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念導戦記  作者: 水室二人
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王都激闘 その5

 今より昔の物語。

 およそ3000年前に大きな戦乱の時代がありました。

 巨大な浮遊都市に住み、天人と名乗る集団が、世界を支配していました。

 ある意味、バランスの取れた平和な時代です。ただ、バランスを保つために、常にどこかで戦いがありました。永遠に続く戦いを終わらせるために、人々は異世界召喚と言う手段に出ました。

 色々な世界から、色々な人が召喚されました。魔物や、兵器も召喚されました。

 その中に、高位次元の存在が複数混ざり、世界は壊滅しました。

 浮遊都市は地に落ち、地上には魔物が溢れ、地上は歪み迷宮が生まれました。

 それから、いくつもの国が出来ては消え、文明も進化して衰退するを繰り返しています。

 殺戮の魔女は、その激動の時代にあって、浮遊都市の一つを支配していた存在です。

 傾国、強欲、悪意、正義、賢者、重力、磁力、火力、と言うギフトを持った、八部衆と呼ばれる強力な部下を率いて、世界と戦いました。

 戦乱が終わり、しばらくして、その存在は歴史から消えました。八部衆も時と共に消えていきます。

 彼らが、何と戦ったのかは、記録がなくなっているので不明です。ただ、あまりに多くの存在を殺した魔王として、長い間恐怖の存在として語り継がれています。


「シヴァ様は、私達を守るために戦っていただけです・・・」

 ロセロアは、そう言って顔を上げる。

「君は、八部衆の生まれ変わりですか?」

「それは無い。私は、別の世界からの転生者です」

「そうですか・・・。傾国以外の人は、生まれ変わるなんてことしないでしょうね」

「何故?」

「あの人生で満足して、みんな死にました。転生の事も、信じていませんでしたし、シヴァ様が望んだ事なので・・・」

「その辺の事情は、後で聞くことにします。一国の姫である人を、連れ出すのは無理がありませんか?」

「影武者を、ここで殺させます」

「国の人は、貴方のギフト知っているのですよね?意味が無いのでは?」

「宰相さん、野心家だから私が死んでも上手くやると思うよ」

「宰相?」

「トテラ宰相。ギフトは知らないけど、国営に関してはかなりのものね。私も色々と勉強したけど足元にも及ばないわ」

「そんな人が、宰相で満足できますかね?」

「多分無理。王家の乗っ取りを色々と画策しているわ」

「兄妹を、殺されたたかもしれないのに、あっさりとしてますね?」

「転生の影響かな?家族のつながり、希薄なの。10歳の時、ギフトと一緒に記憶が戻り、そこから何となく疎遠になってしまったわ。シヴァ様がいないと解ってから、やる気も無くなってますの」

「どうやって、それを調べてのですか?」

「お父様というか、国は全てのギフトを管理しています。10歳のなった時の記録は、中央に集められます。シヴァ様が転生したら、死に関するギフトを持った人が生まれたはずです。それが、ありませんでした」

「年代がずれたと思わないのか?」

「運命で結ばれていますから、それは無いと思っていました。あの狐の言うことを、信じすぎたのも失敗の原因です」

「会っても、喧嘩するなよ?」

「謝金を返すまでは、あいつの言うなりですわ。そんなこと出来ません」

 中々、義理堅い子なのかも知れません。

「尻尾の一つでも引きちぎれば、気は晴れますの」

 前言撤回、結構おっかない。

「しかし、動きが無いですね・・・」

「ん?」

 ここで時間をかければ、何か動きがあると思いましたが、誰もここに来ません。

「一つ、確認しても良いかな?」

「何?」

「呪い返しは、どんなスキルですか?」

「受けた攻撃を、相手に返すスキルです」

「効果の範囲はありますか?」

「調べた事、ありませんわ」

「たとえば、巨大な魔法で死んだ場合、相手にその魔法が返るのですか?」

「多分?影武者で、色々と試しただけなので、そこまでの実験はしてませんの」

「その事を知っているのは?」

「トテラ宰相と、その部下たちです。私は、宰相派に属していましたから」

「スキルが低いのは?」

「独裁者は。危険だから、スキルの使用は控えるようにと、言われて、そのまま従っていました。私、ギフトが無くても、能力ありますから」

 さらりと、重要な事を言う。リリも、過去の魔法を今使えるみたいですし、このこの何か隠しだまがあるのでしょう。ただ、今のスキルを完全に把握していないのは困りました。

「たとえば、地震で建物が崩壊して、下敷きになった場合、呪い返しは発動しますか?」

「解らない。一度、水に沈める実験はしたけど、気分が悪くなっかたら、二度としてない」 

「自分で、影武者を水に入れたのですか?」

「そうだよ。色々と知って置いたほうが良いって、言われたから」

「そうすると、不味いですね・・・」

 改めて、周囲を確認します。各所に配置されていた人がいなくなっています。この城の中だけ、無人です。気づくのが、遅かったです。

「やられましたね」

「どうしたの?」

「私達というか、貴方を消すつもりですね」

「どうやって?」

「偶然を装って、城を崩壊させるか、他の国の攻撃かは解りませんが、城ごと押しつぶす計画でしょう」

「無駄な事を・・・」

「何とかできるのですか?」

「それなら、影武者一つ返してもらっても良い?」

「良いですよ」

「ありがと。自決!」

 次の瞬間、影武者が破裂します。あたり一面、血の海で、おぞましい景色が出来上がりました。

「このスキルは、宰相知らないからね。建物が壊れた後を確認した時、私が死んだと思うでしょう」

「中々、えげつない事平気で出来るのですね」

「昔は、これくらい日常茶飯事でしたから」

 にやりと笑う姫様は、とても嬉しそうだった。

「で、シヴァ様はどこにいるの?」

「遠くの城塞都市です」

「うー、とりあえずここから離れるよ」

 次の瞬間、足元に魔法陣が浮かび上がります。

「ほら、案内する人がいないと困るから、君も乗る」

「転移ですか?」

「ちょっと違うかな?火力の戦士の極意、”空間ごと超高速移動さえぎる物は力技ですり抜ける”だよ」

 私が、その魔法陣に乗った瞬間、移動が始まりました。一瞬で、王都から離れた場所に到着です。確かに、転移魔法とは違うみたいです。

「直線しか移動できないのが難点なんですよ」

 苦笑いをしながら告げる姫様。火力の戦士と言うのは、伝説にあったはずです。筋肉の神として、各地で祭られていますが、この人の前世なのでしょうか?

「シヴァ様のところに、案内して」

 にこやかに言う姫様ですが、問題が発生しています。

 ここは、魔物の集団のど真ん中です。多くの魔物が、こちらに向かって唸っています。

 他にも、人の気配が近くにあります。

 すぐに帰るとは、行きそうもありません。

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