第22話「初めての共同依頼」
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パーティ登録を終え、訓練を重ねて三日目。
俺とアリアは再びギルドの依頼掲示板の前に立っていた。
「さて……そろそろ実績づくり、始めるわよ」
「待ってましたって感じだな」
訓練だけじゃ強くはなれても、ランクは上がらない。
Dランクになるためには、とにかく依頼をこなすしかないのだ。
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掲示板にはEランク向けの依頼がずらりと並んでいる。
•薬草採取
•荷物の護衛
•近郊の魔物駆除
•雑用系の仕事
正直、どれも地味だ。
でも——
「こういうのを地道にやるのが近道よ」
アリアが真面目な顔で言う。
「分かってるよ。焦ってもしょうがないもんな」
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俺たちはいくつかの依頼を見比べ、最終的に一枚の紙を選んだ。
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《近郊ゴブリン駆除・3体》
•報酬:銅貨15枚
•難易度:E
•条件:パーティ推奨
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「これならちょうどいいわね」
「初めての共同依頼にはぴったりだな」
いきなり強い魔物は論外。
まずは“安全に確実に成功できる仕事”からだ。
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受付で依頼を受注すると、俺たちはそのまま街の外へ向かった。
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「レイ、役割は分かってるわね?」
「ああ。俺が前衛で注意を引く。アリアは後方支援」
「その通り」
迷宮の時とは違う。
今回はちゃんと準備もできているし、心の余裕もある。
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森に入ってしばらく歩くと、さっそく気配があった。
「……いたわね」
茂みの向こうに見えるのは、小柄な緑色の魔物。
ゴブリンが三体。
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「よし、いくぞ」
俺は購入したばかりの片手剣を構える。
もう一本の“名前のない剣”は背中に。
今日はまず、普通の装備で戦うつもりだった。
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「支援かけるわ」
アリアの詠唱が始まり、体がふっと軽くなる。
「身体強化。持続時間は三分よ」
「十分すぎる!」
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俺は一気に踏み込んだ。
訓練の成果は確かに出ていた。
以前より体が動く。
剣の振りも安定している。
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「ギギッ!」
ゴブリンが棍棒を振り下ろす。
それを冷静に受け流し、横薙ぎに一閃。
手応えと同時に一体目が崩れ落ちた。
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「いい調子よ!」
アリアの声が飛ぶ。
残り二体。
焦らず、一歩ずつ確実に。
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支援魔法のおかげで視界も広い。
連携の感覚が、ほんの少しずつ掴めてくる。
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数分後。
俺たちは無事に依頼を完了させていた。
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「……終わったな」
「ええ。完璧な初仕事ね」
怪我もなし。
失敗もなし。
ただの小さな成功。
でも——
「こういうのを積み重ねていくのよ」
アリアが満足そうに微笑んだ。
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街へ戻り、ギルドで報告を済ませる。
「依頼達成、おめでとうございます」
受付嬢から銅貨15枚を受け取り、俺は財布にしまった。
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大金じゃない。
派手な功績でもない。
それでも——
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「一歩前進、だな」
「そうね。確実にね」
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Dランクまでの道のりはまだ遠い。
けれど今日、俺たちは確かに前に進んだ。
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帰り道、背中の“名前のない剣”が、ほんの少しだけ温かく感じた気がした。




