第65話 不穏な空気
翌日、学校に登校すると昨日放課後に階段で話していた声の主と思われる3人組が俺に視線を寄越したが、俺は気づかないフリをして自分の席へと座った。
てっきり授業と授業の合間にある10分間の休憩時間で何かアクションを起こしてくるのかと思っていたが、ただ視線を向けてくるだけで特に何のアクションも起こしてくる事はなく、そのまま昼休みへと突入した。
「……星宮くんも大変だね」
ほぼ毎回の休憩時間に陽キャの3人組から視線を向けられるからか、隣の席の三浦萌音さんにも同情したような目を向けられてしまう。
俺はそれに対して「……そうだな」と苦笑いしながら応えて、腰をあげようとする。
しかしその時今までは見ているだけで無害だった3人組が直接行動に出た。
俺の机の前に突然寄ってくると、1番目つきの鋭い男がドンッと大きな音を立てて机に手をつく。
それなりに大きな音が響いたせいかクラスにいる周りの視線が一斉に集まる。
少し離れた場所で談笑していた彩葉のグループや海斗、風間、荒井の3人も心配そうな顔でこちらを見てくる。
隣にいる三浦さんもビクッと体を強張らせて少し怯えた表情で3人組に視線を送っている。
この3人は女子を怖がらせている事に気づいているのだろうか?と心の中で思いつつも、カースト上位の人間を変に刺激はしたくないのであくまで冷静に対応するよう心がける。
「えっと、何か用ですか?てか誰でしたっけ?」
俺の言葉のどこにツボったのか隣にいる三浦さんはクスクスと笑い始める。
反対に前にいる3人は眉間に皺を寄せながら自分たちの名前を告げる。
「ちっ、佐藤だ。同じクラスの人間の名前くらい覚えていろ」
「俺は鈴木。てかお前友達いないっしょ」
「鈴木、そう言う事は思っても口に出すんじゃない。それで俺は田中だ。今回は一応聞きたいことがあって少しだけ時間いいか?」
第一印象で言えば、佐藤がこの3人の中心人物らしいが、1番常識ありそうなのは田中って感じだ。
鈴木に関しては論外で、人を小馬鹿にしたような態度をしているので気にしないようにしよう。
ちなみに佐藤は昨日階段で2人に話題を振っていた張本人である。
俺はこの3人が何を言いにきたのか大体想像できるが、知らないフリをして話を促す。
「……それで用件は?」
「お前、七瀬さんと仲良いだろ?自分が釣り合ってるとでも思ってるのか?」
俺は比較的穏便に済まそうと口を開いたのだが、佐藤はそんな事にも気づかず最初から喧嘩腰で睨みつけてきた。
お前らもせいぜいクラスの男子の中では2番手のグループだし、海斗たちが口出せば引き下がるんだろ、とは思ったがそんな火種になるような事は言わずあくまでどこにでもいる陰キャを演じる。
「別に釣り合ってるとかは思ってません。ただ部活が一緒なので同じ時間を過ごす事が多いだけで……」
「ふーん、なら別に好きじゃないんだな?」
佐藤は少し嬉しそうにそう聞いてくる。
「はい、俺は彼女の事恋愛対象としては見てないので安心してください」
俺は完璧に否定して見せるが、何故だろう。少しだけ胸の奥が痛く感じる。
「ほら、言ったじゃねえか!絶対こんな陰キャなわけないって!」
「まぁ結果論で言えば星宮ではなかったが、じゃあ七瀬の好きな人は誰になるんだって話になるな」
佐藤は俺の返答に少し納得してないような感じだったが、他の2人はまるで疑いもせずすぐに信じ込んでくれて最後までこちらを睨みつけていた佐藤を連れて席に戻って行った。
クラスの皆ももう俺たちに興味ないのかすぐに自分たちの話題へと戻っていく。
俺はこれでようやく食堂に行けると思い、教室を出ようとすると彩葉が少し寂しそうな表情でこちらを向いてる事に気づく。
彩葉には悪いと思いつつも俺はこの学校では目立ちたくない。
その為には彩葉や海斗と仲が良いと思われてはいけないのだ。




