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元天才子役だった俺は平穏な高校生活を謳歌したい  作者: 86
第2章

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第97話 出番

 俺は一瞬ベンチに横になって寝ようかな、とも考えたが流石にフィールド上で頑張っているクラスメイト達をそっちのけで自分だけ寝るというのも失礼だと思い、ちゃんと試合を観戦する事にした。


 ちなみにこれは球技大会なのでそんなガチみたいにはやらず、1試合前半20分、後半20分の合計40分となっている。


 もちろんアディショナルタイムや延長は存在せず、引き分けで終わった時はPKをして勝ち負けを決める。


 改めてこの試合に目をやるとまずは1年A組のボールからスタートした。


 最初にキックオフを担当した1年A組の生徒は早速ボールをサッカー部である進藤に渡し、進藤は自分でボールを持つとすぐにドリブルで自分の通る道を切り開いていく。


 流石サッカー部なだけあってボールタッチが繊細であまり普段サッカーをしない素人にはそれを止める事が困難であった。


 俺のクラスのクラスメイト達も足を出したりして進藤のドリブルを止めようとはしているが、進藤に上手く交わされて簡単に抜けられてしまう。


 俺はこれは1点決められたかもな、と思い試合を見ているとここで佐藤が立ち塞がった。


「もうこれ以上お前の好き勝手にはさせねえ!」


 そう言いながら佐藤は進藤の足元に向かって豪快にスライディングをして相手からボールを奪い取る。


 それに対して進藤はチッと軽く舌打ちをしてから今度は守備へと戻る。


 佐藤は普段の体育の授業とか見てたら分かるけど何気に身体能力高いんだよな。


 そしてどうやら1年A組で強いのは進藤だけだったらしく、佐藤と海斗がワンツーを繰り返しながら敵陣地へと切り込んでいくと最後は海斗が蹴ったボールがゴールネットに突き刺さって1年C組が先制点をもぎ取った。


 まぁそんなこんなで試合は順調に進んでいき、終わってみれば3-0という結果で1年C組の勝利で終わった。


 試合終了のホイッスルと同時に周りから黄色い歓声が上がったので何事かと周りを見てみると海斗と佐藤を見に来ていた女子達が目をハートにして歓声を上げているようだ。


 海斗は言わずもがな人気はあるのだが、実は佐藤も他クラスでは人気がある方なのだ。


 ただ1年C組では海斗という圧倒的な存在がいるせいで海斗の陰に隠れていてあまり目立ってはいない。


 なので普段はそこまで人気があるようには見えない。


 そんな2人が並んで周りに手を振り返すとフィールドの周りを囲んでいた女子たちは再度キャーッと歓声を上げた。


 我がクラスの人気者たちはちゃんとファンサも行うらしい。


 その後ベンチに座ってた俺も小走りで駆け寄り海斗の横に並んで共に挨拶を済ませると涼しそうな木陰を探して歩き回る。

 

 そんな感じで俺の出番は全く来る事なく2回戦も勝ち進み、3回戦がやってきた。


 対戦相手は3年生だった。


 どうせ今回も出番ないだろうな、と思いベンチに腰をかけて試合を見ていた時だった。


 視界の端に映った彩葉たち5人に風間と荒井を加えた7人がこちらを見ており俺の方に向かって手を振ってきたのだ。


 もちろん俺はそれに対して反応するわけにもいかず、真っ直ぐと目の前の試合を凝視して知らないふりをする。


 そんな俺を見て7人はクスクスと笑っているが決して反応してはいけない。


 この試合を取り囲んでいた試合の観戦者たちは皆7人の行動に気づき、すぐに誰に向かって手を振っているんだ?と疑問を抱いていた。


 目の前で試合をしている生徒たちは「七瀬さんが俺を応援している!」「いや俺を応援しているんだ!」と意味不明な事を言っている生徒が少数で、海斗を見にきたと思っている生徒たちが多数を占めていた。


 その当の本人である海斗は俺の方を見て苦笑いしているし、彩葉の行動に気づいた佐藤は俺の方を向き思いっきりガンを飛ばしてくる。


 そんな目をされても、という感じなのだが不運な事にこの試合に限って俺の出番がやってきたのだ。


 前半で1年C組の俺のクラスメイトが怪我をしたらしくて、後半から途中交代で俺が出場する事になった。


 怪我した生徒からビブスを受け取り、それを体操服の上から着てフィールドに立つ。


 この試合には海斗と佐藤がいるからか周りの観客の数も他に比べれば多く、初めて立つこの舞台に俺は緊張する。


 今日だけで佐藤や海斗のプレイは何回も見てきたし、2人の真似、つまり演じる事は比較的容易だと思う。


 しかしそれをしてしまうと少々目立ってしまう可能性があるので俺は何も特別な事はせず、普通にサッカーを楽しもうと思う。


 ポジションとしては海斗がセンターフォワード、佐藤がライトウイング、そして俺がレフトウイングのようだ。


 2人の足を引っ張らないか少し心配だったが、俺が心の準備をするよりも早く審判をやっている生徒が笛を吹き海斗のキックオフから後半戦が始まった。

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