名、私に世界を滅ぼす力なんて、ありませんよ」

「空間収納あるよね?」

「あります」

「あればレベル10になれば、生きた生き物を収納できるのじゃ」

「それで?」

「そこに、レーヤが入れば、外から開く事は出来ぬのじゃ。世界には、お主だけ。世界は滅ぶのじゃ」

「それでは、意味がないような、在るような・・・。誤魔化されていませんか、私?」

「そう言う、考え方もあるということじゃ。ただ、死にたいだけなら、いくらでも方法はあるのじゃ」

「そう言うものですか?」

「出来るだけ、早く接触したい」

「どうやって?」

「一度、フォックスハンターと接触します。色々と、確認したいです」


 私達の任務は、失敗に終わりました。護衛対象は、途中で死亡。

 生きる意思がなくなっていたので、仕方ありません。

 後日、劇場に1人サポートスタッフが増えたのは、偶然です。その子の名前が、ロッテと言うのも、偶然でしょう。

 不思議な偶然があるものです。


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