第二部:スタンド・バイ・ミー 〜 仲間 (プロローグ:道)
[ 第二部:スタンド・バイ・ミー 〜 仲間 ]
(プロローグ:道)
「あっちに行くと、どこに行けるの?」
車の窓にへばりつくようにして外の景色を眺め続けている幼い少女は、車が大きな曲がり角や分かれ道にさしかかるたびに、車内を振り返って両親に尋ねていた。
両親はシティの幹線経路なら、どのインターチェンジがどこに着くか、どこで曲がるとどのエリアに向かうか、だいたいのところは答えられていたが、車が市街地を出て農場エリアに入っていくと、だんだん答えられなくなってきた。
両親ともにこのシティの中心部で育ち、これまでの仕事も暮らしもすべてシティの中心部で過ごしてきたのだから無理もない。
それでも、少女の質問は止まらない。
「ねぇ、あの道はどこに行くの?」
「あ、あれはなに?」
「あの標識に出てる、ピュレイアスゾーンってどんなところ?」
「ねぇ、あれはお水のタンクだよね!」
だが少女の両親は嫌な顔一つせず、可能な限り質問に答え続けている。
はっきりとわからないことには『...かもしれないわ』や『だと思うのだけど...』と保留の言葉を必ず付けるのは、両親二人ともに同じだ。
確証のないことを断言するのは美しくないと考える、職業科学者としての『癖』のようなものかもしれない。
どうしてもわからないことや、推測できないことは、素直に『わからない』と答えていたが、車が郊外に進んで行くにつれて、その頻度がどんどん上がってくる。
なのに、少女の方はむしろ、興味を引かれる対象が加速度的に増えている様子だ。
片方の親が少女に向かってニコニコと微笑みかけながら言った。
「本当にジャンヌは知りたがりさんね。でも好奇心が旺盛なのは素敵なことだわ」
もう一人がそれを受けて言う。
「そうよジャンヌ、あなたもすぐに色々なことを自分で調べられるようになるわ。そうしたら、なんでも調べてなんでもわかるようになるわ」
振り向いた少女が言う。
「私もママたちみたいになれる?」
二人のママは無意識に言葉をシンクロさせていた。
「もちろんよ!」
それを聞いた少女は、ぱっと顔を輝かせると、再び車外の風景にかじりついた。
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