表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/132

第70話 ゲームセンターデート

 佐藤たちと会うというイレギュラーは発生したが、俺たちは気を取り直して今いるショッピングモールの3階にあるゲームセンターに来ていた。


 ルナと出掛けた時もそうだったが、正直俺は女子と出掛けるとなるとどこに行けば良いかが分からない。


 なのでとりあえずゲーセンに連れてきてみた。


 まぁ人によってはこういうのをオタクっぽいと忌避する女子もいるかもしれないが、ルナゲーセンにいた時に偶然会った彩葉の反応的にそこまでゲーセンを嫌ってはいなさそうなので大丈夫だろう、と思う。


 さっきの出来事のせいで未だに顔が晴れない様子の彩葉に俺ははぁ、とため息を吐いてから声をかける。


「……さっきは悪かったな、彩葉」


「え?」


 俺の突然の謝罪に彩葉はポカンという顔をする。


「いや彩葉の顔が暗いのって俺があの場を離れたからだろ?」


「まぁそうだけど……でもあたしに湊の行動を強制する権利はないし……」


「確かにそうだけど、女の顔を暗くしたままだと男が廃るってもんだろ?」


 俺がそう言うと彩葉は少し頬を照らしながら「……バカ」と呟く。


 何がバカなのかはこの際聞かずに、俺は自分の言いたい事だけを述べる。


「今度佐藤たちに絡まれたらその時は逃げずに言い返すようにする。彩葉は俺の友達だ、友達といて何が悪いってな」


「でもそうすると湊が目をつけられるんじゃ……」


 彩葉は俺が目立ちたくない事を知っている為そこのことを心配してくれているのだろう。


 しかしおそらくそれは杞憂で終わる。


「まぁ確かにな。でも俺は正直その心配はしていない」


 何故なら鈴木と田中に関しては知らないが、あの佐藤という男はただ単に彩葉に恋をしているだけだ。


 そして卑怯な手を使うヤツじゃないって事は目を見たら分かる。


 おそらく根は真面目なヤツだ。だからこそ彩葉の周りにウロチョロしているように見えた俺という悪い虫を排除したかったのだろう。


 頭にハテナを浮かべた様子の彩葉に俺は意味深の笑みを向けてからゲーセンへと足を進めた。


「よしそれじゃ気を取り直してゲームするか。彩葉は最初何したい?」


 今日は休日という事もあって沢山の学生で賑わっているゲーセンへと入り、後ろを振り返りもう先程の暗い表情ではなくなった彩葉に問いかける。


「んーあたしはレースゲームやってみたいかも。ゲーセンとかあまり来ないけど結構みんなあれやってるよね」


 予想通り彩葉はゲーセンの経験が少ないらしく、周りの色々なゲーム機を見回しながらぱっと思いついたであろうゲームを答えた。


 俺は彩葉の要望に頷くとまずレースゲームの筐体がある場所へと向かう。


 幸いにもそこには全部で4つある筐体のうち2つは埋まっていたが、もう2つは空いていたので俺たちは並んで座った。


 そしてそれぞれ100円を投入してからゲームがスタートする。


「これどのキャラが強いとかあるん?」


 彩葉はキャラ選択画面を見ながらそう質問をぶつけてくる。


「まぁあるっちゃあるが普通に見た目で決めて良いと思うぞ」


「ふーん、じゃあ可愛いしこの子にしよ」


 そう言って彩葉が選択したのは謎に二足歩行している黒猫のキャラクターだった。


 ちなみに俺はこのゲームでいつも使っている狼男を選択した。


 このゲームはハロウィンをテーマにしているところがあって基本的にキャラクターはハロウィンっぽいキャラクターばかりである。


 そしてお互い適当に車を選択してからいよいよレースのスタートのカウントダウンが始まる。


 一瞬隣の彩葉に視線を向けると初めてで緊張しているのか少し手が震えている。


 そのいつもの彩葉とは違う様子が少し可愛くて思わず笑みを浮かべてしまう。


 しかしそんなことをしている合間にいつの間にかレースが始まっており、俺は盛大に出遅れてしまった。


 慌ててアクセルを踏むが時すでに遅し。


 だいぶ出遅れた俺は結果12着という最下位で終わってしまった。


 9着というギリギリ一桁順位だった彩葉には「どしたん?」と笑われてしまったので俺は次のレースで1着を取り汚名を返上した。


 隣の彩葉に「すごっ」と尊敬の眼差しを向けられるのは心地いい。


 その後も1着を2回連続で取り、合計4戦やった結果は12着、1着、1着、1着で総合でも1着を取ることができた。


 彩葉もやっているうちに結構上達しており、9着、7着、4着、3着と目に分かるように順位を上げていき、総合順位は5着だった。


 次やったら負けるかもしれないと思いながらも俺は「またやるか?」と聞いてみる。


 すると彩葉は少し考えるそぶりを見せてから首を振ってから答えた。


「別にこのゲームも面白かったんだけど、あっちにある太鼓のゲームやってみたいかも」


 その言葉に俺は頷いてから2人で太鼓のリズムゲームのところへと向かう。


 俺たちは100円を突入口に入れてからバチを構える。


 そして曲選択画面が表示されると2人で言葉を交わしながらお互いの知っている曲を選択する。


 難易度も4段階あり、上から特級、上級、中級、初級となっている。


 俺はこのゲームには結構自信あるので迷わず1番上の特級を選択したが、彩葉は自信ないのか1番下の初球を選択していた。


 2人が難易度を選択し終わるといよいよ曲が始まる。


 俺は画面を見ながらドンッとカッを正確に叩き始める。


 それから少しして曲が思ったより短い事もあってすぐに曲が終わった。


 途中危険なところがいくつかあったが、それでもなんとかフルコンボを取る事ができた。


 隣を見てみるとそこには項垂れた様子の彩葉が立っていた。


 どうしたんだ、と思いもう一度画面に視線を向けるとちょうど演奏画面からスコア画面へと表示が変わった。


 俺は気になって彩葉のスコアを見てみるとまさかのスコア0。


 初級レベルでこれほど下手な人間は見た事がない。


 このゲームは100円で2曲遊べるのであと1曲残っている事になる。


 このままでは彩葉は楽しめないと思った俺は自分のバチを元の場所に仕舞ってから彩葉の後ろへと回り込む。


 最初彩葉には疑問顔されたが気にせず俺は彩葉の手に触れる。


「悪いな」


「……ッ!」


 彩葉の顔が徐々に赤面していくのが後ろからでも分かる。


「今度は一緒にやるぞ。その方が多分楽しめるし」


 そう口に出してから俺は自身の手で彩葉の手を覆うように包み、一緒にバチを持つ。


 曲の選択も終わり、難易度もさっきと同じ初球に選択してから曲がスタートする。


 特級に比べると明らかに簡単で俺は彩葉と共にフルコンを達成する事ができた。


 終わってみるとさっきとは違い高得点を取れた喜びからか彩葉も比較的満足した様子を見せていた。


 俺は曲も終わったしと彩葉の手から自分の手を離すと少し彩葉に名残惜しそうな目を向けられたが多分気のせいだろう。


 それからは2人でホッケー対決をしたり、釣りのゲームでスコアを競ったりして過ごした。


 楽しい時間というのはあっという間で気づくと17時を回っていた。


 俺はそろそろいい時間だし、と思い彩葉に「帰るか?」と聞くと彩葉は首をフルフルと横に振ってから言葉を発した。


「ねぇせっかくだしプリクラ撮ろ?」


 ルナの時も思ったが女子は何故かプリクラが好きなんだよな。


 特に拒否する理由もないので俺はそれに了承してからプリクラ機のある場所へと足を向けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ