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JET AGE ~大航空時代~  作者: 津辻真咲
7/15

記憶


「泣くな」

〈!〉

「お前の持っている俺の記憶は、まだ途中だ」

〈え?〉

「最後まで奪ってみろ」

銀河は、手を差し出した。

無形型宇宙生命体は、彼の手のひらに自分の手を当てた。

……ヒュン。

記憶がコピーされる。

そして、

銀河は、微笑む。


『遥、もう泣くな。俺たち、チームじゃないか』


 最後の記憶が無形型宇宙生命体の彼の中で再生された。それを見て、彼は黙ってしまう。

〈そう思っているのかな。僕の事、弟だと……?〉

〈……〉

 沈黙は続く。

〈……〉

――さてと、これから、どうするか。

 沈黙の中、銀河は考えている。

――今まで遥か上空にあった〈かくれが〉だけど、いつまでも見つからないとも言えないし。

〈どうかしたのですか?〉

 無形型宇宙生命体の彼は、銀河に尋ねた。銀河の気配の変化を察知した。




数分後。

〈じゃ、ステルス機能つける事、出来るよ〉

「え!?」

 遥は、少し瞳を輝かす。追われている事を知った無形型宇宙生命体の彼は、自身の出身惑星の技術を応用させようとしていた。

《あなたのステルス機能と私の惑星のステルス機能は、同じ原理でしょうか?》

黄砂は、手を差し出す。彼の技術に興味を持ったようだ。

〈いいですよ〉

彼は、手を黄砂の手に当てる。

 ……ヒュ。

《……同じですね》

 彼らは、少し微笑み合う。

――説明しろよ。

 銀河は、それを少し困惑して見ていた。

《お名前を伺ってもよろしいでしょうか?》

 黄砂は、目の前の無形型宇宙生命体の彼に尋ねた。すると。

素浦ソーラといいます〉

 彼は、そう答えると、立体映像で文字を映した。

――漢字?

 遥が不思議に思った。

〈アーサーとナサが〈当て字〉というものを作ってくれました〉

――当て字なのか。

 銀河は、一番後ろで聞いていた。




〈!〉

《どうかしましたか?》

 黄砂が尋ねる。

〈何か来る〉

 無形型宇宙生命体の彼は、映し出された映像を見上げる。

〈6機……〉

 立体映像には、音速で近づいて来る6機の航空マシンが映し出されていた。すると。

 轟音が響いた。かくれがが攻撃された。素浦は、動じずに立体映像を見上げたまま、動かない。

〈……破壊されている〉

 彼は、そうつぶやく。赤色灯とアナウンスが緊急避難を警告している中。銀河は、遥の右手を掴むと、走り出す。

「逃げるぞ」

 黄砂もそのあとを追う。でも、遥は振り返る。

――素浦が、まだ残っているのに!!

 彼の姿が小さくなっていく。そんな事を気にしている遥を銀河は、少し気にかけた。そして、足を止めた。

《え!?》

 黄砂は慌てる。

「この〈かくれが〉の強度じゃ耐えられない!! 一緒に来い!!」

 銀河が叫ぶ。彼は、振り向く。

〈……ここが、僕の〈住処〉だ〉

「いいから来い!! 〈三つ目〉を見つけろ!!」

 銀河は、彼に駆け寄る。

「それに〈一つ目〉は、まだ失ってない」

――故郷の惑星。

 彼の身体の一部を掴み、走る。緊急事態用のアナウンスがカウントダウンを始める。残りわずかだった。

轟音が再び響く。


――もうすぐ、出口。

――見えた!!

 皆は出口を抜け、航空マシンにたどり着く。

「このマシンに乗……」

 遥が言葉の途中で、話を止めた。

《?》

「このマシン、2人用……」

 銀河が遥の後方で、素浦と共にこける。

「黄砂は、俺が後方で抱えるとして……」

銀河は、素浦の方を見る。

〈僕は大丈夫。そのまま飛び降りるから〉

「え!?」

〈でも、推進は出来ないから、航空マシンの後方の翼には、しがみつくけど……〉

「……そう」

 銀河は驚きで、しばし固まる。




 皆は、轟音と共に落下していく。

〈――――――――――〉

 素浦は、降下していく航空マシンに必死にしがみつく。

 すると、先ほどの轟音の主が目視できた。

――あれは。

「空賊」




 轟音の中、何かがこちらへ向かってくる。

「遥!! 追跡ミサイルが来た!!」

「確認済み」

 遥は、機体を回転させて、追跡ミサイルを避けていく。が、しかし、多勢に無勢、追跡ミサイルの餌食になった。

「パラシュートの準備はいいか!! 地面に叩きつけられるぞ!!」

《え!?》

 銀河は黄砂に言い放つ。それと同時に機体が急降下し始めた。

《何でーーー!?》


轟音が大地に響き渡った。1機の航空マシンが追跡ミサイルにより墜落した。

 ヒュュュ……。

 何かが空から落ちてくる。そして。

 ドゴッ……。

 遥、銀河、そして無形型宇宙生命体の素浦を頭上に抱えて、黄砂が地面に着地を果たす。小さな2本の脚が地面に食い込んだ。

「黄砂、ありがとう」

――まさか、パラシュートまで開かないとは。

 銀河は、生還に少し鼓動を速くしていた。

――逃げる手段がなくなった。ここからどうするか。

 銀河は、相手の機体を見上げる。

「遥、走って逃げるぞ」

「え? うん」

 その声に、黄砂も素浦も振り向いて、後を追いかけて行く。

《わっ》

「何」

停止ネットだった。

「ただの資金集めの為だったが、まさか、変わった機械が一緒に捕まっているとはな」

「あぁ、まったくだ」

 空賊のリーダーらしき人物が近づきながら、すぐ側の仲間と話していた。

――機械?

――こいつら、この二人が宇宙生命体だと、まだ気付いていないようだ。

 銀河は、相手の顔をじっと見た。

《機……》

「言うな!!」

 銀河は、黄砂の声を遮るように、彼を背後へ隠した。

「遥、何も話さない方がいい」

「え?」

 遥は、きょとんとしていた。まだ、そこまで気づいていないようだった。

「何を黙れと言っているかは、知らないが……。お前らは、これから俺たちの人質だ。警察から逃げるための盾になってもらうよ?」

《何》

「捕まえろ」

〈え〉

「変な飛行物体を攻撃してまで、捕まえたかいがあったかもな。機械もロープで縛れ」

「はい」

「人質はこの二人でいい」

「OK。分かった」

仲間は、四人をロープで縛った。

「うぜぇんだよ!! 離せ!!」

 銀河が暴れる。しかし。

「痛っ」

傷口が痛んだ。

「けが人は、安静にしてろよ」

 空賊のリーダーは、少し面倒くさそうにして、その言葉を吐き捨てた。

 彼は、香椎ミア(カシイ ミア)。空賊のリーダーだ。金色に近い淡いオレンジ色の髪色と虹彩をしている。服装は、カッターシャツにネクタイなのだが、ラフに着こなしていた。周りの仲間たちもそういう雰囲気で、制服の者もいた。

「おい。お前ら、行くぞ」

「はい」

 すぐ横の仲間、江夏こうかが返事をした。すると、それと同時に、彼は片手を地面につき、倒れ込んだ。

 香椎ミアが振り返る。すると、黄砂と素浦が暴れていた。

――何なんだ!?

「ミア……」

 江夏が苦しみながら、必死に立ち上がろうとしていた。

「ちっ」

 それを見て、香椎ミアは彼に肩を貸すと、仲間たちを引き連れて、立ち去ろうとした。

〈遥!!〉

 素浦は、おとりで暴れまわる黄砂の側から離れ、遥の方へ助けに行く。それに気づいた香椎ミアは、叫ぶ。

「人質は一人だ!! 行くぞ!!」

 他の仲間たちは香椎ミアの命令に各自返事をして、航空マシンへ乗り込んでいく。

「銀河!?」

 銀河が連れて行かれる。次の瞬間。

ゴォォォ……。

 轟音が一気に小さくなっていく。航空マシンの群れは、飛び去っていった。

――銀河!!


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