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元天才子役だった俺は平穏な高校生活を謳歌したい  作者: 86
第2章

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第95話 球技大会開幕

 そしてそれから3日開いて球技大会当日がやってきた。


 大変憂鬱である。


 朝家を出る時も「今日学校行きたくない」と呟いてしまったせいか妹にも「どうしたの?お兄ちゃん」と心配されてしまった。


 俺は妹に「ただ球技大会を欠席したいだけだ」と答えるとルナはケラケラと「学校の行事くらい参加した方がいいよ」と笑われてしまった。


 俺は何故こんなにも自分が笑われているのか理解できないまま、母さんが作ってくれた弁当と水筒を鞄にしまい、それを背負ってから家を出る。


 登校中悲しい事に何の事件にも巻き込まれる事なく無事に学校に着いてしまい、教室ではすでに体操服へと着替え終わっている生徒たちで溢れていた。


 俺も鞄から体操服を取り出してトイレへと向かう。


 基本的にこの学校には女子専用の更衣室はあるが、男子用の更衣室はなくいつもは教室で着替えている。


 しかし今日は登校した人間から着替えている為教室には普通に女子の姿もあり、男子はトイレで着替えることを余儀なくされているのだ。


 男子用の更衣室も作ればいいのに、と常々思う。


 少し話が逸れたが、とりあえず俺はトイレで体操服に着替えてから教室へと戻る。


 教室に戻ると既にほとんどの生徒が着席しており皆準備万端なようだ。


「頑張ろうね、星宮くん」


 隣の席の三浦さんにもそう声をかけられて俺は「ああ」と返事を返してから自分の席へと座る。


 そしてそれから数分が経ち二宮先生が教室にやってきて、先生の指示の元グラウンドへと移動する事になった。


 クラスメイトたちは皆立ち上がって教室を出て行ったが俺はそれを眺めるだけでまだ動く気はない。


 と言うのも全てのクラスが今は移動している時間なので廊下は混み合っており正直今出て行ったところで無駄に疲れるだけだ。


 俺はそう思うと少し待ってから教室を出る事にする。


 俺と同じ考えを持っているヤツも他にいるようでまだ数人教室に……いや、あと教室に残ってるのはどうやら彩葉、早乙女、神楽のこのクラスの美少女3人娘に海斗、風間、荒井のNo.1陽キャグループだけのようだ。


 俺たち7人以外クラスから姿を消すと彩葉が近寄ってきて俺に声をかける。


「湊って確かサッカーだよね?絶対応援行くからね」


 彩葉は何をそんなに意気込んでいるのか知らないが俺に向けてそう言ってくる。


「……いや、俺試合出ないし」


 意気込んでいる様子の彩葉には悪いが、ここは正直に言わせてもらおう。


 そう、俺は試合に出ないのだ。


「……え?」


 案の定、と言うか彩葉はポカンとした様子の顔をして俺の顔を見つめてくる。


「な、なんで?」


「なんで、と言われてもな……俺はサッカーのベンチ希望したわけだし、ずっとベンチにいるつもりだぞ」


「そんなぁ……」


 何故か分からないが彩葉は勝手に項垂れている。


「サッカーのスタメンを決める時、誰よりも早く手を上げてベンチ希望してたもんね、湊」


 俺と彩葉のやり取りを聞いてた海斗が少し笑いながら口を挟んでくる。


 海斗の言葉を聞いた彩葉はパッと顔を上げてこちらを見た。


「それでも絶対応援行くからね!少しくらいは出るんでしょ?海斗」


 途中からは俺じゃなくて海斗に視線を向けながらそう確認する。


「まぁ最悪……ね」


 何やら海斗が意味深な笑みを浮かべているところを見ると同じどうせ来ないだろうと思っていた俺の出番がやってきそうで少し怖い。


 俺は余計な事するなよ、という意味も込めて海斗への視線を鋭くしたが、海斗にはそれを知らないふりして顔を背けられてしまった。


 まぁそんなこんなで球技大会前の雑談をしていたうちに廊下の方も人数が少なくなっており俺たちはグラウンドへと移動する事になった。


 その後グラウンドに着き、自分たちのクラスの列に加わるとちょうど球技大会の開会式が行われ、校長先生や教頭先生の有り難い話に耳を傾ける事になった。


 そして眠気が襲ってくる中、話を聞いていたらいつの間にか開会式も終わって、いよいよ球技大会が幕を開けたのだった。

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