狐に婿入り その5
「おはようございます」
「おはようなのじゃっ!」
朝の挨拶をすると、コンはうれしそうに尻尾を揺らす。
「朝ごはんは、どうします?」
「いつもので良いのじゃよ」
コンと暮らし始めて、一月が経過しています。
それなりに親しくなったと思いますが、関係は変わっていないと思います。
今の所の大きな変化は、念話のスキルのレベルが上がり、視覚を共有できるようになりました。おかげで、ネットスーパーのスキルが大活躍しています。
スキルを使って、現れる画面はなぜか日本語でした。コンが言うには、色々な世界が混ざった結果、そう言う組織がどこかに出来た可能性があるそうです。異世界通販会社と言うのがあり、限られた人間が、使う事ができるそうです。
購入資金は、最初はコンが提供してくれました。日本円に返還して500万円。レーヤに貸し付けているので、手持ちが少なかったとぼやいていました、総資産は、秘密だそうです。
現在、私達のいる謎の空間は、滅んだ私のいた地球を擬似的に作った世界です。
意外と、仕えるものが存在していて、念の訓練を兼ねて回収しています。世界通販会社は、色々と買い取ってくれるので、非常に助かっています。
販売にも力を入れていて、マッチ棒からドラゴンステーキまで、幅広い商品があります。残念なのは、文明度によって販売できる商品に制限がかかると言う事です。
私達の場合、城塞都市の世界の物と、地球の商品が購入できます。レジェンドラみたいな、古代の遺産関係は、購入できないのが残念です。現地スタッフが提供できる物と言う条件があるみたいです。日本は滅んだのでは?と思ったのですが、平行世界の日本は平和だそうです。私のいた日本だけが、滅んだみたいです。
滅んだ世界の情報は、貴重みたいで、色々と高額で買い取ってもらっています。
たまったお金で、家の設備は豪華になりました。大型のテレビが導入。電波が無いので、放送している番組はありません。その代わり、DVDやゲーム機などは大量に手に入りました。
私が訓練中のときは、コンがそれらを使って時間を潰しています。引きこもりに最適なアイテムとして、リリ用に集めています。コンは、なんだかんだといってリリが大好きみたいです。
そう考えると、嫉妬のような気持ちが心のそこにある事に気づいて、驚きました。この気持ちは、つり橋効果みたいなものだと、自分に言い聞かせます。
この場所、完全に安全と言うわけではありませんでした。
滅んだ世界を取り込んでいるので、怨霊というか、思念隊が集まって生まれ出た何かがいます。
最初は、撃退できなかったそれも、何とか撃退できるようになりました。
「もっと、効率よくやる為に、ほら」
コンが、そう言って尻尾を揺らします。
怨霊の集合体、波動で作り出した幸せの波動と言うのが、一番効きました。浄化のイメージが、浮かばなく、困っていた時に、コンがヒントをくれました。
「マイナスの存在は、プラスの存在をぶつけるのが効率良いのじゃ」
プラスの波動と言うのも、上手くイメージできなかったのですが、もふもふマッサージ中のコンのだらけきった笑顔を見て、それをイメージしたら出来ました。
「そろそろ、愛の波動を習得してみませんか?」
「のじゃが無いぞ」
「誤魔化さないでください」
「そ、そのうちに・・・」
「否定しなくなったのじゃ」
にっこり笑う笑顔が可愛い。この世界で修行を始めて、そろそろ1年。私の意識が変化しています。
正直、コンの事は可愛いと思っています。色々と尽くしてくれますし、その気持ちに応えたいと言う思いも自覚しています。
ただ、その気持ちが強くなるほど、恐怖が心の中で強くなります。失うのが怖い。力が暴走するのが怖い。
そして、他人を傷つけるのが怖い。この滅んだ世界は、傲慢な意思の成れの果てです。自分達では叶わないから、他の世界からの救いを強制的に呼び出した代償。
私のギフトが成長した時、おそらくこれくらいの事は出来ると思います。自分を制御できなかった場合、どうなってしまうのか、色々と怖いです。
「何を難しい事を考えておるのじゃ?」
「そう見えます?」
「何年一緒に過ごしたと思っておる」
「そろそろ、5年ですか・・・」
「ようやく、半分じゃ」
「そうですね・・・」
「うれしいかや?」
「それが、寂しいと感じてしまった自分に驚いています」
「そうかや」
にししと、可愛く笑う。ギフトのレベルは、10になり、全てのスキルを習得しました。
スキルは、そろそろ全てが10になります。自分を制御する術は、徐々にですが出来ている気がします。
その後事を考えると、色々と複雑です。
ギフトは、あの世界で色々と問題を起こしています。世界の理に関する事なので、なくす事は出来ません。それでも、良い方向に向ける事は出来るでしょう。
傾国というスキルのせいで、コンは小さい時に苦労をしたそうです。後で殺すリストに、当時の人たちを加えたい気分です。もっとも、ほとんどが時の流れで流されて、存在していないそうです。
コン自身も、恨みつらみは時の流れで薄れたと言っています。500年以上過ぎれば、大概の事は流されるそうです。変わらなかったのは、リリへの思いだけという、嫉妬心がうずく懸案だけです。
「そろそろ、時間じゃな」
「今日も一日、頑張りましょう」
ベットから、お互い起き上がります。肉体関係はありませんが、いつの間にか一緒に寝るようになっていました。もふもふの尻尾に包まれて眠るのは、中々良いものです。
コンのスキルによる睡眠は、4年目から必要なくなりました。怖い事を考えず、やだ安らぐ場所が隣にあったことに気づいたら、色々と解決したのです。
二人だけの世界が、あと5年で終わってしまう。
そう気づいたとき、私は難しい顔をしていたみたいです。
残りはあと5年。私は、下した決断を、告げることが出来るのでしょうか?
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