第78話 人狼ゲーム(後編)
さっきまでとは打って変わってシーンと静まり返った部室内。
人狼ゲームの最初の話し合いが始まったはいいものの皆が皆、お互いの顔色を伺って誰も自分から口を開こうとはしない。
人狼ゲームというのは一見簡単な推理ゲームのように思えるが、ほとんどの人間が普段はやらないせいかあまり人狼ゲームの進行の仕方を理解してないのだろう。
そういう俺も実はあまり人狼ゲームの経験がなく、このままでは埒が開かないとは思いつつもどう行動すればいいのか分からない。
そんなこんなで貴重な1分が過ぎようという時にようやく風間が最初に口を開いた。
「えーと、皆でダンマリというのも何だしさ、とりあえず占い師の人は誰?」
そう風間が皆に問いかけると聖先輩、彩葉、友里、海斗、荒井の5人が手を挙げた。
占い師1人に対して5人出るのはあまりにも多い。多すぎる。
「じゃあそれぞれの初日の結果は?」
流石は進行役を買って出た風間だ。
占い師が多く出た事にあまり動揺する事なく、それぞれの占い結果を求める。
「私は荒井くん市民だったよ」
「あたしは湊が市民だった」
「あたしは秀が市民って出た!」
「僕は神楽さんが市民だったよ」
「俺は陽毬が市民だったな」
全員が全員怪しい動きをせずに、結果を報告する。
結果をまとめると、聖先輩が荒井、彩葉が俺、友里が風間、海斗が神楽、荒井が陽毬にそれぞれ市民という結果を出している。
正直勘だけで言うなら個人的には荒井が1番本物の占い師に見える。
理由としては荒井が偽だったとして占い師を騙るなんていう器用な真似ができるとは到底思えないという単純なものだ。
俺もずっと黙ったままでは怪しまれるのでとりあえず言葉を発する。
「まぁ今日は占い師から処刑でいいんじゃないか?俺個人としては結構海斗が怪しいと思ってる」
俺はそう率直な意見を述べると海斗はあまり笑顔を崩さずにいつも通りの表情で疑問をぶつけてきた。
「何で僕が怪しいか理由教えてもらってもいいかな?」
「ただの勘」
「……それは酷くない?」
適当に答えたら海斗にジト目を向けられてしまった。
「まぁ勘というのは半分冗談だけど、他に目を向けた場合荒井と彩葉はなんか偽物だった場合もっと分かりやすいと思うしな。それ以外の聖先輩と友里と海斗のうちから適当に処刑すれば人狼陣営処刑できるんじゃないか戦法ってところだ。ちなみに反対はいるか?」
俺が全体を見回して聞いてみたところどうやら反対意見は内容だったので今日の処刑者は決まった。
それからは処刑者が決まったという事で時間を待たずに処刑執行されて、夜を迎えて各役職の行動が行われて朝になった。
「2日目の朝になりました。今日は早乙女が死体となって発見されました。それでは5分間の話し合いを始めてください」
……。
昨日は無害だった早乙女さんが残酷にも殺されてしまった。
早乙女さんも「え、あーし?」という感じで驚きに目を見開いている。
しかし起こってしまったものは仕方ないので早乙女さんの死を無駄にしないためにも市民陣営を勝利に導かなければならない。
「じゃあ今日の占い結果もよろしくね」
昨日と同じく風間が進行役として占い結果を聞く。
「私は風間くん市民だったよ」
「あたしは陽毬市民だった」
「俺は友里市民だったぞ」
今回の結果は聖先輩が風間、友里が陽毬、荒井が友里に市民と結果が出たようだが、昨日占い師と手を挙げていた1人の彩葉が結果を言わないので全員の視線が集まる。
「えーと、ごめん!あたし実は占い師じゃなくて霊媒師だったんよね。それで占いに出とけば処刑されないかもって思って占い師騙ってたって感じ。ちなみに海斗は人狼じゃなかったよ」
どうやら対抗もいないようなので彩葉は本物の霊媒師らしい。
ここからは彩葉に進行をやってもらう事になる。
「それじゃ彩葉が処刑したい位置決めてくれ」
俺がそう言うと彩葉はいつも以上に真剣な顔になり1人で考え込み始める。
そしてしばらくするとようやく思考する時間が終わったのか口を開いた。
「じゃあ今日は占い以外から処刑します!って事でマジごめんけど三浦さん処刑されてくれる?」
「え、私!?全然いいよ。あんま役に立てそうにないし」
不幸にも三浦さんが処刑対象に選ばれてしまったが、人狼ゲームが始まってからあまり喋れてないようだったので本人は早く退場できる事に安堵しているようだ。
その後は昨日と同じように時間待たずに処刑執行が行われて夜を迎えた。
夜になると二宮先生の各役職の行動の確認が行われ、3日目の朝を迎えた。
「3日目の朝になりました。今日は如月が死体となって発見されました。それでは5分間の話し合いを始めてください」
二宮先生の言葉を聞き、ガーンという顔をしながら固まってしまった陽毬。
もう既に海斗や早乙女、三浦さんの死人組は教室の端の方でトランプをし始めておりそこに陽毬はテケテケと歩きながら混ぜてもらいにいった。
今生存している人間は俺、聖先輩、風間、荒井、彩葉、友里、神楽の7名だ。
「えっと、三浦さんは人狼じゃなかったです。マジでごめん!」
彩葉が結果報告と同時にみんなに頭を下げるがそれを咎める者はここにはいない。
それにしても海斗は十中八九狂人か狂信者だと思うが、今の所1人しか人狼陣営を処刑できていないのは結構痛い。
今日人狼陣営を処刑できなかった場合、明日には市民陣営が2人、人狼陣営が3人で人狼側のパワープレイに持ち込まれて市民陣営の敗北が決定づけられる。
俺は何とか人狼を炙り出す方法を考えてみるが人狼ゲーム初心者なためあまり良案が思いつかない。
そんな事を思っていたら突然聖先輩が「はい!はい!」とアピールし始めてなんだ、と思い全員顔をそっちに向ける。
「湊くん人狼だった!」
その言葉に俺は愕然とする。
もちろん俺は人狼なんかではないなのでこれは完全に聖先輩の策というわけになる。
「え、いや俺は人狼じゃないですよ」
俺はこれしか言えないが、聖先輩相手に口で勝てる気は一切しない。
この人は何気に頭いいのだ。
「湊くんを占った理由はなんか初日とか結構存在感発揮していたのに2日目では一気に影薄くなったしそういうのが怪しかったんだよね。神楽さんとかもどう思う?」
ここで先輩は占い理由を話すと同時にあまり話し合いの輪に入れていなかった神楽に話を振る。
こんな話の振られ方をすれば神楽としても頷くしかないだろう。
変な答え方をすれば自分が怪しまれる可能性もある。
「……私も星宮くんは怪しいかと思います」
神楽の同意を得られたからか先輩は勝ちを確信したような得意げな顔へと変化した。
そして何の反論もできなかった俺は素直に処刑される事になり、夜の時間で神楽が噛まれて4日目を迎えた。
4日目はまるで作業のような感じだった。
友里が自分は狂信者だという事を明かし、人狼だった風間と聖先輩が人狼側のパワープレイで彩葉を処刑して見事人狼陣営が勝利を飾った。
役職の内訳は占い師は荒井、霊媒師は彩葉、狩人は神楽、狂人は海斗、狂信者が友里、風間と聖先輩が人狼でそれ以外の俺、陽毬、三浦さん、早乙女が市民だった。
1回やっただけで結構疲れたなぁとか思ってたら皆このゲームにハマりでもう1回やるようで再度聖先輩がカードを配り始めている。
俺は袋の空いたポテチを摘みながら再度自分にカードが配られるのを待つ。
映画研究部はたとえ遊びであろうとそれに全力を尽くし全力で楽しもうとするから俺はそんな空間が好きになっているのだ。
改めてこの部活に所属して心の底から良かったと思う。
そうして俺たちはその後日が暮れるまでテストの打ち上げ会を続けるのだった。




