少年と真実と虚構
ベンチに座っている私の隣で、少年は手の平の上の雪を眺めている。
その雪はすぐに解け、また次の雪がひらひらと宙を舞って、手の平に飛び込んだ。
「真実と虚構って、どうやったら見分けられるのかなあ?」
少年は雪を見つめたまま呟いた。
「それは難しいね」
私は積もり行く雪の山をぼんやりと遠目に見る。
「私にも、出来る自信は無いよ」
「やっぱり、難しいのかあ」
公園は白一色に染まっている。
予報は大当たりだった。
「例えば、九十九個の虚構の中に、たった一個だけの真実が紛れてたら、僕はどうしたらいい?」
「どうしようもないよ」
私は即答する。
「その一個の真実を見つけられるのは、真実を言ったその人だけだ」
雪はなおも降り続く。
止む気配は無かった。
「悲しいね」
「うん、悲しい、でも、ずっと昔からそうだったんだ」
「どれくらい?」
「うんと」
公園に人はいない。
完全に無人の状態だ。
少年は雪の観察を止め、握りこぶしくらいの雪玉を作り始めた。
それを遠くに投げる。
「真実って、貴重なんだね」
「そりゃあ、貴重だよ」
雪玉は空中で見えなくなった。
「貴重じゃなかったら、みんなが真実を捨ててしまうから」
「そっか、でも、虚構にだって、価値はあるでしょ?」
「もちろん」
少年は足元の雪を蹴り飛ばして、そして、再び雪を眺め始めた。




