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第73話 テスト前

 週明けの月曜日、今日も今日とて俺たち映画研究部は勉強に精を出す。


 今週の木曜日と金曜日で中間テストが行われるからか最後の追い込みだからか皆の集中力が極限状態まで高まっている気がする。


 先週まで余裕をこいていた勉強出来る組の海斗と風間も教科書とノートを開いて机に向かっている。


 一瞬右隣から視線を感じてふと顔を上げると彩葉がこちらを見つめており視線がぶつかる。しかし彩葉はすぐに顔を伏せまた勉強に取り掛かり始めた。


 その様子に俺はハテナを頭に浮かべるが、反対側の聖先輩に教科書で「よそ見してる暇ないよね?」と軽く頭を叩かれる。


 俺は不可抗力だ、と思いながらも再度教科書と睨めっこを始める。


 隣で聖先輩が勉強を見てくれるだけで心強いというものだ。


 それから2時間ほどで勉強会も終わり、帰りにいつも通り彩葉とオーディションの練習を少しだけやってから20時過ぎに家に帰宅する。


「ただいま」


 そう大声を出しながら靴を脱いでいると、リビングの方から「おかえり」という声が2つ聞こえてくる。


 最近では慣れてきたがルナの「おかえり」という言葉が聞けるだけで俺はなんか嬉しく感じる。


 リビングに入るとちょうど夕飯を母さんが用意してくれていたようで2人で俺が席に着くのを待っていてくれたみたいだ。


 俺が席に着席すると同時に3人で手を合わせて食事が開始される。


 今日の夕飯はデミグラスハンバーグにサラダ、味噌汁と白米という一般の家庭だと比較的よくありそうなメニューだ。


 俺はハンバーグを一口サイズに切ってから口に放り込んでから白米をかき込む。


 やはり一般家庭では王道のメニューと言ってます母さんが作るハンバーグは1番美味しいと断言できる。


 俺がそんな風に1人感極まっていたところで母さんが俺の方を見ながら口を開いた。


「そう言えば湊くん、今週テストよね?勉強はどう?」


 突然そう聞かれた俺はあまり母を心配させたくないのもあって無難に答えた。


「あぁ全然問題ない。部活の仲間も親切に教えてくれるしな。赤点は免れると思うぞ」


「……まぁ本音を言うと高得点を取ってほしいけど、湊くんは昔から勉強得意じゃないものね。赤点取らないだけマシと思うようにするわね」


 母さんは何やら呆れたような顔つきでため息をつく。


 それにしてもこれで赤点を取ってしまった暁には珍しく母さんの雷が落ちる事だろう。


 俺は赤点だけでは絶対に取らないようにしよう、とこの時心に決めた。


 母さんの顔はすぐに元のにこやかな表情へと戻り次は妹のルナへと視線を移す。


「ルナちゃんは最近どう?モデル活動上手くいってる?」


「ん?まぁまぁ上手く行ってるよ。今週もドラマのオーディション受けに行くし」


 ん?ドラマのオーディション?


 少し前に新城監督の映画の撮影のために何日か家を空けていた事は記憶に新しい。


 にしてもドラマのオーディションか。


 最近よくその単語を耳にする気がする。


 まぁ多分偶然だろうが。


 俺も妹の活動には少し興味があるためお茶を注いてからそれを口に含み耳を傾ける。


「それで確かあたしの受けるオーディションは…………あ、思い出した。『それでも君に恋をする』ってタイトルだった気がする!」


「ブフォォォォ」


 俺は思わず口に入ってたお茶を吹き出してしまう。


「ゲホッゲホッゴホッガハッ」


 そして思いっきりむせてしまった。


「ちょっと、お兄ちゃん大丈夫?」


「あ、ああ、大丈夫だ」


「湊くん、ちょっとはしたないから気をつけなさい」


「うっ、ごめん、母さん」


 俺は一旦落ち着き気を取り直してから妹の言葉を振り返る。


 確か妹は『それでも君に恋をする』という題名のドラマのオーディションを受けるとか言っていた。


 しかしなんと偶然な事に彩葉も同じオーディションを受けるのだ。


 流石に受ける役は違うだろうけど、この2人の共演が見られる可能性があるなら少し楽しみだ。


「そう言えばもう主人公役とヒロイン役決まってるみたいなんだよね。主人公役は若林凪(わかばやしなぎ)でヒロイン役は白石麗華だって」


 突如またルナから重大な発表をさらっとやられて俺は再度口から茶を吹きそうになるが母さんの目線がキツくなったのでなんとか耐える事に成功した。


 それにしてもオーディション受かったら彩葉は白石麗華と一緒に演技するのか。


 若林?という方は知らんが、白石に関しては俺と似て怪物じみた演技をするしメンタルがやられないかは不安だな。


 まぁでもまずはオーディション受からない事には始まらないな。


 俺は今考えても仕方がないと思い直す事にして、その後すぐ夕飯を食べ終え母さんと妹に勉強してくる事だけを伝えてから今日は夜遅くまで机に齧り付いてテスト範囲を頭に詰め込むのだった。

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