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念導戦記  作者: 水室二人
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狐に婿入り その3

「この子は?」

 突然現れたコンに、サット君は戸惑います。やって来た幼女に、助けに来たと言われても、驚くだけです。

「これくらい、私1人でも大丈夫ですよ?」

「マスターからの、要請です。次元暴走が発生しています」

「本当ですか?」

「嘘を言う必要がありません」

「それも、そうですね・・・」

 次元暴走は、迷宮でたまに起きる災害です。次元の扉が開き、強力な魔物が溢れたり、別の空間に飛ばされて、行方不明になったりします。

「走れる?」

 次元暴走と聞いて、真っ青になっているサット君に質問します。

「な、なんとか。この子は?」

「コンといって、私の仲間」

 走りながら、説明します。

「仲間?」

「色々あってね」

「来たのは、コンだけ?」

「レーヤもいるです。迷宮が消える前に、回収したい物があるとマスターの指示で動いてます」

「何が目的なんだ?」

 ものぐさなリリが、2人を派遣するなんて、大事だと思う。

「この迷宮、軍の資源倉庫が丸ごと残っていたのです。これから引きこもるのに必要だからと、言っていました」

「引きこもる?」

「しばらく、引き子もある必要が出来たそうです」

 元々、引きこもっているのに、これ以上どうするつもりでしょうか?

「私に、マスターの考えは解りません。ただ、ちょっと、嬉しいです」

「嬉しい?」

「今回の任務」

 そう言って、コンは足を止めます。出口まで、まだ距離はあります。

「そっちの子供、この先に猫がいるから、それについて逃げなさい」

「猫?」

「賢い猫です。付いていけば、安全に外に出ます」

「スティック君は?」

「私は、コンについていきます。何か、目的があるのでしょう」

 悪魔は、私達を追ってはきませんでした。次元暴走に関係しているかもしれません。

「・・・ごめん。ありがとう」

 自分ひとり逃げるのに、抵抗を感じたのでしょう。一言謝ってから、サット君は駆け出します。確認すると、精霊猫が一匹待機していました。それに案内される形で、サット君は外に向かいます。途中の魔物や、2人の遺体を見る事は無いでしょう。先に逃げた二人は、追いかけてこなかった悪魔によって殺されていました。悪魔は、迷宮の壁をすり抜けたか、瞬間移動して、あの2人を殺害しています。その後、迷宮の奥へ消えていきました。コンが向かっているのは、その悪魔がいる方向です。

「悪魔が、次元暴走に関係しているのですか?」

「暴走を起こしたのは、ツヴァイという男の子。ギフトが暴走して、次元に穴をあけたみたい」

「そんな恐ろしいギフトが、在るのですか?」

「普通は無い。多分麻薬の影響」

「恐ろしいものですね・・・」

 急に強くなる影響、私も危惧しています。

「マスターの予想だと、ここにい空間が発生する」

「危険は?」

「勿論ある。でも、折角だから利用する」

「利用?」

「この手の空間は、今までも結構発生していた」

 コンの説明ですと、迷宮の中に、新しく迷宮が出来るようなものみたいです。ただ、そのままにしていると、接触した次元が暴走して、大爆発を起こすか、静かに大規模な範囲での消滅が起こるそうです。そうなった場合、イーストンは、地上から消えます。レジェンドラの中にいても、危ない状態だそうです。

「そこで、これの出番です」

「これは?」

 コンは、小さな丸い珠を見せてくれました。

「如意宝珠という古代の魔道具です」

 聞けば、色々な効果のある魔道具で、貴重で高価なものだと言う事です。

「これを使えば、何とかなるのですか?」

「これを使い、次元暴走のエネルギーをある目的のために使用すれば、何とかなります」

「ある目的?」

「それは、後ほど。使いますか?」

「金額は?コンがただで提供するとは思えないけど?」

「流石に、私でもマスターの為なら無償で提供しますよ」

「本当?」

「本当です。他のメンバーからは、後で請求します」

 コンは、いつもの笑顔でにやりと笑う。

「私は、いくらはらえば良いのかな?」

 もふもふマッサージでは、釣りあわないだろう。色々と要求されそうで怖いです。

「私の番になってください」

「番?」

「お婿さんですよ。これほど凄い人、今まで見たことありません。マスターとは違う、別の意味での主になって欲しいです」

 顔を真っ赤にして、コンは言います。

「マッサージだけでなく、もっと先の関係になったら、凄く幸せになれる気がします」

「その気持ちは嬉しいですが、今の私では難しいですね」

 今は、念導を鍛える事が優先です。確かに、コンは可愛いですが幼すぎます。もっと時間がたってからなら、喜んで受け入れていたと思います。

「ギフトのことですか?」

「そうです、あれを掌握しないと、安心できません」

「そのために、これを利用します」

 にやりと、コンは笑います。

「今のは駄目なら、先のは良いの?」

「ギフトを、使いこなせるようになったら良いと思いますよ」

「その言葉、忘れないでね」

 コンの手にした、如意宝珠が輝きます。

「発動!」

 その瞬間、世界が光に包まれました。強引に、どこかに連れ込まれたような感覚。

 気がつけば、不思議な場所にいました。

 廃墟です。

 前世の記憶にある町並みが、廃墟となって広がっています。私の家だと思う建物もあります。

 何となく、これは作られた世界だと理解しました。これが必要だから、作られた世界。

 どこにも、命を感じる事のない、静かな場所。

 その例外が、目の前の家です。前世の私がいた場所。そこだけ灯りが燈っています。

「ただいま・・・」

 何となく、呟いたその言葉。

「お帰りなさい、主様」

 その言葉に、エプロン姿のコンが、優しく応えてくれたのです。

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