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第55話 メンバー勢揃い

 映研の1年生同士で親睦を深め合った翌日の水曜日、聖先輩が真剣な表情をしながら今この場にいる全員を見渡し、口を開いた。


「……ヤバい、来週までに映画を完成しないといけないのに全然撮影が終わっていない」


 まさしく映研の危機と行ったところだ。


 モデルやってる3人娘や俳優の海斗は平日の仕事を減らしてくれた為集まりやすくなったが、今度は重要な役割を演じる荒井がバスケ部と兼部している為あまり撮影が進んでいない。


 実際今日もバスケ部の方に顔を出しているのか荒井の姿はまだ見えない。


 俺たちは沈んだ面持ちのままどうしようか、と皆で頭を悩ましていると唐突に扉が開き最近聞き慣れてきた大声が耳に届いた。


「こんちはっす!今バスケ部辞めてきたんでこれからはずっと映研に顔出せるっす!」


 その声に対し部室内にいる全員の目が点になり声の主である荒井の方向を見つめる。


「えっと、荒井くんどういう事?」


 先輩もまだ理解が追いついていないのか荒井に向かって聞き返す。


「いやー実はバスケ部の連中とそりが合わなくて、やってても全然楽しく思えなくなってきたんで、それくらいならやっぱり楽しいと思える映研一本に絞ろうかなって思いまして」


 そう言って頭を掻く荒井に向かって先輩は顔全体に笑顔を浮かべて荒井の手を握り締めた。


「ありがと!これでやっと全部撮影できるね。よし、じゃあ早速撮影してくけど今日は勇者の旅たちとサラマンダーとの戦闘パートを撮影するつもりだから役ある人は準備お願いね!」


 さっきまでとは打って変わってイキイキと指示をし始めた先輩の様子を見て俺たちは笑みを浮かべる。


 しかしいつまでまでそんな無駄な時間を過ごしているわけにはいかないので、今日役がある人たちはそれぞれ自分の衣装を持って部室を出て行った。


 数分後、海斗と荒井と男子3人で衣装に着替えて部室に戻るとそこには誰もおらず黒板にデカデカと「今日は外で撮影するから運動場集合!」という文字が書かれており俺たちは顔を見合わせてからすぐさま運動場へと向かうのだった。


 運動場に辿り着くと俺たちは映研の部員が集まっている場所を探し出しそこに駆け寄り辺りを見渡す。


 まだ友里と陽毬の2人は来ていないようで先輩や先生がカメラの脚立の設置などを行っていた。


 映研以外の部分に目を向けてみると今日も今日とて運動部の部員たちが体を動かしているのが見えるが、何やら殺気めいたものをこちらに飛ばしている。


 何故そんな視線を送ってきているのか最初は疑問に思ったが、彼らの視線の先に目をやるとすぐに理由が判明した。


 つまるところ彼らが俺たちに殺気を飛ばしているのは一般的に美少女と言われ人気モデルの彩葉と一緒にいるからだろう。


 ただ俺たちに殺気を飛ばすだけなら問題ない。それはスルーすればいいだけの話だから。


 しかし彩葉を性的な目で見るのだけは許せない。確かに同じ男として彩葉の事をそういう目で見たくなるのは理解できなくはないが、知り合いをそんな目で見られていると分かっているのに止めないのは男じゃない。


 だから俺はその視線たちに対してキッと睨み返してから彩葉の肩を軽く引き寄せる。


「え、えっ?」


 彩葉が突然の事に少し驚いているが、俺はそれを気にせず周りを睨みつける。


 程なくした不快な視線も止んだので彩葉の肩を手放して彩葉に謝罪した。


「悪かったな、突然抱き寄せて。周りが変な目でお前を見ていたようだから少し威圧しておいた」


「あ、うん……」


 彩葉が少し照れたような顔で俯いたのでそのまま放置して俺は一部始終をニヤニヤしながら眺めていた男子三人衆のところへと寄った。


「……なんだよ?」


「湊ってやっぱ男気あるよね」


「それでこそ俺が昔憧れた男だな」


「星宮ってなんか思ったよりすげえ奴なんだな」


 海斗と風間は揶揄いのある視線を送り、荒井は素直に賞賛してくれてるようで少しだけむず痒いように感じた。


「……友里たちも来たようだし行くぞ」


 俺は話を逸らすようにその場を動き出し、先輩たちのところへと向かった。


「じゃあ早速旅立ちのシーンの撮影するからまず勇者パーティ4人はそれぞれ配置についてね」


 先輩のその声に映画研究部の全員がコクッと頷きそれぞれ位置について撮影が始まるのだった。

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