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第44話 相談

 昨日のルナの言葉が頭から離れず、しっかりと睡眠時間を取れずに迎えた次の日の放課後。


 俺は映研の面々に今日は部活に参加出来ない事をレインで伝えてから喫茶店Believeで働いていた。


 平日夕方と言うこともあり、お客様はそこまで多くない。


 俺は厨房の高崎さんが作ってくれた料理を持って、お客様のテーブルに運ぶ。


「お待たせいたしました。ミックスサンドでございます」


「え……?頼んでないですけど……」


「あ、すみませんでした。失礼致します」


 お客様に頼んでないと言われ俺は再び厨房に戻り番号を確認する。


 そして正しい卓にミックスサンドを届けてから厨房に戻ろうとした時、紗希先輩に声をかけられた。


「あのさ湊くん、何かあった?今日湊くんにしては珍しく結構ミスってるからさ。何かあったなら相談して欲しいなって思って」


「あ、いえ、大したことではないので大丈夫です」


 あまりにも俺のミスが目立つせいか心配してくれているようだ。


 しかし紗希先輩に迷惑をかけるわけにもいかないので俺は気持ちを切り替えて笑顔を向ける。


「……ふーん、ならいいけどさ。もし困った事があったらいつでも相談してよ?女だからってあたしに相談できなくても、樹くんなら相談乗ってくれるだろうし、1人で抱え込まないようにね」


 紗希先輩は普段見せないような真剣な表情で俺の事を気遣ってくれる。


 思った以上に今の俺の状態を心配してくれているようだ。


 だからなのだろうか?最初は話す気なかったはずなのに俺は気づいたら口を開けて紗希先輩に相談していた。


「……例えばの話なんですけど、とある男の子に憧れを持っている女の子がいたとします」


 ポツリポツリと俺は話し始める。


 自分の事とは決して言わず例え話にする。


 紗希先輩は突然話し始めた俺に対して目を見開いたが、すぐに優しい表情に変わり静かに俺の話に耳を傾ける。


「男の子は小学生の頃は目立つ存在で人気者でクラスの中心人物でした。しかし中学生に上がってからは徐々に目立たなくなっていきました。小学生の頃の目立つ男の子が好きだった女の子は中学生以降の男の子を見て幻滅してしまいます。女の子は男の子に元に戻って欲しいと思っていますが、男の子は元に戻る気はありません。でも女の子ともう一度仲良くしたいとは思っています。男の子と女の子はどう接するべきか紗希先輩は分かりますか?」


 芸能界を辞める辞めない等とは流石に言えないのであくまで相談に乗ってくれやすいよう学校という誰もが身近に感じれる場所を舞台にして話してみた。


 その間お客様が入店する事はなく、俺は紗希先輩に大体の事を話す事ができた。


 紗希先輩は俺の相談に真剣な表情で悩んだ末答えを出してくれた。


「簡単に言える事は2人で話してみる、とかかな。女の子も男の子の気持ちを完璧には分かってないだろうし。でもやっぱり少し離れた関係はそう簡単に戻らない事はあたしは知ってる。だから"話す"以上に"示す"のが大事だとあたしは思うんだよね。男の子だって中学生になってから無駄な時間を過ごしたわけじゃないんでしょ?だから話し合いより行動で示した方が女の子も分かってくれるとあたしは思うな」


 行動で示す、か。


 確かに今まで俺はずっとルナとどう話そうかばかりを考えていた。


 行動で示そうとは思っていなかった。


 先輩はそう難しい事を言っているわけじゃない。至極当たり前の事を言っているだけだ。


 しかし行動で示すというのは簡単なようで難しい。


 俺は少しの間逡巡してからある事を決心して、先輩にお礼を言った。


「先輩、ありがとうございます」


「ん?全然いいよ。顔つきも良くなったじゃん。あたしが相談乗ってあげたんだし、この後は失敗しないでよ?」


「もちろんです!」


 俺はそう先輩に笑顔を向けてから残りのバイトの時間を今日ミスった分を取り返すように一生懸命仕事に集中したのだった。

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