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念導戦記  作者: 水室二人
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狐に婿入り その2

「おはようございます」

「おはよう・・・」

 目が覚めると、待ちきれないという期待に満ちた笑顔のコンがいる。尻尾が、もふもふ全開で楽しさを表現している。懐かれ過ぎたと、ちょっと後悔している反面、あの尻尾のさわり具合は極上なので、嬉しい気持ちもある。

 毎日に日課となったもふもふマッサージを終え、食卓へと向かう。朝は、みんな揃って食事をする習慣がいつの間にか出来上がっていた。

「これから、どうするつもりですか?」

 悪化する治安を心配しているレーヤが、問いかけてきます。いつの間に、この集団のリーダーは私になっていました。人心を掌握しているのは、リリですが、彼女は前に出るのを嫌っています。

「この先、この都市は大丈夫かな?」

 私1人では、方針は決められません。都市の事は、コンに聞きます。

「厳しいです。財政がかなり悪化しています。物の流通が、所々破綻しています」

「今よりも、悪くなりそうですか?」

「確実に悪化します。今の領主、知能は高いと思われますが、それだけです」

「噂は、事実かな?」

「トテラ知事は、薬物系の何かを、配下に配っています。他にも、色々と薬物を売りさばき、莫大な資金を得ています」

 ギール王国だった場所は、全てトテラ宰相の領土となり、トテラ領のトテラ知事として君臨しています。

 色々と、革新的なアイデアで、都市を発展させていますが、転生者ではないみたいです。知力が高い人間特有の思考があると、リリが言っています。過去の為政者は、薬を使って知力を高め、統治に役立てていたそうです。その結果、理想を追求しすぎて現状との隔離が酷くなり、駄目になった事が多くあるそうです。

 薬で簡単に数値が変えられるので、知力の項目はステータスから排除されたと聞きます。

「お金が集まっているのは、首都トテラだけです。これでは、地方都市は破綻します」

 経済の事は、ココが詳しいです。スキルのおかげで、情報から色々な事を読み取っています。

 ちなみに、情報の収集は精霊猫達が活躍しています。進入工作から街角でのの情報収集まで。幅広く活躍中。

「当面は、学校に通いつつ、ギフトの制御をするしかないですね。レーヤは、退屈かもしれませんけど」

「私?ここでの生活楽しいから問題ないです」

 リリの世話として、面倒を見ながら、最近は料理を担当しています。食材の買出しは、補給部隊で慣れているそうなので、彼女に任せています。

「ロセロアは?」

「私は、忙しい。欲を言えば、物語を構成できる人材が欲しい」

 演説を利用した演劇。シナリオで苦戦しているみたいです。

「心当たりは無いから、探して見ます」

 彼女のやっている事は、協力したいです。殺戮の魔女の時代の出来事は、謎が多すぎます。折角本人とその仲間がいるので、色々と聞きたいです。


 色々と、街の様子が悪化しています。治安の低下、物価の上昇。それに加えて、怪しい薬の噂。

 初等学校中でも、急にギフとレベルが上がり、強くなって我侭になる生徒が出てきました。

 どうやら、麻薬に似た薬が出回っているみたいです。王都の戦いのとき、兵士が急に強くなっていったのは、これを飲んだ可能性があります。このイーストンは、治安の悪化が激しいので、薬を手に入れて力を望む者が増えています。


「大丈夫でしょうか?」

「何とかなると思いますよ?」

 世間が、色々と不安定でも、学校はあります。今日は、迷宮探索の実習です。一緒にいるのは、今回のパーティメンバーの1人、サット君。平民で、かなり臆病。ギフトが吟遊詩人ですが、人前で話す事ができない役立たずと言われています。今回、一緒の派^ティを組んだのは私からで、ロセロアに頼まれた人材候補です。演出家として、能力は未知数ですが吟遊詩人が自分で歌う必要はありません。この世界、ギフトの使用に関して固定観念にとらわれすぎている部分があります。

 吟遊詩人は、自分で歌うもの、それが出来ないのは役立たずと言われ続けているので、彼は臆病になっています。

「こんな奴、なんで一緒のメンバーなんだ?」

「仕方ないですよ。こいつらは、はぐれ者ですから」

「っち」

 今回のメンバーは5人。私とサット君のほかにも3人います。彼等は、1組にエリートです。ツヴァイ、ランサー、ナイフと言う3人組。ランサーとナイフは、ギフトを自分の名前として名乗っています。これは、戦闘系のギフトを持っている人がよく使う事みたいです。臨時パーティなので、問題ありません。

 パーティの組み合わせは、学校が毎回指定します。色々な組み合わせを経験して、今後の為にすると言う目的があるそうです。

 今までの、比較的安全な迷宮の時はそれでも良いですが、最近の危険な迷宮では非常に迷惑です。

 死者が出て、学校の内部で色々と揉めているみたいですが、生徒の事を考えるなら、実習を中止にして欲しいです。

 それでも、実習で迷宮に向かいます。

 その昔、魔法文明が栄えていた時代に、異世界から資源を取り寄せる為に作られたのが迷宮と伝わっています。魔物が入り込んだのも最初は計算されていたそうです。

 その後、文明が消滅して管理不能になり、今の迷宮に形態が出来たそうです。時限がねじれて繋がり、それを修復する世界の力で色々と変形する空間。

 危険に満ちるその場所は、色々な資源の眠る場所。

 ギフトがあれば、子供でもそれなりに戦えます。戦闘系のギフトなら、となります。

 ランサーとナイフの2人がいれば問題ないと学校は思っていたのでしょうか?

 迷宮に入ると、2組の3人は私達を置いて先に行ってしまいました。私はともかく、サット君に迷宮は厳しいと思っていました。

「我こそはサット!」

 サット君が、叫びます。結構な大声ですが、辺りに響くことなく、まっすぐ前に音が進みます。

 その声に、魔物が驚いて一瞬動きを止めます。

「スラッシュブーメラン!」

 その隙を突いて、私が攻撃します。いつも使うよりも、小型のブーメランです。念導に関しては、この武器が使えると説明してあります。

「注目!」

 サット君がそう言うと、魔物の視線が彼に集まります。その隙に、私が攻撃をします。彼のスキル、使い方次第で戦闘に役立ちました。発想を少し変えるだけで、凄い成果を出しています。

「あの3人は、どこまで行ったんだろうね?」

「おそらく、こちらでしょう、足跡があります」

「凄いね、僕には何も見えないよ」

 足跡に関しては、嘘です。念で、先に行った3人の位置はは把握しています。

「こんな所に、なんで悪魔がいるんだ!」

 迷宮の先から、悲鳴が聞こえてきました。

「大丈夫ですよ、これくらいの悪魔なら、俺が一捻りだ!」

 確か、ランサーとナナのって少年の声。

「ランサーぁぁぁ、逃げろナイフ、ランサーが、ランサーがあぁぁぁ」

 ツヴァイの悲鳴が木霊します。何かあったのでしょう。

 走り出そうとするサット君を、引き止めます。私達が行っても、どうにもなりません。

 凄い勢いで、2人が駆け抜けて生きます。こちらを見ましたが、逃げるのに必死のようです。一言、警告すれば良いのに、無言で駆け抜けていきます。

 その直後、通路から強い気配がやってきます。山羊の頭をした、悪魔と呼ばれる魔物です。それが2体やってきました。

 レベルは、それなりに高そうです。それ以上に、不気味な気配が漂っています。

 私が攻撃しようとした直前、割り込んできた存在があります。

「間にあったっ!」

 それは、完全武装したコンでした。赤い鎧を身にまとい、輝く剣を携えています。尻尾は、外出仕様で見えません。

「どうして?」

「助けに来たの」

 いつもの笑顔ではなく、真剣な表情で彼女は言うのでした。

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