舞い降りた盲目の天使2
放課後、教室には誰も残っていない。誰もいない教室、静けさと夕日でなんとも言えぬ絵が生まれる。左右の指二本ずつで四角を作り、自分の感じた絵と四角の中に映る絵を合わせる・・・良い絵だ。想像を創造し、最後に父からもらったカメラでそうぞうを現実にする。それが俺の唯一の楽しみだ。このカメラは一眼レフってやつらしいけど俺にはよくわからない。ただ、これで写すと俺の創造した絵と一致する。他のカメラだと何かが違う。
「準備完了っと」
・・・静かだ。時間の空白が嫌いな俺だが、この時間だけは好きだ。時間がゆっくり流れているのが分かりとても心地よい。
「そろそろ、落ちてくる頃か」
この学校の良いところは海の近く、周りに学校より高い建物が一切ないところだ。海がはっきりと見える。そして、今の時間、五時半くらいになると夕日が海に沈み始める。そして最後にこの教室から廊下に出て、カメラ越しで見る。すると教室はオレンジ色に染まり、窓からは夕日と海。俺の想像通りの絵が映し出される。
カシャッカシャッと一枚ずつゆっくりとシャッターを押していく。何枚も何枚も写真をとる。同じ写真なんてどこにも存在しない。一枚一枚、違う味があり個性がでるんだ。
「なにしてるんですか?」
「あ?見ればわかるだろ。写真写してるんだよ。盲目かお前」
「はい、そうですよ」
「は、なわけ・・・!?」
こっちを見てはいるが、目は閉じてるし、杖をついている。盲目という嘘をつくための小道具と無理やり言えばそうなるが、第一俺に嘘をつく意味がない。だって初対面だろ。なにより、俺自身が彼女が嘘をついてはいないと思っている。あの子は俺が見えていない、いやこの世界が見えてないと・・・
「親は?」
「いなければ、ここにこれませんよ」
「一人で歩けるか?」
「今、私座ってるように見えますか?」
「・・・」
初対面だけど、だけど、うぜ!!!!!なんだこいつ、完全に喧嘩腰じゃねえか!俺は買うぞ!
「一つお願いしてもいいですか?」
「やだ。なんかお前、俺に喧嘩売ってくるし」
「とっても心が狭いんですね」
「それだよ!」
変にやけになっちゃってるよ俺。なんかダセえ。
「で、要件はなんだよ」
「え?聞いてくれるんですか?」
「お前がお願いしてきたんだろうが!」
「ふふ、それもそうですね」
彼女の笑顔に一瞬ドキッとしてしまった。いかんいかん。確かにかわいいが、俺はだまされないぞ。
「では、私のお葬式の写真を撮ってもらえませんか?」
「ストップ!待て、待つんだ少女よ」
深呼吸をして、一呼吸置いて、よし
「お前、死ぬのか?」
深呼吸したし、大丈夫なはずなのに、心臓はドキドキ言ってるし、手は震えている。
だってそうだろ?いきなり私の葬式の写真とってなんて・・・意味わかんねえよ
でも、彼女は笑顔で
「はい、そうですよ」と平気に答えた。俺のような震えなど一切ない声で
・・・彼女の笑顔が眩しすぎて、俺はだんだん悲しくなっていった。