私の手を取って
初投稿です。
とうとうこの日が訪れた。
国に全て捧げてきた。だが全ては己の行いが齎した当然の帰結。一時の夢を見ていたのだ。
「フィリア・ローレル・ヴィオレット。
これより読み上げる罪状により、貴女と王太子殿下の婚約を解消する。」
私はあなたのことを愛している。けれどあなたはどうせ政略結婚なのだと私に見向きしてくれなかった。あなたは将来つく重大な責務に向けて努力するのみ。いっそ馬鹿だと言ってしまいたくなるほど真摯に。ひたむきに。
「知らずのうちに行ったこととはいえ、公爵令嬢への暴言、労働の強制、暴行、窃盗。」
だがそれも今日で終わりとなってしまうだろう。あなたが果たしていた役割は人が思うより大きかったのだ。これからあなたは幸せになるだろう。その代わりにしばらくこの国は瓦解してしまうかもしれない。
それもまた一興、あなたは1人で背負い込みすぎてしまう人だ。他のものも働いているとはいえ、まだ成人もしていないあなたに多くのものを背負わせてしまう国など、瓦解してしまえば良いのだ。
「これらはこの国の体制を揺るがす大いなる犯罪である!
故に本来は死刑に処されるが、貴女は国家に対し忠誠を捧げ、国のために長らく働いてきた。また、殿下はあなたの死を望んでおられない。」
あなたは国に多くを捧げてきた。年頃らしい恋愛感情や友情を捨て、だから、
わたしがこの国から去ることで、あなたに多くのものを差し上げられるのだ。あなたが国のために捨ててきた様々なものを。そのためにわたしはあなたに全てを捧げよう。罪悪感など抱く必要はないのです。
「よって、貴女を」
ただ、
「国外追放とする!!」
貴女が私のことを想ってあの女を排除しようとしてくれたのは
「そ、んな……」
「貴女にはこれより3日間の猶予が与えられる」
とてもとても
「わたし、は……ただ、でんかの、この国の……」
嬉しかったのだ
「ヴィオレット伯爵家に咎めはありません。なので安心してお帰りください。」
さあ、
「わたしは、この国のために!!殿下のために!!……ただ……」
幸せをあげよう
「ねえ、フィリア。君の望んでいた自由だよ?」
わたしは告げる。
「で、んか……?」
あぁフィリア……何故泣き顔までそんなに可愛いんだい?
「さあ、フィリア。こんな国からは一緒に出ていってしまおうよ。」
「殿下……?」
戸惑った顔をしているね。私の可愛いフィリア。
これからは自由だよ?
「婚約者に付き纏う厄介な羽虫を排除しようとしただけで殺されてしまう国なんて捨ててしまえばいいじゃないか。」
私は手を差し伸べ、フィリアだけに聞こえる声で囁く。
「ほら、今なら愚昧なオーディエンスも動けないよ。
こんな国なんて放っておこうよ。貴女と私にこんなに多くの荷物を持たせる国なんか。
ほら、一緒に逃げよう?」
フィリア。私の、大好きで愛しくて可愛いフィリア。
手を取ってくれてありがとう。
実はずっと一人称で喋っていたのはこの国の王太子だったというオチです。悪役令嬢のフィリア視点で書いているように見せかけるのに努力しました。