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放課後30分。  作者: 五堂じゅん
1/3

1、先生と私。

「先生は、子供が産まれた時のこと、覚えてる?」

高校3年の春、私は先生は訊いた。

私の担任の川上先生は23歳独身。バツイチ。

19歳で結婚、21歳で離婚。

子供がいたそうだが、離婚以来会っていないという。

細身で長身の先生の担当は数学。白衣の似合いそうな先生だ。

「いや、覚えてないな」

先生はいつも言う。

「出産にも立ち会えなかった。俺、授業してたしさ。

実を言うと、子供とあんまり会えなかったし。あの子も、俺のことなんて覚えて

ないと思うよ」

ふーん、と私は先生を見た。

「なんだよ」

先生は少し不機嫌そうに眉を寄せた。

「先生も、やることやってたんだね」

「うるさい。もう5時だぞ、早く帰れ」

先生はまだ明るい空を見た。

ずいぶん陽が長くなってきた。

立ってるだけでも汗ばんでくるのが分かる。

「まだ、5時じゃん。私帰りたくないなあ…」

私は憂鬱になった。

「どうした?何かあった?」

先生の少し甘い声がセクシーだ。

「大丈夫」

私は座っていた机から飛び降りて軽い鞄を持った。

「30分も引き止めちゃったね。先生、お疲れ様。ばいばい」

「おう。また明日」

笑顔で手を振っている先生に私も手を振り返す。

明日もまた、30分。

先生と話す時間は、私にとっての救いの時間。

私は小さくため息をついて帰路についた。


私は相沢夏希。

高校生活も残すところ9ヶ月。

私は、この9ヶ月を、誰かを愛せる時間にしたいと思っていた。


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