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JET AGE ~大航空時代~  作者: 津辻真咲
14/15

White WalL


晴れ渡った空の下、以前と変わらず修理工場から機械音が聞こえてくる。

「白兄鷹君」

「はい」

彼はエンジンから顔を出し、遥の祖父を見る。

「そろそろ、昼休憩にしようか」

祖父は少し笑顔で言う。

「はい」

 銀河は作業用の手袋を外した。

すると……。

「ただいまー……」

遥が少しふてくされて帰ってきた。

「?」

 銀河は振り返る。

「いい成績じゃなかったのか?」

 祖父が優しく尋ねる。

「……」

しかし、彼女は俯いている。

――そうだったのか。負けず嫌いだなぁ。

祖父は、結果を感じ取って少し苦笑した。

「あの、空隙さん。先に昼、食べていて下さい」

 銀河が遥の祖父、空競空隙へ話しかける。

「え?」

「少し、外します」

「あ、あぁ。そうか、分かったよ」

 祖父は、彼の言葉に少し戸惑いながら答えた。すると、銀河は低めの脚立から降りて、遥の方へ駆け寄る。

「行くぞ」

そして、遥の右手を掴む。

「え?」

遥は、銀河に手を引かれて走っていくことになった。




 夏至過ぎの太陽が照らし出す、航空レースの会場。空には、薄い透明なリフターの広告がゆっくりと舞っている。その新しい技術は、粒子の反作用で揚力を得ていた。

「ここは」

第101回エア・レースが開催されていた。遥にとって、今日2回目のレースだ。

「でも、マシンがないよ?」

遥は銀河の方を見た。

「もう登録しといた」

 彼は遠くを見ながら答えた。

「え!? 何で!?」

 遥は驚きながら尋ねた。すると。

「優勝したら、サテライト〈チーム〉じゃないようにするつもり」

 銀河の目線が遥へ移る。

「だから、絶対、優勝してこいよ」

 彼はそう言うと、遥の右手を引き、スタート地点へと歩き出す。

――プロのチームになれる!?

 遥の期待が膨らむ。

彼には見えていなかったが、遥の笑顔はいつもより明るかった。

――今はまだ、気付いていない。きっと。

 銀河は彼女の表情を業と見なかった。というより、見れなかったのだった。




信号が青になった。

遥のマシンは、一気に加速する。

すると、彼女のマシンは客席の目の前でマッハ1を超えた。

白い雲のような音速の壁が出現し、轟音が響き渡る。

実況が盛り上げ、観客は歓声を上げた。

すると、その観客の中に小学生の女子一人と男子四人の五人組がいるのが見えた。

その五人組は音速の壁に驚き、感動していた。

真ん中にいる女子の夢はパイロット、眼鏡をかけた男子の夢は航空学者、一番右の男子は整備士、背の低い男子は設計士、そして青い虹彩の男子はレース・ディレクターだ。

そんな事などは知らないが、遥は、はしゃぐ五人組の姿を見て、笑顔になった。


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