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第91話 2つの恋

 6月もあともう少しで終わるという最後の日曜日。


 あたし達はこの前湊と2人で来たショッピングモールへと来ていた。


 と言うのも目的は勿論湊への誕生日プレゼントを買うため。


 あたしも聞き忘れていたとは言え、湊ももっと直前とかに誕生日アピールをして欲しかったとは思う。


 できれば当日に誕プレを渡したかった。


 でも今更言ってもしょうがないので頭を切り替えて今日は明日手渡す予定のプレゼントを何時間かかってでも厳選するつもりだ。


 今日あたしと同じ目的でショッピングモールに集まったメンバーはあたしを含めて聖先輩、友里、陽毬、海斗、健人、そして何故かついて来た秀の合計7人である。


 結構な大所帯になった。


 ちなみに秀に関しては既に湊に誕プレを渡しているがあたし達が今度湊の誕プレを買いに行こうと言う話をしていたらなんか面白がって勝手についてきた。


 こう見ると皆美男美女ばかりな上にそれなりに知名度が高い人間もいるので周りからの視線が集まってくるがこれは仕方のない事だろう。


 あたし達は全員集合したところで「じゃあ行こっか」と言う聖先輩の引率の元歩き始めた。


 最初に来た店は洋服屋である。


 と言っても服は秀がこの前渡していた誕プレと被るし、あたしの中で誕プレとしての案は却下された。


 だけど単純に服を見て回る事自体は好きなので色々な服を見ては試着してみる。


「ねね、これ彩葉に似合いそう!」


 そう言って陽毬が持ってきたのは少し肩と腹が露出する衣装だった。


 あたしはそれを見た瞬間じっくり眺めて少しの間考え込む。


「……ねぇ陽毬。湊ってさ露出度の高い衣装って好きだと思う?」


「まぁ男子で嫌いな人はいないと思うよ」


 この瞬間あたしの中でこの衣装を買う事は決定してしまった。


「陽毬、それちょうだい。今すぐ買ってくる」


 そう言って陽毬から奪い取るようにその服を手にすると会計のレジに並んで購入してしまった。


 あたしが会計を終えて陽毬のところに戻ると友里と陽毬がなんかニヤニヤした顔をしてこちらを見てくる。


「彩葉もついに大人の階段登るんだね」


「彩葉が誕生日プレゼントはあ・た・しって言ってくれたら湊っちも大喜びするんじゃない?」


「は、はぁ!?そんなことするわけないし!まぁ次デートする時には着ようと思うけど……」


 あたしは思わずと言った風に声を荒げた後最後はポロっと本音が出てしまった。


「まぁ冗談は置いておいて、あたしとしても湊には感謝してるんだよね。彩葉は前まで少しトゲトゲしてたのに4月に湊に話を聞いてもらってからそのトゲがなくなったって言うか、さ。それ以来あたしらのクラスでも彩葉の事可愛いって言う男子増えたんだよね。まぁあたしとしては湊と彩葉のカップリングしか応援する気ないんだけどね」


 そう言って笑いながら話す友里は本当に楽しそうだった。


 中学であたしが大きな失敗をした時からこの2人はずっとあたしの事を心配してくれていたのでこうやって笑ってくれるというのはあたしが変われたという何よりの証拠だろう。


「……友里は人の恋応援する前にまずは自分の恋成就させる方が大事じゃない?」


 友里が結構いい感じの事言った後でそれを茶化すように陽毬が割って入る。


 友里はそんな陽毬の言葉に取り乱すかのように声が大きくなる。


「は、はぁ!?別にあたしは誰にも恋してないから!!適当な事言わないでくれる!?」


「もぅ〜、そんな事言っちゃって〜!この前のテスト勉強してた時から友里が健人の事目で追ってるの分かってるんだからね!」


 へぇ、そうなんだ。


 あたしは知らなかったけど友里は健人の事意識してたんだ。


「みんな友里の気持ちに気づいてるよ。気づいていないのは健人本人と彩葉くらいじゃない?」


 ……え、そうなんだ。


 まさかあたしは健人と同レベルで鈍感だったとは自分でも思わなかった。


 でもそれ以上に友里は驚いた様子を見せて陽毬に反論をしようと試みる。


「で、でも!湊とかも気づいてなさそうじゃん!実際彩葉の気持ちにも鈍感だし!」


「んーそれ言われると少し困るんだけど、でもウチの意見としては湊っちは演技が上手いから気づいていないフリしてるだけだと思うんだよね」


 その言葉に友里は愕然とした表情となり陽毬に聞き返す。


「……マ、マジ?」


 その言葉に対して陽毬はそれはいい笑顔で「マジマジ」と応えてから少しだけ自分を擁護するよう言葉を発する。


「まぁと言っても五分五分だけどね。湊っちは顔に出ないから本当に分かりにくいけど。なんせ彩葉の気持ちにすらうっすらと気づいていて気づいてないフリをしている可能性はあるし」


 あたしはそれを聞いて顔面蒼白になる。


 あたしは今まで湊の事を鈍感男だったと思っていたけど評価を改めなければならないかもしれない。


「こんなのは今気にしてもしょうがないし、今はショッピングを楽しも!もう既に皆この店には用がないようだし、入り口の方に集まってるから2人とも行こ!」


 陽毬はさっきまでの小悪魔的な笑みはすっかりと消えており、あたしと友里の手を引っ張って皆の方へと向かう。


 あたしは自信の引っ張られる手を見てから友里の方を向き顔合わせてから口パクで「お互い頑張ろうね」と音のない言葉を発する。


 その言葉はちゃんと友里にも伝わったようで友里はコクッと頷いてから笑顔を見せた。


 それから皆と集合したけど結局誰も手に袋をかけておらず、服を買ったのはあたしだけだったようだ。


 絶対今度この服で湊をメロメロにしてやる、そうあたしは心の中で思いまた歩き出した。

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