表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/132

第51話 トップ女優の存在

 それから土日を挟み週が明けた月曜日の放課後。


 俺は部室で風間とEMでマルチプレイをしながら他の皆を待つ。


 最近は皆平日の仕事を休日に移動させたようで部活への参加率が高い。なので、今日はバスケ部の練習がある荒井以外の全員が集合する予定だ。


 ちなみに今部室内にいるのはいつも先に来ている聖先輩と終礼終わり直後ここに来たであろう二宮先生、そして俺と共に部室にやってきた風間の3人だ。


 海斗はいつも通り終礼直後に周囲を囲まれているので後でやってくるだろう。


 美少女3人娘もいつも来るのが少し遅いのでもうちょっとしたらやってくるはずだ。


 先週部員全員がいた時はそれなりに騒がしかったはずの部室内だが今は騒がしい原因の3人娘がいないせいか静寂に包まれている。


 先輩は映画の台本に何やら書き込んでいるし、先生も教師としての仕事を黙々とこなしている。


 俺と風間も特に会話をする事なくゲーム内で敵を倒している。


「こんにちはー!」


 そんな静寂が支配していた部室内であったが、彩葉たちが来たことでそれはすぐに破られた。


 部室内にいた全員が扉に目を向けるとそこには元気に溢れた感じの3人娘が挨拶をしながら部室に入ってくる。


「ねね、またゲームやってるの?」


 彩葉にそう声をかけられた俺は「ああ」とゲームに集中している為彩葉の方を振り向かずに頷くが、彩葉はそれが不満なのかぷくぅと頬を膨らませる。


 その様子を見ながら俺の隣に座っている風間は苦笑いをしている。


 そこで今日彩葉が部室に来たら聞こうと思っていた事を思い出したので彩葉の方に顔だけ向けて尋ねてみる事にする。


「そう言えば彩葉って白石麗華を知ってるか?」


「え?ああ麗華ちゃん?勿論知ってるよ、てかあの子の事知らない人なんて日本にはいないでしょ」


「やっぱそんくらい有名なのか」


 俺がそう呟いたからか彩葉だけでなく部室にいる全員が驚いたような反応を示す。


「え、もしかして湊は知らなかったの?」


「白石麗華はあまり芸能人に疎い私でも知ってるよ」


「おい星宮、私でもそんくらい知ってるぞ」


 聖先輩や二宮先生まで彩葉に続く形で言葉を発してきたので俺は手を横に振りながらそれを否定しておく。


「いや流石に白石麗華は知ってますけど、そこまで有名だとは思わなかったんですよ」


「嘘、マジで?白石麗華と言えば昔は子役として活動していて中学時代にモデルとして名が売れてそれから歌手や女優としても活躍し出したから有名なのは当然でしょ!」


「お、おう」


 俺の軽く言ったつもりの一言に言いたい事があるみたいな感じで彩葉は俺に詰め寄って白石に対して熱く語った。


 どうやらこの様子を見るに彩葉は白石のファンのようだ。


「相変わらず彩葉は麗華ちゃんの大ファンだよね」


「マジそれ!彩葉が麗華ちゃんの事語る時いつも凄い勢いだもんね!」


 彩葉が白石のファンというのは周知の事実のようで友里と陽毬は呆れた視線を送っている。


「でも彩葉たちにとってはライバルみたいなものなんじゃないか?同年代の芸能人なわけだし」


 同じ業界にいる者同士でライバル視はしてないのか気になって聞いてみたのだが、彩葉は間髪入れずに否定してくる。


「ないない!ライバルなんて思えるわけないじゃん!なんていうか格が違いすぎてもうライバルって思うことすら失礼っていうか……」


「確かにそうかも。麗華ちゃんに対してライバルって思う事はないよね」


「そうそう!ウチら如きがライバルって思うとか流石に烏滸がましいって!」


 彩葉の言葉に賛成するように友里と陽毬も乗ってくる。


 3人は笑いながら話しているが、彼女らにとってそれだけ白石麗華は雲の上の存在という事だろう。


 しかし俺に言わせてみれば友里と陽毬はまだよく分からないが彩葉に関しては白石麗華と同じくらいなポテンシャルは秘めていると思っている。


 だからそこまで自分を格下だと思って欲しくない。


「……別に彩葉の演技は白石麗華に負けてないと思うけどな」


 俺がそうボソッと呟くとそれがたまたま聞こえていたのか彩葉は小声で「ありがと」と言ってきた。


 あの様子じゃ俺が本気で言ってるとは思ってないんだろうな。


 それから彩葉と友里と陽毬はすぐ3人の世界に入って談笑を始める。


 俺も一旦中断していたゲームを再開し風間とゲーム内の素材集めに励む。


 そして数分経過してからようやく海斗が扉を開いて部室に入ってきた。


「ごめんごめん、遅くなった」


 そう謝りながら海斗は入ってきて、皆口々に彼に声をかけている。


 そんな海斗に一瞬視線を送ってから俺と風間はゲームの世界に戻ったが、いつの間に近寄ったのか海斗が側に立っていた。


「秀、それに湊も。僕の事見捨てるなんて酷いんじゃないかな?」


 そこにいた海斗は表情は笑っていたが少し暗いオーラを放っていて率直に言うと怖かった。


「いや海斗は皆に囲まれていたから声かけにくかったんだよ」


 風間は暗いオーラを纏ったダーク海斗相手でも全く臆した様子を見せず返答している。


「……湊は?」


「……いやそもそも俺はクラスで海斗に話しかける立場じゃないし」


 俺はそう言うのが精一杯だった。


 自分のクラスでの立ち位置は目立たない陰キャである。


 カースト上位の海斗に話しかけられる立場にはいないし、そもそも映研で海斗や彩葉と仲良くなったと言ってもクラスで俺が話しかけれるのは風間だけだ。


 なので俺が海斗に話しかけないのは許して欲しい。


「……別に僕は話しかけてくれてもいいんだけどね」


 そう言葉にする海斗は少し悲しそうな表情を見せる。


「……わりぃな、俺の都合で」


 俺はそんな言葉しか吐く事ができず、それに対して「全然いいよ」と言う海斗の表情はやはりどこか寂しそうであった。


 そうして全員が集まった事で今日の映研の活動がようやく始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ