表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/133

第93話 違和感

 週が明けた月曜日。


 今週の末には個人的に好きではない、というかもはや嫌いまである球技大会が控えている。


 本当に憂鬱である。


 俺はどうしたら球技大会を上手くサボれるだろうか、とかいう余計な事を考えながら朝礼が始まるまでの時間を過ごしているとクラスの扉辺りから視線を感じたのでそちらに目を向ける。


 するとそこには非常にムカつく顔でニヤけた表情をした他クラスの友里と陽毬、そして何故か顔を赤らめた様子の彩葉がチラチラとこちらを見てくる。


 一応早乙女と神楽もその近くにいるが、2人とも彩葉達の様子が少しおかしい事に頭を傾げている。


 そしてそんな女子5人にこのクラスのNo.1陽キャ男子である海斗が「皆してどうした?」って爽やか笑顔で話しかけると代表して友里がコソコソと海斗に耳打ちをする。


 そしてそこに早乙女と神楽も自らの耳を寄せて友里の言葉に耳を傾ける。


 友里が話したい事は話し終えたのか満足したような表情で海斗の耳から口を離すと海斗、早乙女、神楽の3人も非常にムカつくくらいにニヤついてこちらを見てきた。


 一体俺が何をしたというのだろうか?


 まぁどうでもいいけど海斗の後ろに控えていた荒井が海斗の耳に友里が口を寄せたあたりでムッとしていたのを俺は見逃さない。


 相変わらず分かりやすい奴だ。


 そしてその隣にいる風間は皆の様子に目を向けてから俺に視線を寄越して皆が何の話をしていたのか大体察しているようで俺に向けてニコッと笑って見せた。


 それはそれはいい笑顔である。


 そんな非常に目立つ集団が一箇所に集まればクラス中の視線も自然とそこに向かうというものである。


 加えてその目立つ人間達が皆して視線を向けたのは俺とかいうクラスでも目立たないどころか存在すら認知されているか怪しい陰キャである。


 このままでは目立つ事は避けられない、そう思った俺はあくまで皆とは関係ない風を装って机に突っ伏して寝たふりを決め込む。


 周りのクラスメイト達からはすぐに俺への興味を失ったかのような雰囲気が漂ってきて一安心する。


 ただ1人、佐藤だけは俺への視線を厳しくしたのは気づいてないフリをしよう。


 それからはすぐに二宮先生が教室に入ってきて朝礼が始まった。


 結局朝の皆して俺に視線を向けてきたのは何だったのか、という疑問は残されたが、その後は何も起きる事なく放課後まで無事に過ごすことができた。


 放課後に突入して今日も今日とて部活に精を出す。


 と言っても6月は部活の定期報告をする必要がないので部活らしい事はせず、部員は自由参加で皆で遊ぶだけなのだが。


 仮にも部活を名乗っているというのにこんな適当な活動でいいのかという疑問は出てくるが、生徒会にも何も言われないので多分構わないのだろう。


 そう自分で納得すると、部室内の適当な席に着席してスマホでネットを漁り始める。


 先にいた聖先輩は部室に入ってきた俺の姿を確認すると、何故か優しい笑顔を向けられた。


 なんでか今日はよく笑顔を向けられる気がする。


 皆して楽しい事でもあったのだろうか。


 ちなみに二宮先生は教室でもそうだったがまるで他の皆の怪しい行動に対して全く気に留めない様子で欠伸をしながらもPCを開いて自分の仕事を着々と終わらせている。


 まさか二宮先生のいつも通りの姿を見て安心する日が来るとは思わなかった。


 そしてそれから数分が経ち、他の映研の部員が皆一斉に部室へとやってきた。


 珍しい事にいつもは別々に来るはずの海斗達男子と彩葉達女子が一緒にやってきたのだ。


 そこでふと嫌な予感がよぎる。


 まさかそんな事はないと信じたいが、俺は皆にハブられているのかもしれない。


 2ヶ月前までのあまり他人と関わろうとしなかった俺だったらその程度で心を痛める事はなかったかもしれない。


 しかし今の映研の皆と関わる時間を居心地がいいと思っている俺からしたらその事実は到底認めたくないものであった。


 だけど現実とは残酷なもので俺が視線を上げるとたまたま彩葉と目が合ったが彩葉にはさっと目を逸らされてしまう。


 もしかして居心地のいい空間と思っていたのは俺だけだったのだろうか。


 俺ははぁ、とため息を吐いてまたスマホに視線を落とすと目の前で海斗にスマホを上に取り上げられるのだった。


「何す……」


 その行動に対して俺は何すんだ?と言葉を発そうととしたら、その言葉は海斗の差し出してきた袋によって遮られたのだった。


「はい、これプレゼント。この前の誕生日で誕プレ渡されなかったからね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ