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海をみた日

作者: オーリ
掲載日:2016/04/13

住んでいるのは南の島、


僕がはじめて海を見た日の話。



僕のおうちは、海から遠くて、5歳の僕は海を知らなかった。


ある日お姉ちゃんたちを追いかけて、森に入った。


いっしょに遊びたいのにお姉ちゃんたちはいつも僕を置いて行こうとするから、

その日も必死にあとをついて行った。


雨の降った翌日で、穴だらけの道はひどくぬかるんで素足に泥が気持ち悪い。


くねくねと曲がり道、目の前から消えてゆくお姉ちゃんの赤い着物のはしを追いかけてまろびながら走った。


ふと気がつくと、昼なお暗い木々の間にひとりになってた。


途方に暮れて視界が歪むし、おとうさんがいつもいう、子どもがひとりで森にはいったら山猫に食われるぞ~っていう言葉が頭のなかをくるくるまわってる。


犬ほどもある山猫がどこからともなく狙っている気がする。


どうしよう。


目をぎゅっとつむっていると、ぱかぽか足音がきこえてきた。


ネコじゃない。


振り向くと近くに住んでいるのおじさんがふたり、馬に乗ってやってきた。


なんでこんな所に子どもがひとりでいるんだ。かえりなさい。



おじさんたちはどこに行くの?



海に。



おじさんたちはそれだけ言ってまた馬を進めはじめた。



お姉ちゃんたちも海に行ったのだろうか…。



来た道をふりかえり、

僕は馬のあとをおいかけることにした。馬のしっぽはゆらゆら揺れる。


見失わないようにじっと見ながらおいかけたら、ぬかるみにはまった。


はいでて追いかける。


またはまる。


追いかける。


はまる。


追う。


えんえんと泥んこをぬりなおしていたら、ぽかっと道が明るくなってきた。


森をぬけたのだった。


馬の上からおじさんたちが


とうとう最後まで着いてきたなあ、あれを下ったら海だ。


と銀ねむの茂みを指さした。


わしらは馬を留めてくるからしばらくそこで居りなさい。


おじさんたちは森の端にぱかぽかと歩いていった。



ざざあ、ざざあ、と

大きな水の音が聴こえる。


海とはどんなところなのか。

うつむいた顔からぱらぱらと乾いた泥が落ちてゆく。


しばらく待っていたけれど、おじさんたちは戻ってこない。


ぱらぱら。


腕からも。



銀ねむの茂みにつっこむことにした。


つるくさのからむ下草をかきわけ獣道を下る。


ざざあ、ざざあの音に交じって子どもの声がする。



はりきってかきわける。



そしたら、

太陽が目に飛び込んできた。


真っ白な砂が目にいたい。

空はまったく青い。


海も。


光ってまぶしい。


海。


ざざあ、ざざあの水際にお姉ちゃんたちと知らない子たちが遊んでいた。



僕を見つけたお姉ちゃんが駆けてきて


あんたどうやってここまできたの。


っていう。


人の気も知らずに。


お姉ちゃんが戻っていくので


着物を脱いでおいてあとを追った。


水に飛び込んだら目にしみて塩辛かったけれど


あしもとで小さな魚たちが泳いでいるのがきれいだった。


水は冷たい

太陽はあったかい。


どうして透明なのに、青いのかふしぎでたまらない。



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