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念導戦記  作者: 水室二人
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補給部隊の仕事 その3

 合流地点に、イナリ達はいました。精霊猫が、2匹になっています。

「何かありました?」

「これを見るのじゃ」

 イナリが、録画した映像を見せます。ネット通販で、日本の家電を色々と購入してあります。録画、録音も出来るので、色々と便利になっています。

 その映像は、私達の突入後の様子です。怪我人を、救助する様子が映し出されています。

 映像を見ると、不思議な違和感を感じました。逃げ惑う人々。消火用の魔法を使う人々。色々と現場は混乱しています。

 私達が通り抜けた場所から、多くの人が逃げ出しています。

 急に動き出したので、ぶつかって転ぶ人もいました。最初は、現場周辺だけでしたが、関係ない場所でも転倒する人がいます。それは、やがて全体に広がり、多くの人が転倒しました。

「怪我人が、嬉しそう?」

 不思議なのは、悲壮感がなく、何処となく嬉しそうな気がします。

「死者は、そのままなのか・・・」

 混乱の中心地、3人の死者が出たはずだけど、その遺体はそのままになっています。包囲軍は、半分が撤退を開始していて、半分は残るみたいです。怪我人を優先で撤退しているので、帰れることが嬉しくて、喜んでいた可能性があります。

「この砦を包囲している理由は?」

「それが、わからんかったのじゃ。精霊猫の援軍をよんだのじゃが、収穫はないのじゃ」

「援軍は、この二匹だけですか?」

「5匹来たのじゃ。3匹は既に帰ったのじゃ」

「1匹残った理由は?」

「これを見て欲しいのじゃ」

 そう言って、精霊猫が持っていたカメラを再生する。

「どう思う?」

 それを見た私は、レーヤに意見を聞く。

「ガイルさんですよね?」

「やっぱり、そう思うか?」

「リリ様関係で、学校で何度か見かけました」

「学校?」

「初等学校の生徒ですよね?」

「王都の出来事の前に、傭兵部隊に戻ったはずですが?」

「そうなのですか?リリ様と何度か話されてましたし、監視対象の1人、カーシャさんとも一緒にいることを何度か見ましたよ」

 カーシャ、懐かしい名前だけど、リリ達に監視されていたらしい。

 先程の、精霊猫の持っていた画像には、ガイルが包囲軍の中で雑談している様子が写っていました。残念ながら、会話は収録されていません。その様子から、敵対している関係には見えません。

「やっぱり、情報が少なすぎますね。とりあえず、この任務は終わりです。次の任務に写りましょう」

 精霊猫を、一匹この場所に残します。その為に、残っていてくれたみたいです。


 私達が受けた任務は、続けて出来るように調整されていました。砦で荷物が空になったので、次のポイントでは受け取りです。

 この場所は、セントラル共和国の国境の側の小さな町です。そこにいる人物を、永久帝国まで運ぶ事が次の任務になります。

「誰を運ぶのですか?」

「ギール王国の、第1王女」

「ロセロア?」

「の偽物です。あの騒ぎで、実は生きていた王国の生き残りがいるらしいです」

「本人、劇場で歌っているのに?」

「あの人、リリがいれば国は関係ないみたいですし、偽物を用意して、何をするのか見届けましょう」

「悪趣味なのじゃ」

「自覚はしています。嫌いになりますか?」

「やっぱり悪趣味なのじゃ。嫌いなるなど、出来るわけないのじゃ」

「二人とも、悪趣味です、狭い車の中で、二人の世界を作らないでください!」

 レーヤが叫んで、この話はここまでとなる。


「よろしくお願いします」

 目的地で合流した少女は、ロッテと名乗っています。彼女1人を、久遠帝国の国境まで連れて行くのが任務です。

 ロセロアは、20歳になるはずですが、この子は、それよりも若いです。可愛い系の女の子ですが、ロセロアによく似ています。

「道順まで指定してるとは、親切ですね」

 地図を見ながら、レーヤが喜んでいます。

「馬鹿ですか?」

「馬鹿なのじゃ」

「酷い」

「この子、どういう役割か、知っているのですか?」

「亡命希望の女の子?」

「はい」

 ロッテは、表向きは亡命希望の王国貴族となっています。ロッテは偽名と言うのは、承知の上です。

「ロセロアが生きているとなると、どうなる?」

「独裁者は危険だって、始末に来る?」

「それよりも、王家の血が問題だろう」

「そじゃな。ギール王国、結局ぐだぐだで、内乱が起きてもおかしくないのじゃ」

「この子を、担ぎ上げる?」

「偽物でも、これだけ似ているなら信じる人多いかもしれませんね」

「本物だったら。この国立て直せますか?」

「無理じゃな」

「無理でしょう」

「ですよね」

「ちょっと待ってください。先程から、何を話しているのですか?」

 一緒の車に乗っているから、当然ロッテも話を聞いています。

「ロセロアの事です」

「王家の人間に対して、無礼ではないのですか?」

「国のない王家に、意味がありますか?」

「それはそうですが、私の事はともかく、ロセロア様のことを悪く言わないでください」

「君が、ロセロアじゃないのですか?」

「違います」

「任務を聞いたとき、そう聞いていますけど?」

「私は、ロセロア様の侍女でした。影武者として教育もいけています」

「それを言っても、良かったのかな?」

「大丈夫ですよ。どうせ私は途中で殺されます」

「私達が、殺すと?」

「巻き込んでしまったのは、申し訳ありません。傭兵団は、忠実に任務をこなしているだけですのに・・・」

「私達では、守れないと?」

「相手が悪すぎます」

「誰ですか?」

「第4王子です」

「王子は、第3まででは?」

「隠し子です。優秀ですが、残酷で人として何かが狂った子でした」

「その第4王子が、君を狙っているというのかな?」

「久遠帝国が、影武者でもロセロア様が必要なのは、第4王子に対してです」

「まさか、第4王子は国の復興を望んでいるのですか?」

「はい。久遠帝国は、ギール王国の同盟国でした。第4王子が、復興宣言をしたとき、同盟を求められる恐れがあります」

 久遠帝国としては、今更ギール王国の復興に手を貸すのは難しい。セントラル共和国は、その力を増大しています。久遠帝国とは、直接争っている部分はありませんが、巻き込まれるのは避けたいでしょう。

「そこで、私がロセロアとして表に出て、久遠帝国で保護してもらいます。皇位継承拳は、私が一位です。私が存命の間は、彼が騒いでも大儀がありません」

「久遠帝国が、君を殺す可能性もあるのでは?」

 独裁者のギフトを、恐れており存在は多いです。

「ロセロア様のいない世界に、未練はありません。あの時、私は死ぬべきでした。生延びた私は、ロセロア様のためになるなら、どうなっても良いのです」

「そうですか、なら死んでもらいましょう」

 私がそう言うと、彼女は驚きます。そして、全て悟った顔になります。

 最初から、私達はこの子を殺す為に雇われた。

 そう理解して、彼女は全てを受け入れ目を閉じるのでした。

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