表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/132

第92話 星のネックレス

 その後もショッピングモール内で色々な店舗を歩き回り続けて数時間。


 もうあたし以外の皆は湊への誕生日プレゼントを既に決めており、あたしだけがまだ湊への誕生日プレゼントを決めれないでいた。


「彩葉ももうちょっとプレゼントのハードル下げてみれば?めっちゃ湊っちの事意識しながらプレゼント選ぶのはいいけど、中々決まらないんじゃ意味ないし」


 幼馴染の陽毬はまるで呆れたものでも見るような目で視線を向けてくる。


 だけどあたしとしては湊へのプレゼントで手を抜きたくはない。


 何故なら他の人と被ったりして自分のプレゼントに対する湊からの印象が薄れてしまう事が怖いのだ。


 あたしは湊に唯一無二として意識して欲しい。


 そう思って今いる雑貨屋でこれも違う、あれも違うと首を振り続けてから店を出る。


「はぁ……」


 ここまで決まらないとため息も吐きたくなるというものだ。


 既にプレゼントが決まった他の皆は疲れたとか言ってフードコートで休んでいる為今あたしの近くにいるのは陽毬だけだ。


 もう1人の幼馴染である友里は比較的早く湊に渡すプレゼントを決めるとずっと悩んでいる状態のあたしから離れて男子たちに混ざり雑談をしていた。


 実に薄情な友人である。


 あたしはまたもショッピングモール内をフラフラと歩き始めて目についた近くの店へと入る。


 今度はどうやらアクセサリーを売っている店のようだ。


 やはりというか何というかほとんどの商品は値段が高く到底高校生に出せるものではないが、中には数千円で買える物もあり、あたしはそれらを眺めながら考え込む。


 アクセサリー系はまだ出会って2ヶ月と少ししか経っていないあたし達のような関係で贈るには少しプレゼントとして重い気がする。


 でも他の皆と比べると確実に意識してもらえそうなプレゼントである事は確かだ。


 あたしは少しの間ガラスのケースに入っているネックレスを見つめてから意を結して言葉を放った。


「あの、すみません!」


 あたしの声に反応した若い女性の店員さんが「はい!」と返事を返してからすぐに駆け寄ってきてくれる。


「このネックレス欲しいんですけど……」


 そう言ってあたしが指を差すのはガラスのケースに入った銀色の星のネックレスだ。


「かしこまりました。少々お待ちください」


 女性店員さんはあたしの欲しいものを確認してから奥へと引っ込んでいき、また少ししてから小さな箱を片手にあたしの近くまで駆け寄ってきた。


「お客様、こちらでよろしかったですか?」


「あ、はい」


 女性店員さんにそう笑顔で聞かれてあたしは即答で返事を返す。


 それに対して女性店員さんはニコッと微笑むと優しい声音で「それではお会計致しますね」と微笑みあたしをレジのところまで案内してくれた。


 あたしはお金を支払い終わり、商品を受け取ってその場を離れようとすると最後会計をしてくれた女性店員さんに声をかけられた。


「彼氏へのプレゼントですか?」


 その言葉の意味が一瞬理解できなくてあたしはボンッと赤くなると「ち、違います」と言ってから足早にその場を後にした。


 陽毬はあたしが買うものを決めたあたりで外に行っていたらしくあたしは「ごめん、お待たせ」と言って陽毬の近くに寄る。


「全然いいよー。それじゃ皆のところに戻ろっか」


 陽毬の言葉にあたしはコクリと頷くと2人並んで歩き始める。


「それで彩葉は結局何買ったんだっけ?」


「星のネックレスだよ。やっぱ湊へのプレゼントに手を抜きたくないし、これだと湊にも似合いそうだしさ。それに……なんか特別感あるじゃん?」


 あたしが少しはにかみながらそう言葉を発すると陽毬は一瞬驚いた顔をしてブツブツと独り言を呟き始めた。


「星のネックレス……確かネックレスをプレゼントする意味は離したくないという独占欲の表れ。そして星のネックレスの場合、希望、夢、光とかの明るい意味。昔子役をやってた湊っちにはピッタリのプレゼント。まぁこの様子だと彩葉は分かってなさそうだけど」


 あたしは陽毬の言葉が小声すぎて聞きとれず、「どした?陽毬」と声をかけると陽毬はハッとした表情をして首を横に振った。


「ううん、何でもないよ!そのプレゼント湊っちには絶対似合うと思う!」


 陽毬はさっきまでとは打って変わってにこやかな表情で笑顔を向けてきたのであたしも「だよね!」と陽毬の言葉に同意してニコッと笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ