第5話 クラスの人気者
「3人集まった事だし、せっかくだし自己紹介しよっか」
先輩のその言葉を皮切りに自己紹介が始まる。
まずは言い出しっぺである先輩が責任を持って1番初めに口を開く。
「まず私から行くね。もう既に各自には簡単に自己紹介してるけど名前は花園聖。2年生であり一応映画研究部の部長を務めてるよ。部員は私1人だったけど君たちが入ってくれて本当に良かったよ」
そう言いながら先輩は涙を拭うフリをする。
「去年いた先輩たちが卒業してから廃部の危機になってたけど本当に良かったよ。それで私は役者というより裏方全般サポートするつもりだからよろしくね。将来的には脚本家になりたいと思ってるけど、裏方の仕事は基本できるからみんなは役者として頼むよ。この辺で私の紹介は終わり!次は天童くんよろしく!!」
先輩は自己紹介を終えると同時に手をパンッと合わせてから次は天童海斗に向かって目線を向ける。
「えっと、一応2人とは同じクラスだし先輩ともこの前顔合わせはしたからみんな名前は知ってると思うけど、僕の名前は天童海斗。そしてサンライズプロモーション通称サンプロに所属していて一応俳優をしているよ。演技には少し自信あるから仲良くしてほしいな」
最後にニコッと笑って天童は自己紹介を締める。
この笑顔の破壊力には男の俺でも惚れてしまいそうなほどの魅力がある。クラスの女子たちもキャーキャー言う気持ちが少しは分かった気がする。
容姿としては髪は短く金色に染めており、それを格好良くセットしていてイケメンオーラが凄い。その上目元は優しい感じで、いかにもモテそうな雰囲気を醸し出している。
今は陰のオーラを纏っている俺としては陽のオーラをビンビン放っている天童の事は眩しすぎて直視できない。
俺がそんな風に変な事を考えていると、先輩が「ありがとね天童くん!それじゃあ次は七瀬ちゃん自己紹介よろしくね!」って感じで七瀬彩葉に話を促す。
七瀬はコクッと頷いてから口を開いて自己紹介を始める。
「あたしの事も名前はみんな知ってると思うけど、スターミリオンプロモーション所属のモデル、七瀬彩葉。これから部活仲間としてよろしく」
七瀬の第一印象としてはなんて言うか冷たいギャルって感じだ。
見た目としては金色に染めた髪を長く伸ばしており、耳にピアスも空けている。長く伸びた爪にはネイルが塗ってあり、制服のスカートも短くいかにもギャルっていう見た目をしている。
体のスタイルとしてはどこがとは言わないが年齢の割には成長しているが、引っ込むところは引っ込んでいてスタイルはいい。モデルとして人気が出る理由もよく分かる。
しかしずっと七瀬の事を凝視していたらいつか睨まれそうなので俺は視線を先輩に戻す。
先輩も少し苦笑い気味に「それじゃあ最後に湊くんよろしくね」って感じで俺に話を振ってくる。
俺は先輩の指示を受けて2人の後に続く形で自己紹介を始める。
「えーっと、俺は星宮湊って言います。先輩に脅迫されたので映研に入る事になりました。よろしくお願いします」
俺は2人に向けて頭を下げて挨拶をする。
案の定興味ないのか七瀬にはガン無視されたが天童は流石モテる男は違うのか俺に話しかけてくれる。
「星宮くんは脅迫されたんだ?なんて脅迫されたの?」
「あー、それについては詳しく話せないですけど、何故か先輩が俺の黒歴史を知っていて映研に入らないならそれを暴露するぞ、みたいな感じですね」
俺がそう答えると先輩は口を押さえながら笑いを堪えている。
天童は先輩の様子に首を傾げている。
「それより天童くんは何でこの部活に入ったんですか?芸能活動で忙しそうなのに」
俺はそう逆質問をするが、天童は顎に手を当てて少し考えるフリをしてから口を開く。
「んーとさ、僕と星宮って同い年なんだしさ、敬語じゃなくてタメ口で話してほしいんだけどどうかな?」
イケメンは距離を詰めるのも早いらしい。
天童は笑顔を振り撒きながらそう言ってくれるので俺はそれに対してありがたいと思いながら応える。
「わりぃ、これでいいか?これからはタメ口で話させてもらうな天童」
「うん、やっぱそっちの方が素な感じでいいよ。それと出来れば天童じゃなくて海斗って下の名前で呼んでほしいな。僕も湊って呼ぶようにするしさ」
あまりにも早い距離の詰め方に俺は戸惑いながらも応えるようにする。
「そ、そうか、分かった。これからは海斗って呼ばせてもらう」
「うん、ありがとう湊。それで僕が映研に入る事になった理由だっけ?」
天童は一度俺に確認を求めてきたので、俺は首を縦に振って話の先を促す。
「この前の入学式の日にさ、すぐに聖先輩に僕が俳優をやってる天童海斗だって事がバレて猛烈な勧誘を受けたんだよね。それで仕事がない日だけになるけど僕の演技の上達にも繋がるかもしれないと思ってその勧誘をありがたく受けたんだ」
なるほどな、天童は向上心があるイケメンらしい。
そんな天童の映研に所属した理由は理解したが、反対に七瀬がこの部活に所属した理由が気になる。
しかし彼女に気軽に話しかけれるほど俺は肝が据わってはいない。
というか率直に彼女の事が怖い。
俺と天童が話していた間も七瀬は一言も発する事なくスマホを触っていただけだしな。
俺はこれから先彼女と仲良くする事ができるのだろうか。
少し不安になるこれからの事を考えながら俺はため息をつくのであった。