第47話 事前準備
放課後を迎え、俺たちはいよいよ本格的に5月の映画作成に取り掛かる事になった。
先輩が考えてきた台本を全員に手渡され、それを読む時間をまず取られた。
映画の名前は『勇者ジークと呪いの王女』。
内容としては王道のファンタジーもので、とある国の王女が魔王の呪いに罹ってしまう。その呪いに猶予は残されておらず、期限以内に魔王を討伐しなければ王女が命を落としてしまうというものだった。
そこで国王は国で1番腕の立つ剣士ジークに勇者の称号を与えて、騎士団からは戦士のアイク、教会からは聖女のマリア、宮廷魔法師団からは賢者のモナを加え勇者パーティとして魔王討伐を依頼する事にした。
その過程で勇者パーティは成長を続け、魔王配下の四天王を倒し、ついには魔王の討伐も成功する。
そして最後には勇者ジークが王女と結婚してハッピーエンドというわけだ。
流し見をしてみる感じ面白そうな話だと思う。
あまり普段文章を読むのに慣れてないせいか友里や陽毬、荒井あたりは少し台本読むのに時間かかってるようだが、他の部員は既に台本を読み終えてるのか冊子を閉じで手持ち無沙汰になっている。
かく言う俺も虚空を見つめながら虚無の時間を過ごしていたら、いつの間にか全員台本読み終えたようだ。
その様子を確認した先輩が声を張り上げながら今後の指示を出す。
「全員台本呼んでくれたみたいだし、これからの事話すね。とりあえず今日は導入部分である国王と勇者パーティの謁見の部分を撮影しようと思う。それで勿論皆も忙しいと思うし来れる人だけで活動するって事は変わらないから、メンバーによっては撮影の順番が変わる事もあるかもしれないしそれは把握しておいてね。あとは衣装とかは今までの先輩方が残していってくれた分があるし心配しなくて大丈夫だよ。他に先生から事前に伝えとくべき事ありますか?」
先輩が軽い説明をした後に人数も増えて映画研究部も部活らしくなってきたので一応聞いとこうみたいな感じです先生に目配せを送る。
先生はまさか自分に話振られるとは思ってなかったようでやる気のなさそうな声を発する。
「あー私からは特に何もないな。まぁ強いていえば動きすぎて倒れんなよ。お前らが倒れたら顧問の私の責任になるし、ただただ面倒いだけだからな、主に私が」
私が、の部分を強く強調してから先生は教師とは思えない言葉を言う。
俺はそんなことを言う先生に呆れた視線を一瞬送るが、すぐに先輩の方に向き直り耳を傾ける。
「先生からも何もないようだし、早速撮影始めようか。今日撮影ある子は各自ここから衣装持っていって着替えてきてね」
先輩がそう衣装の山を指さすと各自自分の役に合った衣装を手に抱えてから部室を出ていく。
そうして皆が着替える為に出て行き、結局部室に残ったのは今日撮影の予定がない俺と風間と聖先輩の魔王配下四天王のうちの3人だけだった。
同じ四天王の中でも彩葉だけは王女役も兼任してる為着替える必要があるのだ。
「じゃあ2人には撮影の手伝いでもしてもらおっかな。皆が着替えから戻ってくるまでに教室の机と椅子を全部前の方に片付けて、後ろの方で舞台を用意しよう。実はみんなが揃う前に先生に手伝ってもらって今日使いそうな道具を映研専用の倉庫から運んでもらったんだよね。みんなには今度場所教えるね」
へぇ、あの先生でも手伝う事ってあるんだな。
そこは素直に驚きだ。
まぁなんだかんだ映研を気に入っている証拠でもあるのだろう。実際今さっきだって何も言わずに国王っぽい衣装を選んで教室を後にしたわけだしな。
俺はそんな事を思いながら机や椅子を前に運ぶ。
単純な力作業だからか結構疲れるが、共に作業している風間は涼しげな表情で机を運んでいる。
イケメンは何をしても爽やかなのは永遠の疑問だ。
一通り机と椅子を前の方に片付けると、次は舞台の設置だ。
今日主に使う道具は2つで、国王が座る椅子と王女が寝るベッドだ。
と言ってもベッドの組み立ては聖先輩と二宮先生でやってくれていたみたいなので俺と風間は周りの邪魔なものをとりあえず前に移動させた机の上に適当に置き、後方中心部にベッドを堂々と置く。
そしてひとまずは国王の玉座も前方に置き、これで準備完了だ。
多分というか絶対3人でやる作業ではない。
俺たち3人が全員疲れた顔をしながら椅子に座って休憩してるとようやく着替えた役者たちが帰ってきた。
教室を出てから15分ほどは経過している。おそらく更衣室とかで駄弁っていたのだろう。俺や風間や先輩はこんなに疲れたというのに。
俺が着替えてきた6人にジト目を向けると彩葉たち3人娘と荒井は頭に疑問を浮かべているが、二宮先生は何故か勝ち誇った顔を向けてきている。
おそらくあの人は先に先輩を手伝っていたからか準備が面倒だという事を勘付いてわざと教室に帰ってくる時間を遅らせてたのかもしれない。
海斗は教室を見た瞬間に舞台として整った教室と汗をかいている俺らを見て申し訳なさそうに手を前にして謝罪のポーズを取る。
どこかのダメ教師にも海斗の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
そんなことを考えながら指示をもらう為に先輩に目を向ける。
「うん、全員揃ったね。それじゃあ早速撮影してくから楽しく頑張ろ。台本さっき渡したばっかだしまだ覚えてないかもしれないから、最悪アドリブとかで補ってもいいからね」
先輩は結構な無茶を言っている事に気づいているのか気づいていないのか、いつもと同じテンションで皆の顔を見回す。
俺は今日は自分の演技こそないが、人の演技から学べる事もあるかもしれない。
そう考えてるうちに映画研究部の新映画の撮影がスタートするのだった。




