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元天才子役だった俺は平穏な高校生活を謳歌したい  作者: 86
第2章

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第68話 待ち合わせ

 14時を迎えた俺はバイトを上がり、更衣室で着替えてから急いで家に帰る。


 舞はあれから1時間程で「また来ますね」とだけ告げて退店して行った。


 なんだかんだ受験生な為何かと勉強で忙しいのだろう。志望校がどこかは教えられてないが、さりげなく受験が成功する事を応援している。


 家に帰った俺はすぐにバイトの鞄を置き、小さめのワンショルダーバッグに財布や鍵等の必要な物を入れてそれを肩からかける。


 一瞬お洒落という意味で眼鏡をコンタクトに変えようか迷ったが、身バレする可能性が完全にないとは否定できないのでコンタクトはする事なく家を出る。


 幸いな事に待ち合わせの約束の公園は家から近いので遅れる事はなさそうだ。


 俺が走って公園に向かうと公園の入り口付近に既に彩葉が待っており、俺は少し待たせて申し訳ないな、と思いながら声をかける。


「すまん、待ったか?」


「え?全然待ってないから大丈夫!てかバイトだったんでしょ?お疲れ様!」


 そう言う彩葉は俺の為を思って笑顔を繕ってくれているが、服に汗が結構染み付いている事から少なくともそれなりの時間待っていたのだろう。


 俺は彩葉に「少し待ってろ」とだけ言って、公園内にある自販機でペットボトルの緑茶を購入し、それを彩葉に手渡す。


「ほい、暑かったろ?お詫びだ」


「え、全然気にしなくていいのに!まぁでもありがたく貰っとこうかな」


 彩葉は本当に暑そうにしながらペットボトルに口をつけてゴクゴクと勢いよく飲み始める。


「ん〜、マジで生き返る!今日本当暑いよね!あ、湊もいる?」


「……有り難く貰おうかな」


 彩葉が自然とそう言って来た為俺も何も気にせずにペットボトルを受け取ってそれに口をつける。


 しかしそこで彩葉が何かに気づいたように「あっ」と声に出してから頬を赤らめていく。


 俺は最初それに対して何で頬が赤くなったのか疑問だったが、よく考えれば今間接キスしてる事に気づき釣られるように俺も頬を赤らめた。


「じゃ、じゃあ行こっか」


「あ、ああそうだな」


 俺と彩葉は少し気まずくなりながらその場から歩き出した。


「今日はどこ行くんだ?」


 公園から歩き出して数分、もうそろそろ先ほどの気まずさも無くなってきたあたりで俺は彩葉に聞いてみる。


「んーとね、今日はショッピングモール行こっかなって思ってるけど湊ご飯まだでしょ?先に近くのカフェ行こ」


 そこでタイミングを見計ってたように腹からぐぅと音が鳴る。


 その様子に彩葉は笑みを浮かべてこちらを見てきたので、俺は再度気恥ずかしくなりとりあえず頷く事にした。


「……ああ、そうだな」


 彩葉がスマホに入っているマップアプリで近くのカフェを検索し、表示された中で一番近いところに向かう。


 目的のカフェにはわずか5分ほどで到着して、入ると美人な店員さんに案内されて席に着く。


 バイト先のbelieveと比較してみると店内は広く結構繁盛しているようだ。


 俺たちは席に着いてメニューを広げる。


「彩葉は何にする?」


「んー、じゃあサンドウィッチにしようかな。あまり量は要らないし」


「そうか、俺はミートソースのスパゲッティに決まったし、店員呼ぶな」


 それから近くに通りかかった店員に声をかけて注文を済ませる。


 俺も彩葉も今はドリンクはいらないという事でお冷やで我慢する事にした。


「そう言えば彩葉も昼食取ってなかったんだな」


「まぁね、てか湊が多分お昼食べずに来るんだろうなって予想してたからあたしも食べなかったんだよね」


「そうなのか……ってよく俺が昼食食べずに来るって分かったな」


「それはもちろん湊がバイトある事知ってたし、湊は人を待たせてご飯食べてくるような人間とは思ってないからね」


 そう言ってにこやかに笑う彩葉に俺は信用されてるんだな、と安心する。


「まだ出会ってから2ヶ月しか経ってないのに俺の事よく知ってるな」


 思わずと言った形で出てしまった一言に彩葉は少し遠い目をする。


「まだ2ヶ月、か。4月と5月で結構濃い時間過ごしたからもっと昔からの知り合いのように思えるよね」


「……そうだな。二宮先生、風間、荒井、友里、陽毬が部活に参加してからまだ1ヶ月しか経ってないんだよな」


 俺もたった1ヶ月前のことなのにもう遠い昔のように思えてきて少し懐かしい目になる。


「まだまだこれからも出会いあるだろうし、映研の皆と色々やったりするのも楽しみだよね」


 そう言ってはにかむ姿を見せる彩葉に俺は思わず見惚れてしまったが、すぐに「そうだな」と頷いた。


 それからすぐに注文した料理が届いて俺たちは食事を始める。


 俺が注文したミートソースのスパゲッティは安定した美味しさであり、万人受けするだろう味だった。


 特別美味しいわけでもないのに何故か安心する味になっているのが不思議だ。


 俺が5分ほどでスパゲッティを平らげるとまだ食事中だった彩葉に驚きで目を開かれてしまった。


「え、食べるの早くない?」


 それに対して俺は首を傾げながら応えた。


「……いや男はみんなこんなもんだろ?」


 そして彩葉がサンドウィッチを食べ終わってから別にここに長居する必要もないという事で席を立ち上がり会計をした。


 ちなみに会計は全て俺が支払った。


 彩葉も財布を取り出してちゃんと払ってくれようとしたが、今日暑い中待たせてたのが申し訳なかったので俺が全額支払う事にしたのだ。


 ほぼ無理やりという形で俺が支払った為彩葉は少し不満そうな顔をしていたが、今度何か奢ってもらうという形で納得してくれた。


 そして店の外に出た俺たちはまた日照りに照らされたまま今日の目的地とも言えるショッピングモールへと向かうのだった。

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