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『歴史オタクの俺、魂を具現化して異世界を生き抜く』  作者: 龍海


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第20話「生きて帰った者たち」



 迷宮の外は、信じられないほど静かだった。


 ついさっきまで死と隣り合わせだったのに、外の空気はただ穏やかで、風が優しく頬を撫でる。


「……はぁ」


 地面にへたり込んだまま、俺は大きく息を吐いた。


 体中が痛い。

 腕も足もまともに動かない。


 でも——


「生きてる……」


 その一言だけで、胸がいっぱいになった。



「本当に……生きて、出られたのね」


 隣ではアリアが空を見上げていた。


 金色の髪が風に揺れている。


 いつも冷静だった彼女も、今はどこか放心したような表情だった。


「助けてくれて……ありがとう、レイ」


「礼を言うのはこっちだよ。

 結界がなかったら、とっくに終わってた」


 お互いにボロボロ。


 でも二人とも、ちゃんとここにいる。



 しばらく無言の時間が流れた。


 戦いの緊張が、ゆっくりとほどけていく。


 その静けさの中で——


 頭の奥から、聞き慣れた声が響いた。



「……生き延びたな」



 武蔵の声だ。


「まあな。

 あんたのおかげだよ」


「礼を言うにはまだ早い。

 あれはほんの一手、そなたはまだまだ未熟よ」


 相変わらずの辛口。


 でも——


「それでも助かった。

 本物の一閃、ちゃんと見えたよ」


 そう言うと、武蔵は小さく笑った気配がした。


「次は自らの力で振るえるようになれ」


「……努力する」


 それだけ言って、武蔵の気配は静かに消えた。



「今、誰かと話してた?」


 アリアが不思議そうに俺を見る。


「あー……ちょっとした相棒と、な」


 能力のことは、まだ簡単には説明できない。


 でも彼女はそれ以上深くは追及しなかった。



 アリアはゆっくりと立ち上がり、俺のほうへ向き直る。


「レイ。

 改めて言わせて」


 まっすぐな瞳。


「あなたが来てくれなかったら、私はきっとあの場所で終わってた。

 本当に……ありがとう」


 その言葉に、少し照れくさくなる。


「俺だって一人じゃ無理だった。

 お互い様だろ」


「それでもよ」


 彼女は小さく微笑んだ。



「これから、どうするの?」


 アリアの問いに、俺は少し考える。


「まずは街に戻って報告だな。

 捜索依頼の結果も伝えないと」


 行方不明者はもう戻らない。


 それでも事実は伝えなければならない。



「私も一緒に行っていい?」


「もちろん。

 むしろ来てくれないと困る」


 アリアは静かにうなずいた。


「……私ね、もう一度やり直したいの」


「やり直す?」


「仲間を失って、全部終わったと思ってた。

 でも——」


 彼女は俺を見て、はっきりと言った。


「もう一度、前に進みたい。

 あなたと一緒に」



 その言葉に、胸が少し熱くなった。


「俺でいいのか?」


「あなたがいいの」


 迷いのない答え。



「じゃあ決まりだな」


 俺はゆっくり立ち上がり、アリアに手を差し出した。


「一緒に帰ろう。

 ここからまた始めるために」



 彼女はその手をしっかりと握った。


「ええ。

 今度こそ——ちゃんと生きるために」



 迷宮の入口を背に、俺たちは歩き出す。


 勝ったわけじゃない。


 誇れるような戦果もない。


 それでも——


 確かに俺たちは、生きて帰ってきた。



 この経験はきっと、無駄じゃない。


 これから先に続く道の、確かな一歩になる。

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