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第64話 噂

 俺はとりあえず数学Iの問題集を広げて、中間テストの範囲になってる問題を片っ端から解き始めてみる。


 まだ高校でも最初の方なだけあって、俺でもギリ着いていけてるレベルだ。


 問題集の最初のページから順に解き始め、案外楽に最初の中間テストは突破できそうだな、と思って顔を上げてみると正面に座っている荒井が難しい顔をしながら友里から英語の指導を受けている。


「だからここ違うって言ってるでしょ!さっきも同じ間違いしてたじゃん!何で分からないの!?」


「いやそんな事言われても分かんねえものは分かんねえんだよ!」


 もはや口論になりつつある2人の会話を聞き流しながら俺の右隣に視線を移すとそこには彩葉と陽毬が真剣な表情で二宮先生の教えを受けていた。


 二宮先生も普段は適当にしているが、生徒に頼まれれば勉強を教えてくれるところはちゃんと教室なんだな、と思えてくる。


 勉強ができる系男子の海斗と風間の2人は形だけ皆と同じように席に着いたものの海斗は難しそうな本を取り出してそれを読み始め、風間はスマホでEMというオープンワールドゲームをやり始めている。


 2人ともあまり中間テストの点数を低く取る心配が無さそうで羨ましい限りだ。


 俺は気を取り直して自分の勉強に取り掛かろうと思った瞬間、左隣からじーっと見られている事に気づいた。


「……今の湊くんに他の人を気にする余裕あるの?」


「……ないです、先輩」


 一応俺につきっきりで教えてくれる聖先輩に注意され、それから俺は自分の勉強に集中する事にした。


 勉強会が始まってから1時間くらいが経過した頃だろうか?


 俺はトイレに行きたくなったので先輩にその事を告げてから席を立つ。


 今の時間は17時半で一般生徒は既に下校している時間帯だ。


 グラウンドからは運動部の掛け声が聞こえてくるが、来週のテスト1週間前に入ると部活動禁止期間に入るためグラウンドも静寂に包まれる事だろう。


 俺は用を足してから手を洗い部室に戻ろうとしたところ、何やら階段付近から聞き覚えのある声が聞こえてきたので少し様子を見に行く。


 ちょうど死角になっているところで立ち止まり、耳だけ傾ける。


 声の数からして3人が会話をしているみたいで、うちのクラスの人間のようだ。


 ちなみに名前は覚えていないが、海斗たちに続いて目立っていた陽キャグループだった気がする。


「そう言えばお前ら知ってるか?七瀬さんが告白断った回数もう20回らしい」


 それは我が部の主演女優の話題だった。


 もしどうでも良い話ならすぐに部室に戻ろうと思っていたが俺もよく知る人物だった為その選択肢はすぐに消える。


  てかあいつ、そんなに告られてたんだな。


 たまに部活来るの遅い時とかあったけど、それが理由だったかもしれない。


「マジで?やっぱモテるんだな。試しに俺も告ってみようかな」


 もう1人が少しチャラけた雰囲気でそんな事を言い始め、俺は拳をギュッと強く握りしめる。


 あまりうちの女優を困らせてほしくはない。


「やめとけって。お前とか絶対振られるに決まってるから」


 3人目は比較的まともな感性を持ち合わせているようで笑いながらもチャラけた奴の巫山戯た行動を事前に阻止してくれた。


「それでだ、七瀬さんが毎回相手を振る時に言う言葉が好きな人がいるというのをよく聞くんだが、お前ら心当たりあるか?」


 最初に話をし始めた奴がこれが本題だ、と言わんばかりに2人に詰め寄る。


 俺はそれは告白断るための常套句だろ、と思いつつも耳を傾ける。


「そんなん俺らが分かるわけないだろ?」


「まぁ天童とかなんじゃないか?結構天童のグループと七瀬さんのグループ仲良い感じするし」


 この場合の天童のグループとは海斗、風間、荒井の3人の事だが、彩葉のグループとは友里や陽毬の事ではなく彩葉がクラスにいる時によく一緒にいる友人グループの事を指している。


 これは前時間ある時に彩葉に聞いたのだが、友里や陽毬とは幼馴染兼親友だけど自分のクラスにいる時はクラスの子たちと仲良くするようにしていると応えてくれた。


 俺はこれ以上は収穫もなさそうだなと思いその場を立ち去ろうとしたら、話題を始めた男が見当違いな事を言い始めた。


「俺が今七瀬さんの相手として予想しているのは同じクラスの星宮だと思っている」


 俺はそこで少し咳き込んでしまう。


 しかし幸いな事にあの3人は話に夢中でこちらの存在には全く気づいてないようだった。


「は?なんで星宮?」


「いやいや流石にあの陰キャ君はないっしょ」


 一瞬チャラ男の言葉に怒りが湧いてきたが、クラスでの俺の評価としては妥当なところだろう。


 何も特技を持ってない上に目立たない存在。


 それが俺への共通認識なはずだ。


 だからこそ俺の名前が急に上がった事に驚いた。


「……お前らは七瀬さんと星宮が実は同じ部活に所属しているって知っていたか?」


「いや知らねーけど」


「初耳だな」


「そうだろ?実は5月に放課後のグラウンドで一緒に見かけた奴がいたんだと。その時結構仲睦まじい様子だったとか……」


 まぁ5月のグラウンドには撮影のため皆で一緒にいたから、別に2人きりでいたわけではない。


 しかし変に彩葉と俺の噂が出回るのは防がなければならない。


 俺の平穏な高校生活のためにも。


 俺はそれ以上この場では特に収穫はないと判断を下し、その場を後にする。


 彩葉が時たま俺の事を意識してるように振る舞う時もあるが、それはきっと気のせいだ。


 俺は恋愛経験が全くと言っていいほど無いため、あまりはっきりとは分からないが勝手に勘違いして痛い目に遭うのだけはごめんである。


 俺は部室に戻ると少し遅くなった事を聖先輩に謝罪し、その後30分だけ勉強してから下校する事となった。

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