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念導戦記  作者: 水室二人
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王都激闘 その1

「あれが、王都ですね」

 城塞都市からおよそ2時間。王都が見えてきました。盾の上に乗り、空を飛んでの移動です。

 途中、魔物の群がいつくかありましたが、全て無視しました。幸い、空を飛ぶ魔物がいなかったので、時間のロスが無かったのは助かりました。

 上から見ると、色々と不可解な事が多いです。最初は、迷宮から魔物の群が溢れて、王都に向かっていると言う話でした。

 一番大きな群は、確かに迷宮から溢れた存在でしょう。それが王都に向かうと言うもの不思議な話ですが、それ以外にも、幾つかの群が王都を目指しています。救援に向かっている軍隊もいくつかありますが、途中の群に邪魔をされている形になっています。

 その動きは、的確に仕組まれたとしか思えないぐらい、見事に連携しています。例外は、コン達の群でしょう。あの一団が通過した事によって、壊滅した魔物の群がいくつかあります。そのおかげで、王都の防衛に間に合った部隊もあるみたいです。

 ただ、残念ながら王都正面の城壁は壊滅。そこからかなりの数の魔物が進入しています。各地で火の手が上がり、怒号と悲鳴が響いています。リリにお願いされたのは、巨大な魔物ツチミカド。アースドラゴンで、群のボス的存在です。既に、多くの人を殺していますが、リリが望んでいるのは、アースドラゴンの中に存在するツチミカドのコアだそうです。

 あのドラゴンは特殊で、中に過去の秘宝を封印してあるそうです。擬似的な自我を与えたのは前世のリリなので、できれば早く止めて欲しいと言う事でした。

「ここから、狙えるかな・・・」

 現在、上空800メートル。盾は下から見ると目立たないように色が塗ってあります。

 私の存在に気づいている人は、いないと思いたいです。

「回り、回れ、回転しろ。加速、加速で、加速して、音より早く、あの場所を貫け!」

 レーヤの補給物資の中にあった、鉄の塊。重さは10キロほどの塊だった。

 それを念で包み込み、強化する。2つ分の強化をしただけで、かなり凶悪な武器になる。

 それを上空から投げ捨てる。落下中に念を発動させる。念のため、射撃場所をずらしておく。

 念の指示によって、加速した鉄塊は、ツチミカドに命中する。回転の威力もあり、着弾点をえぐる様に炸裂する。

「やりすぎた・・・」

 やはり、いきなりの実戦投入は危険です。今までは、色々とテストしてからスキルを使っていましたが、時間が無かったのと、丁度良い素材があったので、つい試してしまいました。

 ツチミカドは、突然頭部を破壊され、機能を停止しました。

「この距離からなら、念が届く」

 ツチミカド全体を念で包みます。そこから、細かく情報を絞り込みます。

「これですね」

 その中に、小さなカプセルを見つけました。破壊されないように、強化します。念のために、10個の強化を重ねがけします。この受胎だと、力場の範囲から出ても少しの間強化は持続します。これは、確認済みなので、大丈夫です。

「今、回収するのは危険ですね・・・」

 周りから、かなりの視線が集まっています。誰かに見られると面倒なので、回収は後にします。

 取りえず、ガイルかカーシャを探してみましょう。

 都の中は、かなり混乱しています。こっそりと、上空を移動して、確認して行きます。一度念を飛ばした相手なら、確認はすぐにできるので、範囲に入れば見つかるはずです。

「これは・・・カーサシャですか」

 先に、カーシャを発見できました。初等学校の生徒共に、何者かと戦闘中です。

「何でこんな所に、共和国の兵士がいるんだ!」

 誰かが叫んでいます。共和国となると、ギール王国の北にあるセントラル共和国でしょう。確か、同盟国だったはずです。

「ギフエナ教の、神官兵士もいたぞ!」

 叫んでいるのは、生徒を守っている兵士みたいです。

「どうせ、この混乱に乗じて人攫いをするつもりなんだろう!」

 1人だけ、別格の動きしている兵士がいます。

「支援魔法・・・ギフトの恩恵?」

 その兵士を見ると、不思議な感じがします。特に強いと言う感じではないのに、確実に敵を仕留めています。その兵士を念でマークすると、力場の中に同じ感覚の存在を多数感じました。同じように強化された兵士が、複数存在しています。

「人材は、国の宝。陛下のためにも、守りぬけ!」

「応!」

 その言葉に、多くの人が賛同します。その結果、兵士達の勢いが増し、敵は蹂躙されていきます。守られていた生徒は、それを見て感謝しています。崇める気持ちが、芽生えています。

 その中に、カーシャもいました。怪我はしていないみたいです。戦うつもりだったのに、守ってもらえて嬉しそうです。まだまだ子供、実戦は早いでしょう。

 こちらは、大丈夫そうですね。何故、他国の人間が入り込んでいたのかは不明です。

 何かの、思惑が進行しているみたいです。

 移動すると、ガイルの反応を見つけました。距離をとり、回りを確認してから、直視します。

 傭兵団の所属なので、色々と特殊な人がいても不思議ではありません。

「えげつない・・・」

 こちらはこちらで、悲惨な事になっています。1人の男が、無双していました。素早く動き、相手に触れる。触れられた男は、内部から爆ぜています。その男のせいで、ガイルの所属する傭兵団は壊滅しています。

「セントラルの、蛇か!!よくも大事な団員を!」

 一番強そうな男が、蛇と呼んだ相手に襲い掛かります。

「こっちだって、部下を全部失ったんだ。せめて、大将首の一つは取らせてもらう」

 するりと、すべるように移動して、蛇は団長にせまる。

「もらった!」

 その手が、団長に触れる直前、潜んでいたガイルが飛び出す。怪力を足に発動する事で脚力が増し、通常では考えられない速度で迫る。

「残念、僕のギフトは相手に触れるだけで、死に至らせる爆破のギフト」

 ガイルの攻撃を、するりと、流れるように交す。この体術は、我が一族の秘伝。この組み合わせは、無敵だぁ。ほら、君は死んだよ」

 その手が、ガイルに触れる。

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

 そして、悲鳴がこだまする。ガイルの、右腕が破裂した。このままだと、出血多量で死ぬだろう。

「眠れ・・・」

 ガイルを念で包み、眠らせる。ついでに、団長も眠らせる。

「血よとまれ、傷よ塞げ」

 これで、応急処置は完了。出血多量で死ぬ事は無い。

「邪魔が入ったか・・・、畜生、僕はまだ何も叶えていないんだぞ・・・」

 蛇と呼ばれた男は、腹に空いた穴を見ながら呟く。そして、大量の血を吐きながら倒れて絶命した。

 間に合うように、小石を飛ばしたが、少し間に合わなかった。

「落ち着け、落ち着け・・・」

 ガイルが、大怪我をしたのを見て気持ちがあらぶる。この感情に、飲み込まれてはいけない。とっさに、治療はできたけど、巻き込んではいけない。

「っく」

 この場所にいると、押さえ切れない可能性もある。盾に飛び乗り、空へと上がる。

 上空の空気は冷たい。強制的でも、頭を冷やす必要がある。物理的に冷やしても、心理的には効果ないかもしれないが、今の私には余裕がありません。

「あれが、本命ですか・・・」

 怪我の功名。空に上がった事で、見つけられた物があります。王都から離れた場所に、飛空艇がいました。その下には、降下した部隊が隊列を組んでいます。

 飛空挺の横には、セントラル共和国の国旗が描かれていました。

 どうやら、戦争が始まるみたいです。

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