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リクエスト≪後書き≫

作者: 古河晴香

これは「リクエスト」という、

拙作の短編の後書きになります。

ネタバレをしていますので、

本編を読んいただいてから、

この解説を読んでいただければと思います。

よろしくお願いいたします。





 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 後書きを書かせていただきます。


 自分の小説を自分で解説するなんて蛇足と思いながらも、この溢れる気持ち(笑)を書いておきたくて、書かせていただきます。


 「リクエスト」は三角関係のお話です。

 「悩める男子高生」は、そのラジオネームからして少し自意識過剰な印象です。ラジオネームが今回の投稿とリンクしているため、初めての投稿で、普段はラジオに投稿するようなタイプではないことが伺えます。靴箱を「下駄箱」と言ったり、リクエスト曲が「なごり雪」だったりと、なんというか書生気どりの古風な少年です。

 DJにも「なんだか渋いところがある」と言われています。

 三人目の「りらっくま次郎」からは、「クールだけど、根がまっすぐで、目がきれいな奴」「女の子に人気がありますが、誰かを好きになったりはしなさそう」と評されています。

 女子は、クールなちょっと気どった彼のことが好きなのでしょう。運動神経も良いとのこと。でも「りらっくま次郎」は、彼の本質はもっと純朴で素直なのだと見抜いて、彼に一目置いています。

 ところが、球技大会で、他の奴らと一緒になって自分を面白がって標的にしたので、幻滅します。

 「悩める男子高生」はクラスでもリーダーグループに属していて人気があるので、オタクっぽくていつもからかいの対象になっているような「りらっくま次郎」の気持ちが分かりません。

 芸人をいじって笑うようなTVのバラエティー番組のようなのりで、軽い気持ちでいじめに加担してしまいます。ドッジボールなので、それがいじめとも思っていないかもしれません。ただ、運動神経の悪い「りらっくま次郎」くんを集中攻撃して、一生懸命逃げる様子を笑っているクラスメートに注意せず、一緒になって「りらっくま次郎」くんを攻撃するのです。その場の雰囲気に合わせてしまいます。

ですが、「あっちゃん」の行動によって、自分のしていたことを気づかされます。

 「りらっくま次郎」くんに攻撃が集中しているのは明らかで、みんなそれを楽しんでいる雰囲気の中で、遠くにいたのに「りらっくま次郎」くんをかばって飛び出してきた「あっちゃん」。「みんなやめなよ!」とか言うのではなく、明らかに不自然な行動なのに、「あ~あ、取ろうと思ったんだけどなあ」と嘘をついて、自分も怪我までしながら、誰も責めず、「りらっくま次郎」くんをみじめな思いにもさせず、行動で咎める勇気と優しさがあります。「りらっくま次郎」くんが近所に住む幼馴染だった、ということもあるでしょう。でもたぶん彼女はクラスのリーダーグループにいて、高校生になった今では、普段は「りらっくま次郎」くんとはあまり仲良くなくて、喋るような仲でもないと思います。でも、彼がピンチのときに助けてくれた情の厚さに、「りらっくま次郎」くんは涙が出るほど嬉しく思います。最近は全然喋っていない「あっちゃん」だけど、僕のことをかばってくれた……。


 「あっちゃん」はリクエストの文中では詳細を書いてはいませんが、それは自分の善行をあえてひけらかすことはない、という思いがあります。恐らく、「悩める男子高生」は、あっちゃんにボールを当てて、その後ですごく気にしてくれて、というのは怪我のこともありますが、「りらっくま次郎」くんを標的にしたことに対する罪悪感なのです。「すごく悪いことをした、という顔をしていて、なんだか子犬みたいな感じで、いい子だなあ、と思いました」という感想は、「あっちゃん」は自分の怪我を心配してくれたからいい子だと思ったのではありません。「あっちゃん」は、「悩める男子高生」が自分が「りらっくま次郎」くんを傷つけてしまったことに気がついて、素直に悪かったとすぐ反省できる心に対して、「いい子だなあ」と思ったのです。文中にはありませんが、「りらっくま次郎」くんに対して申し訳なかった、ということを「あっちゃん」に話して謝ったかもしれません。

 クールな面で女子に人気な「悩める男子高生」ですが、「あっちゃん」は彼のクールな表面ではなく、子犬のように素直なところを好きになりました。その点は、彼の本質を見抜いて一目置いていた「りらっくま次郎」くんと同じと言えます。

 ですが、二人の仲は急接近したりしません。「悩める男子高生」は自分の行動を恥じて、こんな自分は「あっちゃん」からは軽蔑されているだろうと思います。これからもっと良い人間になろう、と静かに決意して、「あっちゃん」に対して何も行動をしないまま、卒業のときを迎えてしまいます。まさか「あっちゃん」が自分のことを好きだなんて夢にも思わず(鈍感)、ハガキの文中も望み薄な思いがあふれています。“去年よりずっときれいになった”と言いたい、というのは、去年のあのドッジボールのときに、彼女の心の美しさに胸を打たれたのだ、ということを、会って告白したいのでしょう。


 「りらっくま次郎」くんは、恐らく体型がりらっくまに似ていて(たぶんお菓子が好きなのです)、その弟分、という気持ちでこのラジオネームをつけています。ラジオネームのひねり方や、ハガキの出だしの「彼女をAさんとします」の部分を見ても、素直ではなく少しこだわりのある性格に思われます。自分に自信が無く、勇気がなく、告白もできません。でも、「あっちゃん」のためを思うまごころや、正々堂々とした「悩める男子高生」のために、(ってあなただってよっぽど正々堂々として立派だよ!)、彼の手紙を「あっちゃん」のポストに入れてあげるという行動に胸を打たれます(作者が自分で言っててすみません)(作者は自分で書いた話ですが、彼のことを思うと涙してしまいます)

 「悩める男子高生」はいじめられた経験がないので、表面上クールで通している自分がラブレターを下駄箱に入れたのが見つかったら、彼をねたんでいるような人たち、「りらっくま次郎」くんを標的にして面白がっているような人たち、(普段は「悩める男子高生」とつるんでいるのかもしれませんが)、彼らからどんな目に合わされるかなんて、全く想像もしていません。素直というかおめでたいのです。

 「りらっくま次郎」くんはいつもからかいの対象になっているので、目立たぬようひっそりと行動しています。「あんまり僕みたいな奴の気持ちが分からなくて」の部分は、ちょっと作者の表現が不十分で伝わりにくかったと思うのですが、「りらっくま次郎」くんはいつもいじめを恐れているので、「あっちゃん」へのプレゼントにも名前を書いていないのです。危険を回避しているのです。そして、危険を知らない「悩める男子高生」を、「無防備」「馬鹿な」と評するのです。

 そして、「悩める男子高生」を陥れようと思えば、その手紙を校内の掲示板に貼り出すようなこともできたと思います。そんな悪魔の囁きもあったかもしれません。拾ったのが「りらっくま次郎」くんを標的にして面白がっているような人たちであれば、そうしたかもしれません。

 でも「りらっくま次郎」くんは、手紙を「あっちゃん」に届けました。そのことは「あっちゃん」も「悩める男子高生」も知りませんが、後で二人で会ったときに話せば、下駄箱からポストへ手紙が移動したことがおかしいね、となり、「あっちゃん」は「りらっくま次郎」くんがしたのではないか、と薄々気づくかもしれません。きっと「あっちゃん」は恋愛感情でないにせよ「りらっくま次郎」くんを気にかけているのです。

 「あっちゃん」はキロロが好きなまっすぐなイメージで、「りらっくま次郎」くんは最新のJ-POPなんて聞かずにビートルズが好きなこだわり派です。その点、実は「悩める男子高生」とはいつか友達になれるんじゃないか、友達になったらいいなと思います。



 このお話の生まれたきっかけ。感想への返信欄にも書かせていただきましたが、私は合唱団に所属していて、定期演奏会が毎年3月にあるのですが、ポップスを歌うステージがあり、その演出としてよく取られていた形式が、ラジオDJが曲紹介をして、それをコーラスで歌う、という形式でした。3月ということで卒業のイメージがあることと、このラジオDJが曲紹介をする内容が繋がって物語になっていたら面白いな、と思ったのがきっかけです。

 また、さだまさしの歌で、「0-15<リクエストのバラード~素敵なTennis Boy>」という歌があり、1つの歌の中でDJ役とリクエスト曲を両方演じるという面白い歌です。また、村上春樹の「風の歌を聞け」でもDJが語る部分があり、そんなところから着想を得ました。


 拙作をお読みいただき、ありがとうございました。





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